障害者就労、過大受給か 「支援制度に反する」手口、20億円 大阪の事業所
障害者の就労を支援するための給付金を過大に受け取った疑いがあるとして、大阪市が障害福祉事業などを運営する「絆ホールディングス(HD)」(同市)の関連事業所に対し、障害者総合支援法に基づく監査に入ったことがわかった。複数の市関係者が明らかにした。過大受給は20億円以上にのぼる可能性があり、市は返還請求を検討している。
関係者によると、過大受給の疑いがあるのは、絆HDの子会社などが運営し、障害者が就職に必要な知識・能力の取得を支援する三つの「就労継続支援A型事業所」。
A型事業所を利用する障害者が企業などに一般就労し、半年以上雇用されると、就労者数などに応じて事業所に「就労移行支援体制加算」と呼ばれる加算金が支払われる。加算金は市町村・特別区に申請し、国が半分、都道府県と市町村・特別区が4分の1ずつ負担する仕組みだ。
この加算金について、三つのA型事業所では2021年以降、一般就労した障害者を事業所の利用者として戻し、再び一般就労させることを繰り返して複数回受給していたという。また、多くの利用者の一般就労先は所属していたA型事業所で、就労前と同じ作業を任せていた疑いもあるという。
市は、利用者からの情報提供も踏まえ、絆HD側が障害者の意向を無視して何度も一般就労させていたケースもあるとみており、「就労を支援する制度の趣旨に反する」と問題視している。
厚生労働省は24年4月、加算金は利用者1人あたり、3年間に1回しか認めない制度に改正していたが、絆HD側は24~25年度も同じ方法で、加算金を申請。関係者によると、ルール変更後の過大受給は20億円以上に上るとみられるという。
大阪市の横山英幸市長は6日、記者団の取材に対し、絆HDの関連事業所に監査に入ったことを認めたうえで、適正な事業運営が行われていないことが確認できれば「(加算金の)返還請求は当然あり得る」と述べた。
絆HDの広報担当者は朝日新聞の取材に「これまでも法令を順守し、制度の趣旨を踏まえた適切な運営に努めてきた。適切な時期に詳細を説明する」としている。(村井隼人)
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