「そろった歯を見てびっくりした」虫歯などで失った歯、驚くほど精巧に修復…徳島大病院で最先端治療
虫歯を自然な姿に修復し、欠けたり、失われたりした歯も復元できる最先端の治療が、徳島大病院の歯科で行われている。患者の歯に合わせた透明な型枠に、プラスチック材料「コンポジットレジン(CR)」を注入して復元する。型枠とCRの進歩が、歯を極力削らない治療や復元が困難だった症例への対応を可能にした。(吉田誠一)
「こんな治療法があるなら、もっと早く知りたかった」。兵庫県洲本市の会社員男性(28)はきれいに並んだ自分の歯を見て感動したという。仕事が忙しく、歯の手入れを怠りがちになり、約5年前から虫歯が一気に進行した。歯医者に行く時間を惜しみ、痛みを我慢するうちに、上の前歯6本が大きく欠けた。
「抜かれるのかな」と不安を抱えながら地元の歯科クリニックを受診し、徳島大病院の歯科を紹介された。一昨年の冬、前歯の形を復元するための透明な型枠を作り、虫歯部分を丁寧に取り除いた歯に接着剤を塗ってCRを注入。治療はわずか数時間で完了した。
男性は「そろった歯を見てびっくりした」と振り返る。以来、硬い食べ物もかめるようになった。口を隠さず思いっきり笑えることにも喜ぶ。
■極力削らない
徳島大病院むし歯科診療科長の保坂啓一教授(47)は現場で臨床を重ねながら国内外のクリニックにこの治療法を紹介している。「健康な歯と同じように手入れができる。この虫歯の修復・復元方法が広がってほしい」と話す。
これまでの虫歯治療では、銀歯やセラミックが詰め物に多用されてきた。強度は十分だが、歯の型取りをして詰め物を作る必要があり、時間と手間がかかった。年月がたつと、詰め物は変形しないが、周囲の歯が削れて隙間ができ、虫歯になることもある。
この欠点を補えるのがCRだ。保坂教授によると、CRの製造技術やCRを歯に固定するための接着技術は、日本が世界をリードしてきたという。軟らかいCRは扱いやすく、専用の接着剤で歯に強く接着し、青色LEDを照射すると瞬時に固まる。保坂教授は20年ほど前から接着技術に着目。「健康な歯を極力削らない治療」を研究してきた。