オタク友達の実家弔問珍道中

<2023年12月19日投稿のパス付きprivatterを一部手直しして再掲しています>

 さて、昨年の11月に友達が亡くなり、一周忌を迎えたのだが、実感が湧いているかと言われると未だに湧いていない。思えば8年の付き合いがあったが、癌になった部位を摘出して、抗がん剤をしながら現場に来ているときも「てか見て? このウィッグ可愛くない?」とQoo10で買った可愛いヅラを見せびらかしてきたりと、ポップな闘病生活を過ごしていたので、いざいなくなってしまっても自分の中で区切りがつかないのである。

 2014年に出会った当初は現・WEST.神山智洋の狂った最前ガッツをしていた友達。初対面は日生劇場の前での待ち合わせだった。Twitterでジャンルこそ違うものの狂ったガッツ同士として仲良くなり、初めてご飯に行くことにしたのだ。お手振りしてもらったらしく、超絶ハイテンション状態で日生劇場から登場してきた。
 その後友達は彼氏ができてガッツを辞めてみたり、大学を出て地元に戻って真っ当に就職してみたり、でもブラックだったので転職して東京に舞い戻ってきたり……ずっと友達だったのでお互いに「人生の流れ」を把握していた。
 2020年にお互いが7 MEN 侍にハマって初めてジャンルが被る。友達は大光担。私が大光の現場に遊びに行ってみたり、友達を今野の現場にご招待したり、そんな調子で一緒にオタクしていたのだ。
 だが2021年の年明け、「最近体調が悪い」と零しており、病院に行ってみたらガンであることが発覚。奇妙すぎる闘病×オタク生活を続けていた。抗がん剤治療のために入院→しばらく退院→また入院というスケジュールだったので、その隙間を縫って現場に来ていた。
 友達一同でお見舞いに行きたかったが、コロナ禍だったので面会禁止の憂き目にあっている。病棟にローソンがあるらしかったので、チケ発のお礼にはいつもローソンギフトを送っていた。
 東京の病院に当初は入院していたが、看病してくれるお母様の都合もあって2022年に地元の病院に転院し、最後はホスピスで亡くなったそうだ。

 亡くなった直後、いろいろあって共通の知人を介してお母様と連絡を取り、弔問に伺わせてくれないかと打診したが、先方の都合が難しいということで2022年中にお線香を上げに行くことはできず、一緒にオタクをしていた友人みんなで供花を送るにとどめた。そりゃ、娘が亡くなったあとに忙しいのは当たり前なので、我々もまあなんとかやっていきましょうという感じで友達のいない日々を過ごしていた。

 ちょうど一周忌の11月、友達の間で「やっぱりお線香を上げに行きたいね」という話になり、ダメ元でお母様に連絡したところ快諾の返信があった。
 人生で初めて「弔問の幹事」というものをした。レア体験である。いろんな幹事をやってきたし、なんならライブハウスを手配してイベントをやったこともあるが、弔問の幹事は初めてだ。
 そういうわけでオタク女4人が集合し、友達の実家のある九州某所に日帰り弾丸突撃することになった次第である。
 一緒に弔問に行くメンバーは私も含めて全員、7 MEN 侍の現場で亡くなった友達と一緒にワイワイやっていた仲だった。いくら私はお母様と連絡を取っているとはいえ、オタクを3人引き連れて人の実家に行くのは普通に緊張する。というか、東京からいきなりオタク女が4人も押しかけてきたら怖いだろう。

 友達の実家は九州某所のため、東京からの主なアクセスは飛行機だ。我々は羽田空港に集合した。朝6時半に。何? ラジオ体操?
 朝6時半にオタクと集合すると、もうなんか朝から騒がしくて胃もたれしてくる。今回、私はとんでもない奴のことも誘ってしまった。「887wwwwwwww」というアカウントをやっているイカれた矢花担、通称「矢花草」である。矢花草と亡くなった友達は、帝国劇場で一緒にQRを引きまくり、最前を引きたすぎて皇居の前で座禅を組んだりした仲なのだが、矢花草は良くも悪くもこの世の常識というものを身に着けていない女だ。私は矢花草を引き連れて友達の実家に行くことに大いなる不安感を覚えながら、保安検査場の列に並んだ。
 すると矢花草の「はぁ?ホンマありえへん、何?だっっっっっる」という大声が保安検査場から聞こえてくるではないか。この女は果たして無事に飛行機に乗れるのか? 不安になり、私は矢花草の手荷物の様子を見に行った。矢花草は、空港のスタッフに、「ヘアアイロンのバッテリーを取り外してください」と注意されている。手元を見ると、美容垢がよく持っているリファのちっちゃい前髪用のヘアアイロンの電池を懸命に草は外そうとしていた。おい! 人の家に線香を上げに行くのにリファのアイロン持ってくんな!

 行きの飛行機に乗り込み、後ろにいた本髙担のRという女は紙を取り出して「この1年で起きたことを伝えてあげるために手紙を書くの〜!」と何やら文章をしたため始めていた。友達はインターネットのゴシップとかそういうのが大好きだったので、遺影の前で報告してあげたら喜ぶだろう。
 「書けた〜!」という声が聞こえたので、何書いたの?と見せてもらったら、だいたいこんな感じの内容だった。カッコ内は私の突っ込みである。

 ◯◯へ
 そっちはどうですか? ジャニー喜多川は、記者会見とかしてますか?(←多分ヒロムは地獄行きだから、友達とは一緒じゃないと思うぞ!)
 この1年いろんなことがありました。まず、ジャニーズ事務所はジャニーズじゃなくて、スマイルアップになりました!!
 私が顔がだ〜いすきな那須くんは、帝劇の楽屋でシュークリームを投げて炎上しちゃいました!
 西畑大吾は、女子アナとのデートを隠すために、タワマンから女装して出てきたよ!
 あと、2929は金指と繋がってたよ!
 インパクターズは滝沢に引き取られて、ジャニーズ辞めちゃいました!

 人の仏前に供える手紙として適切なのか全然わからないが、こんな調子の手紙を書き、Rは大事そうに封をしていた。まあ、友達は死ぬ一週間前くらいまで「私の人生より先にキンプリが終わることってあるんだ」とかツイートしていたようなやつなので、この手紙もきっと嬉しがってくれるだろう。友達は元関西担なので、西畑の文春も見ていたら大笑いしているに違いない。
 その手紙に、矢花草は「ウチはな、◯◯に絵描いてプレゼントすんねん。ウチな、最後に◯◯と連絡したとき似顔絵褒めてもらったから。絶対喜んでくれるから」と主張し、「原宿のTRIOで買ってきた」という友達の歴代担当(有岡大貴・神山智洋・佐々木大光)の写真を並べて似顔絵を描いていた。誰もまともなものを仏前に供える気がない。

 さて、九州某所の空港に着き、そこからバスと電車を乗り継いで友達の実家を目指す。
 初対面のお母様と合流した瞬間、我々一同驚愕。……本当に顔がそっくりすぎたのだ。一目見ただけでどう見ても母親であろうとわかった。
 ご厚意で車を出していただき、応接間に通してもらって線香を上げることになった。
 友達の遺影がきれいな応接間に鎮座しているのだが、こう言ってはなんだが、変な感じがする。戒名もついていた。変な感じだ。
 変な感じだなぁ、でも確実に友達はもういないんだよなあと思いながら線香をあげようとしてふと気づいた。私は人生で線香というものを上げたことがないのだ。実家は無宗教だし、両親ともに親戚づきあい・冠婚葬祭をほぼすべてバックれているため、人生で初めて焼香をする相手がオタクということになる。全然マナーがわからない。
 とりあえずお母様に「すみません、我々はご覧のようにまだ若輩者でして、友人を亡くすとか……そういうのがないので……粗相がありましたらすみません……」と謝ってから焼香を始める。こういう時はもう先手で謝るしかない。

 4人で友達の実家に押しかけたはいいものの、私を除いて他の3人はどういう関係性の友達なのかお母様に説明していない。どう話したらいいのか……と当惑していると、お母様がこう言ってきた。
「あの……皆さん、コンサートに一緒に行かれるお友達ですよね?」
 全員下を向きながら「あ……はは、ハイ……」と返事をすることしかできなくなった。コンサートに一緒に行かれるお友達なのがなぜバレているのか謎だが、見た目が全員オタクなので仕方ない。
「私は詳しくないんですけど……◯◯はなんていうアイドルグループが好きだったんでしょうか?」
 一番難しい質問だ。全員下を向きながら小声で「あっ……えっと……7 MEN 侍っていう……」と答えた。カオスすぎる状況だが、恐らく死んだ友達張本人がこの場にいたら爆笑しているであろうことはわかる。
 「◯◯ちゃんが好きだったのはこの子です!」と、佐々木大光の写真を見せたところ、お母様は「そうなのね……顔はよくわからないけど」と言っていた。よくわからないですよね。すみません。
 遺影の横をよく見ると、ジャニーズからの会報が山になって積んである。会報じゃないですか! と我々が言うと、お母様は「そうなの、亡くなってからもしばらく届いて、最後までお手紙をくれたのがキンプリだったかな……」とその束を指した。お母様はオタクではないので、会報のことも「お手紙」と呼ぶ。
 矢花草は遺影に向かって、「なあ、◯◯、キンプリの名義持ってたなら言うてや、今さ、侍バックついてんで? 申し込んでほしかったわ」と話しかけていた。遺影に向かって名義を頼む人を見るのは後にも先にもこれくらいであろう。
 お母様にきちんと許可を得て、遺影の前に佐々木大光の写真を並べておいた。スーパーで買ってきたねるねるねるねやグミといった友達の好きだった菓子も並べた。改めて見るとカオスな光景である。

 我々は線香を上げてからさっと帰って、適当にどこかで食事をして帰るつもりだったのだが、お母様がお昼ご飯を作って出してくれた。なぜ?
 しかも、滅茶苦茶おいしい。友達は抗がん剤治療の入院中、いつも病院食に対して新鮮にキレていたのだが、実家のご飯がこんなに美味しかったらそりゃキレるだろうなと思った。オタク4人で応接間のちゃぶ台を囲み、友達のお母さんが作ってくれたご飯を食べる。我々も呑気なもので、元気におかずを食べ尽くしてしまった。弔問のはずがヨネスケみたいなことになっている。というか友達がいないのに友達の家に遊びに来てご飯を食べてるだけの回みたいになっている。我々は不謹慎なので、「これが本当の本人不在の◯◯会」とか言ってゲラゲラ笑っていた。

 東京から押しかけてきた怪しい女4人に、お母様は近所の観光案内もして下さり、最終的に、なぜかお母様と5人でカフェに行ってお茶をした。普通に遊んでるだけみたいになっている。思い返せば友達は異常なコミュ力と異常な広い人脈を持っていたのだが、お母様譲りなのかな……と感じた1日になった。
 お母様は我々怪しい4人に、「娘のことを覚えていてくれて嬉しかった」と言ってくれたのだが、あんなにオモロい友達のことなんか忘れたくても忘れられるわけはない。
 我々はそれぞれ、お母様に生前の友達とのエピソードについて話して時間を過ごしたのだが、どうしてもオタクなので、オタクの話がメインになってくる。本髙担のRは、「あの、私の応援している人は文春に撮られて……しかも二股してたんですけど……それについて私より怒ってくれて……」とお母様に感謝を述べていた。どんな感謝だ。友達は、私たちが男関連でひどい目に遭うと私たちよりも真剣に怒ってくれる情に熱い女だったのだ。するとお母様は「そうね、私も娘とよく森喜朗のニュースとかを見て男って最低って言い合ったりして……」と癖の強い思い出を懐かしがってくれた。

 もっと悲しい気持ちでしんみりと家路に着くのかと思っていたが、なんだか友達の家に行って遊んで帰ってきたみたいになってしまい、拍子抜けしているというのが正直なところだ。
 友達と最後に連絡を取った時、友達から送られてきたのは「正しい麻薬で正しく眠っています」という文だった。彼女らしい。最後は医療用麻薬の量がかなり増えて、ネットを触っている時間も少なかった。
 それが送られてきた翌日、実は友達はホスピスで実家の飼い犬と会っていたそうだ。友達は実家の犬を溺愛しており、入院中もよくお母様とビデオ通話をして犬を映してもらっては「犬ヨントン」と言って喜んでいた。中型犬なので規則により病室には入れなかったが、ストレッチャーで駐車場まで友達を運んでもらい、そこで犬と会ったそうだ。最後に犬と会えていたと聞けてよかった。

 弔問の感想として適切なのかはわからないが、「楽しかったなあ」と思って帰ってきた。友達も楽しいヤツだったので、それでいいのだと思う。またお線香を上げに行こうと思っている。
 変な話だけど、友達は「天国」にいるとは未だに思っていない。「いる」としたら日生劇場のXA列21〜24番らへんか、帝国劇場のA列40番台前半らへんだろう。
 最後に私が友達に送った文章。「眠りの質はよいですか? それだけを祈っています」だ。
 ……これを本人が読んだのかは、未だに定かではない。確かめる術もない。
 「よき眠り」に就いていることを祈っている。

ツバメ「あんた人間だったとき、一度死んだんだよね?」
王 子「ああ……」
ツバメ「死って、眠りの兄弟、だよね?」
王 子「そうだな……」
ツバメ「……じゃあ、おやすみ」

「ROCK READING 幸福王子」より
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