紅蓮が加入してからさらに忙しくなったゴッデス部隊。
それは残念ながら当然であり、戦況が悪化の一途を辿っていたからだ。
いくらゴッデス部隊が最強無敵と言っても戦況に与える影響は少ない。
ウッディ大尉がアムロを叱咤した時を思い出す。
一個人が、一部隊が戦争の状況を動かすのは不可能なのだ。ゴッデスと言っても一部隊に過ぎないと言う事は分かりながらも戦況悪化を痛感するごとにもっとなにか出来たのではないかと自問自答せざる得なかった。
そんな最中、ゴッデスは指揮官の指示のもと会議室に集合し、軌道エレベーター攻略作戦の概要が伝えられる。
量産型ニケ、約100人が作戦に参加予定であるがドロシーを始め、全員が戦力不足を感じていた。
「空からの支援爆撃などは?」
「ベースジャバー隊による低高度爆撃と支援攻撃は予定されているが。あれはソーンしか造れないから数がない。しかも制空権もソーン頼りだ。あまり期待できない」
「どでかいミサイルをぶっぱなすのは?」
「先日のICBM発射の時にどうなったのか忘れたのか?」
レッドフードの案も最近潰された。ミサイルを吸収しマジックシリンダーのごとく返され半径20キロが火の海と化したのは記憶に新しい。
「ってことは。爆撃は望み薄、ミサイルはダメ。量産型のお友達と一緒に突撃するってのが作戦か?」
軌道エレベーター周辺には推定20万のラプチャーが配備されている。それを100と少しだけで突破しなければならないのは絶望的だ。
「おまた!」
空気が暗くなってきた頃、その場にいなかったソーンが大荷物を抱えて部屋に入ってくる。
「遅かったわね」
「すまないな」
ソーンは手早く机の上に荷物を広げると全員が興味深そうに見る。
「指揮官用の宇宙服とニケ用のバリュートパックだ」
指揮官用の宇宙服は従来のものより小さくなり動きやすくなっている。典型的なジオンのパイロット服だ。
ニケ用のバリュートパックはもし宇宙で放り投げられたときに地球の大気圏で焼かれないようにするためのもの。
作戦の企画段階でリリスに依頼され造っていたものだ。
「無事に大気圏を突破してもどこに落ちるか分からない。パラシュートが開く前にベースジャバーが連動して自動で迎えに来てくれるようにした」
「指揮官用は?」
「そうだ、俺が放り出されたらどうする?」
「バリュートが開くときの衝撃が強すぎて人間が使うと首が折れる。残念ながら改良する時間がなかった」
「……」
ソーンの言葉に思わず黙り込む指揮官。
「だからリリスに抱えて貰って大気圏を突破するしかない。他のヤツでも大丈夫だが俺が行けたら拾う予定だ」
「博士はなに使うんだ?」
「あれ」
ソーンが窓の外を指差すとそこにはガンダムMkⅡが使っていたフライングアーマーがあった。
今現在、愛用しているのが核非搭載のサイサリス装備なので大きすぎてバリュートに入りきらないのだ。それに宇宙空間で動き回れるのがいないと有事の時に対応できないからだ。
「使い方はベースジャバーと同じだから誰か使うときは参考にしてくれ。バリュートは展開が遅れると致命傷になる、オートで作動できるようになっているがカクリコンにはならないように」
「どこに落ちるかは運か?」
「バリュートパックのスラスターで調整は出来るから飛んでもないところに落ちることは無いと思うが落下予測ポイントは勝利の翼号や全員に共有されるから」
一通り、バリュートパックの説明を受けた一同は話を戻す。
「問題は軌道エレベーターまでにどうやって辿り着くかだが。実は隠し子が居てね」
指揮官の言葉に全員が興味深そうに視線を移す。
「真に受けないでね。ソーンも参加していた次世代型フェアリーテイルモデルが完成したの。その子に参加して貰う予定」
「まさかシンデレラか?」
「正解、流石ね。専用武装である《ガラスの靴》も完成しているし、テストも終わって実践性能も保証されてる」
この状況で最適な人員と言えばシンデレラだ。
「アイツならこの任務の成功確率は跳ね上がるだろうな」
ニケの性能も勿論だがシンデレラ自身は努力を欠かさないニケだった。
「どんな子だった?」
「とてもよい子だ。真っ直ぐでゴッデスの事を尊敬している。ガラスの靴の性能は保証しよう。俺がニケを造るんだったらシンデレラみたいなニケをつくりたいものだ」
「予想以上に評価が高いですが…成功率が跳ね上がるとはどのような」
ソーンの言葉に思わずドロシーが呟くほどシンデレラを褒める。
「シンデレラのガラスの靴は1対多数を前提にエネルギー兵器を満載した殲滅兵装、並みの爆撃機とは比較にならないレベルだよ」
「ソーンのお墨付きなら信頼できますね」
「博士はそう言うのに関しては妥協は一切ないからな」
スノーホワイトとレッドフードも自信満々に言い放つソーンを見て頷く。
「これだけお膳立てした最終決戦だ。私の最後の戦いとして最高じゃないか」
レッドフードの言葉に紅蓮を除く全員が言葉を失う。
「どうしたのかね?」
「あぁ、新人のセンセイには言ってなかったな」
彼女は目を閉じ、ゆっくりと開くと金色の眼が赤色に染まっていた。
「…侵食か。噂には聞いていたが都市伝説のようなものだと思っていたが」
「どうよ。都市伝説に出会った感想は?」
「瞳が紅くなっているだけではないのかね?侵食を受けたものは正気を失うと聞いているが」
「潜伏期間があるヤツもあるんだってよ。良く分かってないらしいけど。ラプンツェルとソーンも頑張ってくれたけどよ、ご覧の通りさ」
レッドフードが明るく話す横でラプンツェルは明らかに気を落としており、ソーンも表情には出さないが完全に黙ってしまった。
「まぁ、そんなことでこの作戦が終わったら私は引退だ」
レッドフード言葉は静かに、しかし重い言葉であった。
ーー
そんな事がありながらも第3ニケ研究所に近づいた勝利の翼号の甲板では右手にはビームバズーカ、左手には大型シールド、背中にフレキシブル・スラスター・バインダーのサイサリス装備のソーンを含め全員が待機していた。
「準備が終わったものから降下を開始」
「先に行きます。みんな後でね」
「俺も先に行く。エイブたちに先に話を着けてくる」
「頼む」
ソーンが先に降り、体勢を整えると背中にリリーバイスが降り立つ。
「お願いね」
「あぁ」
スラスターを吹かして一足先に研究所に向かうが何か違和感を覚える。
「研究所から連絡はないのか?」
「到着の報告はいれてるんだけど応対はないわ。近くのラプチャーに察知されないためだと思うけど…ソーン!」
「ちっ!」
ソーンはバレルロールを行いながら研究所方面から来る攻撃を避ける。
「ラプチャー!」
「先手を打たれた。ウルトラがいるわ、気をつけて!」
「任せろ!」
リリーバイスが無線で報告を入れながら飛び降りるとソーンはそのまま加速、フルチャージされたビームバズーカは強力な兵装であり、ウルトラを一撃で破壊する。
「エイブ、シンデレラ!応答しろ!エリシオン第3研究所!」
すれ違いざまにサーベルでラプチャーを破壊すると胸部マシンキャノンで雑魚を一掃すると研究所に近づく。
「これは…」
遠くからでは分からなかったがメインの隔壁がこじ開けられ、防戦していたと思われる量産型ニケたちが倒れていた。
「ソーン」
「駄目だ。あと少し早ければ…」
倒れていたオーシャンを確認しているとラプチャーを殲滅したリリーバイスが駆けつけてきた。
「状況は?」
「中に入られた形跡があるが気配がない。中に居たとしても少数だろう。それより」
ソーンは言葉を放ちながら隔壁を見つめる。
「もしかして内側から?」
「分からない。俺にはそう見える」
問題なのは隔壁が内側から破壊されたような形跡があると言うことだ。外側からなら分かる。だが内側からと言うことになるといくつか疑問が出てくる。
「指揮官を待つか?」
「安全確認だけしましょう。貴方もシンデレラが心配でしょ?」
「あぁ」
リリーバイスに感謝しながらも中に進む。
「狙われたと思うか?」
「おそらく。軽くだけど貴方が倒したのを含めてウルトラが4機もいたのは不自然よ」
滅多に見かけない侵食能力を持つ上位固体が4機もいるとは確かに不自然だ。
「ここがメインの研究室だ…っ!」
「これは…」
目の前には量産型ニケと小型ラプチャーが融合している状況であった。
「DG細胞…いやELSか?」
「ニケは?」
「死んでる。ラプチャーは生きているが、活動できる状態じゃないな」
あまりの事態に唖然とするしかないが現状、脅威は無さそうだと判断したソーンは周りを確認するとレッドシューズの靴と思われる破片を見つける。
「フェイズシフト装甲だ。間違いない…」
破損の状況からして装甲の起動前にやられていると言う事は奇襲、こんな中心部にいたレッドシューズたちが真っ先に襲われたと言うのは訳が分からない。
思わず頭を抱えるがすぐに皆を探し始める。
「エイブ!シンデレラ!レッドシューズ!セイレーン!ヘンゼル!グレーテル!」
瓦礫をどかして必死に探すが見つかるのはみんなの破片ばかり。その中にエイブのプロダクト12とシンデレラの破片がないのを気がかりにゴッデスの全員が来るまで捜索を続けるのだった。
サイサリス装備
武装、高出力ビームバズーカ、胸部マシンキャノン、ビームサーベル、大型シールド。
原作とは違い核の使用を想定していないためラジエーターシールドは様々な機能を備えた複合兵装搭載の大型シールドとなっている。
頭部にバルカンを装備するとEXAMシステムを搭載できないのと給弾システムが複雑化するのでウイングゼロのように胸部に埋め込んでいる。
フレキシブル・スラスター・バインダーによる機動力も良好で高い機動力を誇る。
全体的に高い出力を誇り、継戦能力も高く扱いやすい機体に仕上がっている。