高市早苗首相が10月31日、韓国で中国の習近平国家主席と初めて会談した。共通利益を拡大する「戦略的互恵関係」を包括的に推進することを確認した一方、台湾問題では互いにけん制した。ファーストコンタクトを評価する。
高市首相は、日ASEAN(東南アジア諸国連合)、日米首脳会談を矢継ぎ早に行った後、日中首脳会談に臨んだ。日ASEANでは、ど真ん中の集合写真で分かるように各国からの歓待を受け、高市首相も精力的に外交を行った。
日米首脳会談では、直後に行われる米中首脳会談で米国をサポートするレアアース協定を結んだ。さらに米大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に高市首相とトランプ大統領が同乗し、原子力空母ジョージ・ワシントンで演説するという離れ技で欧米の度肝を抜いた。
これだけ、日米の親密さを目の当たりにした中国の習氏は、高市首相は手ごわいと思ったはずだ。高市氏が自民党総裁に指名された10月4日以降、中国の尖閣周辺への領海侵入は激減した。確認されたのは10月15日しかない。首相に指名された21日以降はゼロだ。明らかに中国は様子見だ。
そうした中での日中首脳会談である。高市首相と習氏の首脳会談冒頭では、歯を見せずに握手は片手だった。前任の石破茂首相が両手で握手していたのとは好対照で、高市首相は毅然(きぜん)としていた。
高市首相は、日本産水産物と日本産牛肉の輸入再開を求め、中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を示したほか、中国滞在の日本国民のための安全確保、拘束中の邦人の早期釈放を求めた。さらに、尖閣周辺海域を含む東シナ海での中国によるエスカレーションや海洋調査活動、日本周辺の中国軍の活発化、台湾海峡問題、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区などの状況に対する深刻な懸念を表明した。
高市首相は、言うべきことを全て言ったという印象である。台湾への言及は中国の国内問題、香港、新疆ウイグル自治区への言及は人権問題を伴うので、中国としては痛いところだ。しかし、中国側の論評は目立たず、批判的でなかった。
米韓首脳会談で、トランプ大統領は韓国の原潜製造に前向きだった。原潜がより必要なのは日本である。マリーンワンでの高市・トランプ両氏の差しの会話は誰も分からないが、日本も原潜となれば、抑止力となり、日本の戦争確率は激減する。日中首脳会談は日本としてのロケットスタートといえる。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)