最近よくやべー奴に絡まれる。


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作:かげのかげたろう
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六夜 黒髪ショートしっかりものドラマーお姉さん


(夢みたので)初投稿です。


 

 最近、夜にやべー奴によく会う。

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさーい」

 

 ぐつぐつと料理を煮込んでいると、玄関から扉の開閉音と声が聞こえてくる。一度火を止めて、玄関へ顔を出せば黒髪ショートカットのお姉さんが疲れた顔で靴を脱いでいる姿が見える。

 

「お疲れ様」

 

「うん、ありがとう」

 

「今日は遅かったすね」

 

「バンドの合わせがあったから……ご飯なに?」

 

「ビーフシチュー」

 

「美味しそう、楽しみにしてる」

 

「お風呂沸いてるから先に入っておいで」

 

「助かる……いつもありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 疲れた足取りで歩みを進めるお姉さん……志麻さんはぽんと肩を叩いて、自室へ着替えを取りに行く。その背を眺め終えて、キッチンに戻って鍋に再び火をつける。

 志麻さんの好みが分からないのでビーフシチューのお供にご飯とパン両方用意したが、果たしてどちらだろう。

 嫌いな食べ物は無いらしいし、とりあえず並べておけばいいかと考えながら煙草に火をつける。

 

「…………」

 

 人の家で煙草を吸うのはいかがなものか、とは思いはするものの「換気扇の下で吸うならいいよ」と許可は貰っている。灰皿もなんか買ってくれたし。

 換気扇へ煙を吹いて、時折鍋の中のビーフシチューの具合を見る。匂い的に美味そうだし、パッと見美味しい感じに出来ているだろう。

 もうひと煮込み…………

 

「ちょっと待てぃ」

 

 心の中の千鳥が叫んだ。何故俺はお姉さんと今同棲しているんだ。何でだっけ。

 高校の転校前夜あの日に「段ボールの中で捨てられた目をし続けて誰かに拾われるまで帰れまてん」をした結果なんやかんや志麻さんと同棲する事になったのだが、いや待て違うそのなんやかんやが何だ。

 転校までの準備期間は休みだったからその期間は志麻さんの家に泊まって、それで家事とかして仲良くなって、もうちょっと居なよって言われてそれで……。

 

「一ヶ月が、経過?」

 

 時早すぎだろ。

 すわスタンド攻撃か。思いはしたが今の所波紋も幽霊も見えた事はない。

 では違う。きっと時が早く感じたのは環境の変化のせいだ。

 

「…………」

 

 志麻さんの家に住み着いて、転校して、新しい学校に通って、志麻家で料理やら家事やらやるようになって。

 そろそろお暇しようかな、と言えばもうちょっとと言われて少し伸ばして、またお暇しようとしてもうちょっとと言われ伸ばしてお暇もうちょっと伸ばしていや無限ループか。

 やっぱりスタンド攻撃受けてるかも。

 

「……ふむ」

 

 しかし実際は出ていく理由もないのだ。

 住み心地いいし、家の中で煙草吸えるし、志麻さん優しいし。出て行かなくていい理由ばかりが溢れていて、暫くはこのまま厄介でいいとさえ思っている。

 そうだろう、このまま、もうちょっとだけ…………

 

『駄目だよ!』

 

 ────俺の心の中の伊地知?

 

『そんな女の人の家にずっと居るなんて、なんか、こう、ふしだらだよ!』

 

 ふし、だら?

 

『そうだよ!あとなんかクズっぽいしヒモっぽい!』

 

 あんまりな言い方じゃないかマイハート伊地知。

 

『そんな事ないもん本当の事だもん!』

 

 そのアホ毛を回すのをやめなさい。

 

『そうだよ、マイフレンド』

 

 ─────その声は、我が友、李徴氏ではないか?

 

『小嶋だよ』

 

 山田だよ。

 

『バレたか』

 

 何だ俺の心の山田、何が言いたくて出て来たんだ。

 

『その生活は、あまりにマイフレンドには勿体無い』

 

 勿体無いとは。

 

『料理を率先して作ってるけど、実際その人は自分で作れるしなんなら家事も全てやってくれる』

 

 そうだね。

 

『そんな贅沢なだらだら生活をするのは、私だけでいい』

 

 それが本音か。

 

『代わって欲しい。というか養って欲しい』

 

 流石マイフレンド乞食。

 

『それほどでも』

 

 褒めてない。

 

『えっ』

 

 じりっ、と灰皿に煙草を押し付ける。

 俺の心の中の天使と悪魔もとい伊地知と山田が『わー』と声を上げて消える。結局何が言いたかったんだあいつら。

 首を傾げ、シチューの様子を見る。……十分煮込んで美味しくなったようで、完璧な仕上がりを見せている。

 

「これは一番人気」

 

「……何言ってるの?」

 

「テイオーステップさながらの調子のいいシチューだなと」

 

「ていおーすてっぷ……?」

 

「後でやってみせますね」

 

「うん、何か分からないけど宜しく」

 

「宜しくされた」

 

 振り返れば、お風呂上がりの志麻さんがタオルで髪の水気を拭いながらこちらを覗いていた。

 

「ちゃんとお風呂入りました?」

 

「入ったけど、お腹空いちゃってすぐ上がっちゃった」

 

「髪乾かしてる間に用意しとくんで、行って来て下さい」

 

「……乾かして?」

 

「服着たらいいですよ」

 

「暑いんだもん」

 

「だもんじゃありません」

 

 最初はしっかりしてたのに最近ではお風呂上がりは下着姿でうろつくようになって宜しくない。俺が来るまではそうだったのかもしれないが、一応異性の目があるところでは肌を晒さないべきではあると思うのだが。

 

「……ね、お願い」

 

「……はいはい」

 

 普段はしっかりした様子の志麻さんだが、何故だか最近は甘える事が多くなったように感じる。鍋に掛けていた火を止め、志麻さんをリビングのソファーに座らせる。

 壁の棚に備えていたドライヤーを手に取り、近くのコンセントに刺してスイッチを入れればぶわーっと暖風が吹く。

 後ろからドライヤーを吹き掛けて、髪をさらさらと手で梳きながら乾かしていく。

 

「んー…………」

 

「熱くないすか?」

 

「平気」

 

「よかった」

 

「今日は楽しい事あった?」

 

「特に何もない素晴らしい一日でしたよ」

 

「そんな夏休みの絵日記みたいな」

 

「何もないから仕方ないじゃないすか」

 

「まあそうだね」

 

「志麻さんは?」

 

「別に何も」

 

「同じすね」

 

「高校生ならもっと楽しい事あってくれと思うけどね」

 

「なんすかそれ」

 

 ヘアオイルでしっとりとした髪が艶やかにドライヤーで揺れる。シャンプーしたての髪の良い匂いが鼻先に届いて、甘いなあと思いながら乾かしていく。

 自分も使っているからこの匂いにも慣れたようで、最初は女の人っぽい匂いが自分からもするのが変な感じだったのを思い出す。

 しかし何故だろうか。同じシャンプーを使っているのに、志麻さんの匂いは少し違う匂いがする気がする。不思議。

 

「ある程度乾いたらいいからね」

 

「はーい」

 

「いつもありがとね」

 

「住ませて貰ってるんでこれくらいは」

 

「家賃分働いて貰わなきゃね」

 

「だいぶお安いようで」

 

「誰が安い女だって?」

 

「言ってねえ」

 

「んー、ドライヤーでよく聞こえないや」

 

「いつも抱き枕にするのやめてください」

 

「それは無理」

 

「聞こえてんじゃないすか」

 

「えー?なんだって?」

 

「都合のいい耳しやがって」

 

「誰が都合のいい女だって?」

 

「変換機能どうなってんだ」

 

 ぶわー、と乾かしていく。ドライヤーの音が鳴り響く部屋で、ぼんやりといつも通りの穏やかな会話をする。

 

「あ、あとそろそろお暇するんで」

 

「んー、聞こえないや」

 

「一ヶ月くらいお世話になりました」

 

「ドライヤーってこんなに音大きいんだね」

 

「またダンボール入ってたら拾って下さい」

 

「暖房つけるにはまだ早いよ」

 

「志麻さん」

 

「んー」

 

 もう。志麻さんったら若いのに耳が遠いんだから。

 

「志麻」

 

 かちり、とドライヤーを止める。

 

「またいつかね」

 

「…………まだ髪乾いてないよ」

 

「結構乾いたよ」

 

「まだだよ」

 

「いつもこれくらいだよ」

 

「もうちょっと乾かして」

 

「風邪引いちゃうから服着ておいで」

 

「もうちょっと」

 

「ある程度でいいって言ったのは志麻だよ」

 

「……もうちょっと」

 

 ぽん、と頭を撫でる。

 少し水気の残る髪を撫で付けて、首元に掛かっていたタオルで目元を覆う。

 風呂上がりのほかほかとした温もりがじんわりと俺に伝わってくる。

 

「またね」

 

「……今日は居る?」

 

「うん」

 

「…………わかった」

 

「偉い」

 

 ぽんぽん、と頭を撫でて目元を覆っていたタオルを取る。

 コードを抜いて、ドライヤーを棚に戻して晩御飯の準備をしようとキッチンへ戻る。足を進める。

 袖を引かれる。止まる。

 

「今日も、抱き枕ね」

 

「……あんま強く使わないでね」

 

「さあ?今日は何だか壊しそうな気もする」

 

「抱き枕は大事に長く使うべきだと思うんですけど」

 

「丈夫な抱き枕なら遠慮なく抱き締められるじゃん」

 

「次の抱き枕は大変そう」

 

「私、ミニマリストだから一個だけでいいよそういうの」

 

「ミニマリストかなあ……」

 

「ちょっと違うかも」

 

「だよね」

 

 袖を離される。振り返って顔を見てみれば、黒のレースの下着姿の凄い美人な黒髪ショートのお姉さんが微笑んでいた。

 

「料理、楽しみにしてる」

 

「ん、今日のは美味しいよ」

 

「うん」

 

 笑んで、キッチンへ足を向ける。すん、と鼻を鳴らした音が聞こえたのはきっと気のせいで、さっき見た笑顔の瞳が潤んでいたのもきっと気のせい。

 俺はこの家では料理を作って一緒に食べて、いろんな家事をして、夜は抱き枕になってあげるただの居候だ。

 この家に居る間は、難しい事はあまり分からないのだ。そう言う事にしておこう。

 

「意地悪」

 

「ビールある?うん、あるよ」

 

「そういうとこ」

 

「回鍋肉は作ってないよ」

 

「高校生の癖に」

 

「速攻でくれ?まず服着て来てね」

 

「また来てね」

 

「また来るよ」

 

「…………うん」

 

 さて、料理を並べよう。

 今日は腕によりを掛けたのだ、どう足掻いても美味しいと言わせてみせよう。

 今度来た時も、美味しいものを作ってあげよう。

 

 

 

 

「今日の抱き枕はなんだか何も着ないで抱き締めたい気分」

 

「えっ」

 

「そう言う日もあるよね」

 

「えっ」

 

「大丈夫、私温かいから寒くならないよ」

 

「いや違くてあの」

 

「痛くしないよ」

 

「違う話が違う待て一旦落ち着こう」

 

「大丈夫だよ」

 

「いやそれ大丈夫じゃな」

 

「大丈夫」

 

「根拠を言え根拠を」

 

「責任は取るから」

 

「待ってご飯食べよっか俺まだ寝たくないなあお腹空いたなあいやあ今日は美味しいビーフシチューが出来たから是非食べて欲しいから待って抱くのはせめてちゃんとご飯食べて落ち着いてから待て待て志麻さ──────────」




「…………アンタ、その首どうしたの?」

「………………犬に噛まれた」

「なんか凄い痛そうなんだけど……虫刺されも酷くない?」

「俺、動物と虫に好かれる体質だから」

「にしても刺されすぎじゃ……元気もなくない?」

「今日の学校が疲れたんだよ」

「なんか大変そうね……転校して色々あるだろうから、話くらい聞くわよ」

「…………ヨヨコはそのままで居てくれよ」

「……なに?どういう意味よ」

「今日もヨヨコは可愛いなあって」

「はあ!???何急に!!!!煽ててもお菓子しか出ないわよ!!!!」

「ヨヨコは可愛いなあ」

「もう!!!!!!!プリンもおまけよ!!!!!!あとジュース!!!!!!!!」

すけべなぼっちざろっくを見たいかどうか(R18)

  • YES、すけべYESえっち。
  • NO、すけべダメ絶対。
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