ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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軌道エレベーター攻略作戦(中編)

 

「何だよ、これ…」

 

「面妖極まりない」

 

 融合したニケとラプチャーがいる部屋で解析をしていたソーンは後ろから来た他のメンバーたちが驚くのを見つめる。

 結局、みんなは見つからなかった。見つけたのは破片だけ、シンデレラに至っては痕跡すらなかった。

 メインの隔壁が内側から破壊されていたがあれは恐らくシンデレラだろう、不利を悟っておそらくエイブを連れて強行突破したと考えるのが自然だ。

 軌道エレベーターの作戦は既に共有している、シンデレラが駆けつけてくることを祈るしかない。

 

「ラプチャーの部品がニケに挿されているのですか?」

 

「いえ、良く見てくださいラプンツェル」

 

「そうだ、完全に融合している」

 

 ソーンの言葉に全員が言葉を失う。

 

「この方はまさか、生きているのですか?」

 

「いや、死んでいる。幸いにと言ったら良いのか」

 

 ニケは死んでいるがラプチャーは生きている。そんなグロテスクな光景を見ながらもリリーバイスは冷静に話を進めていく。

 

「ソーン、貴方の見解は?」

 

「ラプチャーは新たな進化の方法の一つとしてニケを選んだと考えて良いだろう。侵食はニケを乗っ取るものだが、融合すればニケの性能は大幅に上昇し、ラプチャー産のニケが生まれる。強力な敵になるだけなら良いが、既に味方に紛れ込んでいたら…」

 

 この個体を見るに失敗しているのだとすればまだ試作段階なのだろうが今後はどうなるか分からない。

 

「ラプチャーどもが妙なマネを始めたと言うことだ。侵食の事と言い、尋常ではない。」

 

「V.TCに報告します」

 

「あぁ、私も上層部に報告する」

 

「これ、このまま放っておくのか?」

 

「あぁ、生きているラプチャーは重要な手がかりだ。少しは調査に役立つだろう。私たちは今日、ここに滞在し上層部がこれを回収するまで待機する。もちろん、その間にソーンも解析してくれるがな」

 

 上層部に引き渡す以上、解体して調べるわけには行かないから表面的な物しか調べられないがやらないよりマシだろう。

 

 だがシンデレラが居なくなった以上、決断するべき事がある。予定されていた軌道エレベーター攻略作戦を決行するべきか、それともシンデレラの捜索を開始して作戦を延期するべきかだ。

 

 延期してしまえばレッドフードの状況的に厳しいかもしれない。

 

「それについてはリリスと検討する。明朝には伝達する」

 

ーー

 

 指揮官とリリーバイスがその場から去った後、全員が感じていた違和感を言葉にするラプンツェルたち。

 

「もてあそばれているようです。勝者が弱者をもてあそぶ、そのような悪意を感じます」

 

「…同感です」

 

「鼻持ちならん連中だ。驕るものたちは、敗者に首を叩き斬られる」

 

「盛者必衰は世の理だからな」

 

「まぁ、見せてやろうぜ。私たちが」

 

 絶望的な状況であるが流石はゴッデス、全員がそのラプチャーどもの鼻先を叩き潰そうと意気込んでいた。

 そんな話の中、レッドフードはスノーホワイトが作っていたゲーム(シミュレーション)を気に入り、楽しげに話しているのを聞きながら作業していると。

 

「クッソ…頭がいてぇ!」

 

「レッドフード!」

 

「だ、大丈夫だ。たまにこうやってひどくなるんだよ…博士」

 

「分かってる」

 

 呼ばれたソーンは懐から無針注射を取り出すとレッドフードの首にうつ。

 気休めにしかならない速効性の鎮痛薬だがこれしか方法がない。

 

「ドロシー、ラプンツェル、レッドフードを寝かせよう。効くまで少し時間がかかる」

 

「はい」 

 

「わかりました」

 

 ソーンは簡易ベッドを素早く組み立て置くと、ドロシーとラプンツェルはレッドフードを支えながら移動する。

 

「あ…あぁ……」

 

「おちびちゃん…!こっちへ…来な…手を、握ってく…!」

 

「わ、私は外に忘れ物があるので!」

 

 レッドフードの様子を見て慌てたのか逃げるように外に出るスノーホワイト。

 

「しゃべらないで、横になってください。スノーホワイトは私が連れてきますから」

 

「いや、私が行こう。二人はレッドフードを見ていてくれ」

 

 ラプンツェルの言葉を遮るように紅蓮が申し出る。

 こう言う場合、ラプンツェルより紅蓮の方がハッキリと言ってくれるから良いだろう。

 

「おい、剣のセンセイ。スノーは…まだ子供なんだ…あんまり…攻めんな…よ…!もし、手でも上げたら…!ブッ飛ばす…!」

 

「…覚えておこう」

 

 紅蓮がそう言い部屋を後にするとレッドフードが苦しそうに呻く。そんな彼女を三人で看病する。

 その後に紅蓮に諭されたスノーホワイトが戻ってきて二人で静かに歌を聞くのだった。

 

ーー

 

「シンデレラの追跡は行わない」

 

 指揮官が下した結論はシンデレラなしで軌道エレベーター攻略作戦を実行すると言うものだった。

 ソーン個人的にはシンデレラの捜索を行いたかったが眼前に大きな作戦を控えている以上、仕方ない。

 

 作戦内容はかなりシンプルだ。降りて軌道エレベーターに上がり、クイーンを倒す。ただそれだけ、メンバーの技量と連携を最大限活用しなければならない作戦だ。

 

「では、今から各自整備を行ってくれ」

 

 指揮官の言葉と共に解散する一同、スノーホワイトとソーンは工房に戻り、一通りの整備をした後分かれる。

 ソーンは研究所で見つけたオールドテイルズたちの破片を持って甲板の端っこに座ると酒を取り出して一人で静かに飲み始める。

 

(良い奴らだったのにな…)

 

 作戦直前に飲酒は他の者に見られたら怒られそうだが今日は無性に酒が飲みたい気分だった。

 レッドシューズ、セイレーン、ヘンゼル、グレーテル。

 2ヶ月位しか居なかったが死んだと思うと悲しくなってくる。シンデレラとエイブだけでも無事だと良いが。

 

「どこにも居ないと思ったらこんなとこに居たのか」

 

「病人は寝てろよ」

 

「病人扱いするんじゃねぇよ…強っ!」

 

 レッドフードはソーンの持っていた酒を掴んで飲むがあまりの度数の高さに驚く。

 

「これラッパ飲みとか正気じゃねぇな」

 

「明日には残さんよ」

 

「分かってるって。ほら」

 

「…アイマスク?」

 

 レッドフードに突然渡されたアイマスクを受けとる。

 

「博士は寝ることを覚えないとな。昔使ってたヤツでさ、部屋から出てきたからやるよ」

 

「縁起でもない。これじゃ形見分けじゃないか」

 

 ソーンはレッドフードから酒を奪い取ると再び飲む。

 

「スノーにも言われたよ」

 

「…多くは言わん。皆に言われてるだろうからな、特に白ちゃんに」

 

「良く分かってるじゃないか」

 

 それから特に意味のない雑多な話をしていると持ってきていた酒は空になっていた。

 

「お前のお陰でゴッデスも居心地が良かった。俺みたいなはぐれのニケをな」

 

「なに言ってんだよ。博士は天才だろ?ゴッデスにふさわしいじゃないか。私なんてただの田舎娘だぜ、こんな私を仲間として扱ってくれてありがたいよ」

 

 レッドフードがそんなことを思っていたのかと以外に思いながらも懐から取り出したスキットルを開ける。

 

「俺はお前の事をヒーローみたいだと思ってる。物語に登場する英雄やらなんやらはお前みたいな奴だと思ったものさ」

 

「世辞が上手く「俺がお前におべっかを使うと思うか?」

 

 言葉を被せられたレッドフードは黙ってしまう。

 

「誰しも自分の事はあまり知らないものさ。とりあえず作戦を成功させよう。そしたらお前のお別れ会を盛大に開いてやるさ」

 

「はっ、それは楽しみだな…流石に寝るよ明日は早いからな」

 

 ゆっくりと立ち上がって立ち去るレッドフードを見届けるとソーンはスキットルを掲げる。

 

「滅び行く者のために…」

 

ーー

 

「本当に大丈夫か?」

 

「走るのしんどいってわがまま言う指揮官のために改造したんだからありがたく受けとれ」

 

 作戦当日、スノーホワイトがゴッデスのメンバーの武装の調整を説明している間にソーンは指揮官をバイクに乗せていた。

 バイクであるが運転する必要はない、勝手に動いてくれるから乗っている指揮官はハンドルに捕まっているだけで良い優れものだ。

 

「降下地点に降ろしたら勝手に指揮官のところに来るから乗ってくれ」

 

「分かった」

 

「台尻にきのこが生えてた時はビックリしましたよね、ソーン!」

 

「それはビックリした」

 

 不満を漏らすスノーホワイトに同意しながら説明を続け、遂に作戦開始時間になるのだった。

 

ーー

 

「量産型部隊が正面から突入!あわせて、遠距離支援爆撃、開始!」

 

「高度維持!速度を落とすな!なるべく深く切り込むぞ!」

 

 勝利の翼号は最大速度を維持したままラプチャーの群れに突っ込む。その甲板ではカタパルトに固定されいつでも出撃可能なサイサリス装備のソーンとベースジャバー隊が出撃の時を今か今かと待ち構えていた。

 

「ラプチャーがこちらを認識!対空火器にマーキング!」

 

「よし!行くぞ!」

 

 積められるだけの武装を積んだソーンが出撃すると同時にベースジャバー隊も発進、対空ラプチャーを即座に破壊する。

 

「第一目標破壊、これより我々は降下地点の確保に移る!」

 

 ベースジャバーとソーンにこれでもかと積まれていたミサイルが発射、ミサイルのシャワーがラプチャーに降り注ぎ、群れに大きな穴をあける。

 

「自律飛行に切り替え!1分後に降下、攻撃する!直近のJポイントで合流!合流後、最短距離で軌道エレベーターに突入する!」

 

 駆け付けてきた空中のラプチャーが特攻を仕掛け、ベースジャバー1機を破壊、量産型ニケが吹き飛ばされる。

 

「無事か!」

 

「はい!」

 

「それ!」

 

 飛び込んできたソーンがニケを受け止めるとそのまま近くを飛んでいたベースジャバーに投げる。

 なんとしても合流地点であるJポイントの安全を確保しなければならないソーンは全身に着けてきたミサイルを発射する。

 

「命令はただ一つだ!敵を一掃しろ!」

 

「最高の命令だ!」

 

 空になったミサイルポッドを投棄しているとレッドフードとスノーホワイトが狙撃しながら降下していくのが見える。

 朝焼けの空にビームが駆け抜け、凪払われると同時に無数の空中ラプチャーが爆発する。

 

「させん!」

 

 降下するゴッデスを狙うストームブリンガーの頭部をビームサーベルで斬り飛ばすと胴体をビームバズーカで破壊する。

 

「ラプチャーの雨に注意しろ!」

 

 突撃していた量産型ニケたちはお互いに警戒を促しながら前進を続ける。

 破壊されたラプチャーの破片が降り注ぐ、ラプチャーが降る戦場を作り出すソーンの圧倒的な制空権掌握能力を表すのに誰かが言った《レインメーカー》と。

 そんな彼女の圧倒的な制空権掌握能力はこの戦場でも健在であった。

 

「空から見ても良く分かるな」

 

 ソーンはリリーバイスが吹き飛ばしたラプチャーを空から眺めながら呟く。

 

ーー

 

 ゴッデスは進撃を続け、指揮官もバイクのおかげで息切れすることなく進み続ける。軌道エレベーター前に陣取っていたウルトラも軽く破壊しついに軌道エレベーター前に辿り着く。

 

「状況終了」

 

「ふん、奇襲じゃなきゃ大したことないな」

 

「じゃあ、エレベーターに乗って宇宙に行く?」

 

 エレベーター前で合流したソーンは飛んできた補給コンテナで補給を受ける。ゴッデスの全員も武装を再確認し、指揮官も宇宙服を準備する。

 

「眩しい、お日様も歓迎してくれてるみたいだな」

 

「朝日は苦手だ。いつもラプンツェルが工房のカーテン開けてくるから」

 

「陽の光を浴びないと不健康になりますよ。ただでさえ不健康な生活を送っているのですから...」

 

「みんな…あそこ。なんだと思う?」

 

 レッドフードの緊張感のある声に全員が彼女の示す先を見た。

 

「人間…みたいですけど」

 

「新種のデコイでしょうか?」

 

「デコイにしては、形が変わりすぎてはいないかね?」

 

 ソーンはバイザーを降ろし、日光を調整しながら目を向けると言葉を失う。

 

「体から何かが抜け出ているようですね。分裂している」

 

「シンデレラ…」

 

 ソーンの言葉に全員が驚き、ソーンから受け取った望遠鏡で指揮官も確認する。

 

「間違いない、シンデレラだ。ガラスの靴もあるが目の色が」

 

「ガラスの靴のあの挙動。マズイ!攻撃体勢だ!」

 

「全員、ハイド!」

 

 ソーンの言葉に最短で反応した指揮官は叫び、全員が動く。

 

 空から雨が降り注いだ。

 いや、そう勘違いするほどの光があふれた。

 青色に輝くビームが空を埋め尽くすほどの勢いでゴッデス部隊に向かって押し寄せた。

 

「ラプンツェル!ディストーションフィールド!」

 

「はい!」

 

 ラプンツェルのおかげで第一波を防ぐと同時にリリーバイスが叫ぶ。

 

「レッドフード!落として!」

 

「任せな!」

 

「駄目だ!レッドフード、跳ね返されるぞ!」

 

「どうすりゃ良いんだ!」

 

 素早く構えるレッドフードを抑えるとソーンはフレシキブル・スラスター・バインダーを展開。最大出力で飛び上がる。

 

「無茶だ!ソーン!」

 

「ビーム兵器!また来ます!」

 

「バカな…!こんなものを単独で運用できるはずが…!」

 

「ソーン!」

 

 ソーンは大型シールド内蔵のIフィールドを起動、シンデレラのビームが明後日の方向に曲がっていく。

 彼女はさらに加速させビームサーベルを抜き放つと大型シールドでシンデレラを殴り飛ばす。

 

「ここは俺が抑える!先に行け!」

 

「ソーン!」

 

「シンデレラは良く知ってる!それに、レッドフードの時間を無駄にするな!」

 

 遥か空中で接近戦を仕掛けるソーンと対抗するシンデレラの戦いを現状、援護するのは難しい判断したリリーバイスは指揮官に目を向ける。

 指揮官も同意見だったようで彼も静かに頷く。

 

「ソーン、任せたぞ!」

 

「あいよ!」

 

 急いで駆け出す指揮官とリリーバイス。

 若干、心配そうに見やる他のメンバーも軌道エレベーターに向かうのだった。

 

「頼んだぞ、みんな!」

 

《EXAMシステム スタンバイ!》

 

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