
2016年卒の採用で民間企業と官公庁の人材争奪戦が過熱しそうだ。採用時期を後ずれさせる経団連の指針を受け、各省庁は面接開始を昨年より1カ月遅い8月にした。企業の選考時期と合わせたためだが、企業と官公庁を併願する学生は日程面で就職活動が厳しくなった。8日に締め切りの国家公務員の総合職試験は受験者2万人割れの懸念も高まってきた。
3月1日に企業の採用説明会が解禁となった。経団連の加盟企業では8月の選考解禁に向け就活生向けの企業説明会やエントリーシートの受け付けが進む。採用時期の後ずれの影響は企業、学生ともに大きいが、とくに企業と官公庁を併願する学生の悩みは深い。
「民間との併願はきつい」。東京大学教養学部の男子学生(22)は浮かない顔だ。5月の国家公務員試験に向けて勉強しながら、商社や金融など10社ほどに絞って就職活動を進めている。東大キャリアサポート課には学生から「官公庁訪問と企業の面接の日程が重なる。どうしたらいいか」といった相談が相次ぐ。
経団連は16年卒の採用から面接などの解禁時期を8月1日と従来より4カ月遅らせた。就活の早期化が学業の支障となっているとの指摘を受けたためだ。政府も国家公務員試験の日程を見直した。総合職の1次試験は約1カ月遅い5月、通過者が対象の「官庁訪問」は8月5日に解禁する。
これまで官民を併願する学生は企業から内定を得たうえで公務員試験に挑むことができた。しかし16年卒は面接中心の官庁訪問の日程が企業の選考と重なる。14年度の国家公務員の受験者数は約2万1千人と10年前の6割程度。人事院の中嶋範子参事官補佐は「企業にどれだけ流れるか読めない」と話す。
受験者数の2万人割れを懸念する声も根強い。資格取得学校大手のTACでは国家総合職向け講座の受講者が14年4~12月の累計で前年同期比6%減った。「15年度の国家総合職の受験者は前年度よりさらに減りそうだ」(同社)。学生向け説明会を回る若手官僚からは「これ以上受験者が減ると優秀層が採れない」といった声も漏れる。
企業側も安穏とはしていられない。官公庁との優秀な人材の争奪戦を視野に入れ、採用予算の積み増しに動く。
人材サービスのディスコによると、16年卒採用で「採用予算が増える見込み」と答えた企業は35.7%に達し、前年より9.3ポイント上昇した。リクルーターの活用で学生との接点を広げる企業も14.7%に上っている。
経団連加盟企業にとっては、8月の面接解禁から10月の内定式までわずか2カ月の短期決戦となる。争奪戦のあおりを受ける中小企業では来春の採用を断念する動きも出ている。未体験の就職(採用)活動のなかで企業、学生、官公庁ともに焦燥感が広がっている。