鹿児島県 マッコウ320頭発見 通年ホエールウォッチ期待高まる 大和村・宇検村沖合
奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は4日、2025年シーズン(4~10月)のマッコウクジラ発見頭数が192群320頭だったと発表した。23年から本格実施しているマッコウスイムツア―の参加者は1365人で、23年の約5倍となった。12月から3月にかけ出現するザトウクジラと併せ、通年での鯨類ウォッチングの可能性が高まった。 マッコウクジラは、歯を持つハクジラ類で最大の種。巨大な頭部を持ち、深海での活動に適した「脳油」と呼ばれる油を蓄えて浮力を調整する。「性二型(せいじけい)」と呼ばれるようにオス・メスの性差が顕著で、オスは約17㍍(50㌧)、メスは約12㍍(25㌧)。 同協会は、20~21年に実施した奄美大島西方(大和村・宇検村沖合約15㌔)での「新規ホエールウォッチング可能性調査」で、奄美海盆海域(水深950㍍)におけるマッコウクジラの生息を明らかにした。 その後も調査や試験的なマッコウスイム(シュノーケリングによる海面からの観察)ツアーを実施し、年間を通して一定数が確認されたことから、23年から本格的なスイムツアーをスタート。 参加者数は出航日数の増加に伴い年々増えており、25年は出航日数108日、うち発見日数80日、1365人の参加だった。
期間中の発見頭数は、192群320頭。個体識別頭数は28頭。6月23日には、定住する母子の育児群にオスが合流し19個体の大きな群れを形成、直立して仮眠をとる「立ち寝」の様子も観察された。 興会長によると、マッコウクジラの大人のオスは、夏から秋にかけて北海道・知床周辺へ北上、小笠原には育児をする母子群、長崎には若いオスがいるという。奄美大島西方には、母子群に加え、若いオスやメスのグループが確認されている。 同協会は現在、他海域(長崎県五島列島・沖縄島・小笠原・台湾)の研究機関と協力し、尾びれ識別写真の照合などの合同研究を行っており、「季節回遊」に関する新たな知見が期待されている。 興会長は「尾びれ識別が進めば、新たな回遊ルートの発見につながる可能性もあり楽しみ。冬のザトウ、春~秋のマッコウ、奄美は海の資源に恵まれている」と期待を寄せた。