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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
371/1281

代行者

 俺達が敵と睨み合いを始めて五分。

 何度も陣形の変化があった。

 クズと女王の作戦は何度読み合いがあったのかわからない。


 ステータス魔法で写される。

 この辺りの地形と陣形の形の変化に俺は若干戸惑いつつ、何度も応じる。

 クズが実際の戦争でどれだけの知略を巡らせるのか俺自身は体験していない。

 いや、作戦には参加していたが、あくまで敵の大将を取る為に別働隊だったから実際は良く知らないんだよな。


「左翼を固めて! 右翼も……中心は下がれ!」


 そんな問答が何度か繰り広げられたあと、クズが宣言すると同時に俺は前に出た。


「イワタニ殿達は突撃!」


 号令に従い。俺は前面に出る。

 と、同時に絶句した。

 何せ敵軍に向かって大規模な隕石落下魔法が炸裂したからだ。


 上手く行くのかと思って、失敗を前提に進んでいたが、こうもあっさりと敵に命中すると驚く。

 女王が無能……なのではなく、集団詠唱魔法の唱え方が秀逸だった。

 本来、集団で唱える魔法は一カ所に集まる事に意味がある。集まった分だけ、威力も詠唱も跳ね上がるからだ。


 だが、クズは軍の中でバラバラに魔法兵を配置し、分割で集団詠唱を完成させると言う荒技とも言える事を仕出かした。

 この辺りは、魔法に敏感になった今の俺だから理解できる現象だ。


 正直、狂っているとしか言いようがない。

 何処に落ちるか、威力だって保証できない魔法を的確なタイミングと威力で命中させるとか、どんだけなんだよ。

 クズを相手にすると何が起こるかわからないとシルトヴェルトの連中は言っていたが、まさしくその通りだな。


 おそらく、女王でさえも予想が出来ないタイミングでの魔法落下だろうな。

 いや……予測はしていたのだろう。

 だから何度も陣形の変化があった。

 その読みあいの果てに、クズが勝ったのだ。こんな意表を突いた攻撃がこれから何重にも渡って繰り広げられるのか。


「うわぁあああああああああああああ!」


 敵軍の兵士共が吹き飛んで行く姿が見える。

 そのまま俺はディフェンスリンクと流星壁を発動させて敵軍に向かって突撃した。


「め、女神様の加護を忘れるな、皆の者!」


 転生者では無い敵軍の兵を指揮している奴が神頼みの加護を期待している。

 案の定、クソ女神は援護魔法を使ったらしいな。ボロボロになって地に伏していた兵士がゾンビのように起き上がって、みるみる傷が治されて行く。

 痛みも無いのかヘラヘラと笑いだして気持ち悪い。

 しかもこっちに反撃の隕石落下と地面からマグマが噴出する。


「その動きは読んでおった!」


 クズが指示する陣形に合わせると、ものの見事に降り注ぐ隕石とマグマをこちらの軍は回避する。

 どんだけだよ。クズ!


「イワタニ殿! そろそろ敵軍の将が姿を現す時、頼みましたぞ!」


 クズの宣言に俺は気配を察知する。


「そこか!」


 魔力航行を作動して空中に浮かび、盾を構える。

 すると直後に刀を持った奴が突然現れて今まさにスキルを放つ瞬間だった。


「空走り上弦月! 何――」


 鋭い刃が俺を捉えて、月の如く切り裂こうと迫っている。

 俺はその刃を受け止めると軽い金属音が響いた。

 転生者は言葉を無くしている。


「まさか――」


 お前等、クズの本気を今まで見ていなかったのか?

 いや、そうじゃないな。

 俺が完全に耐えきれている事に驚いているんだろう。

 じゃなきゃクズ相手にこんな不意打ちを基本にした戦い方なんてしないだろう。


「逃がさないぞ」


 ガシッと転生者の刀を掴んで俺は意識を集中する。

 その間にクズは後方から準備していた魔法を転生者やその取り巻きに向かって唱えていた。


「アル・リベレイション・ダウンⅩ!」


 樹がクズの指示に応じて能力ダウンの魔法を仕掛ける。

 同時に俺は魔法を深く……唱えた。

 俺は樹のその魔法に干渉し、対象を範囲から固定に変更した。

 緑色の光が敵を追尾しながら、陣を描く。


 戦闘の基本は敵を弱体化させたら、味方を強化する事だ。

 俺は一呼吸入れるよりも早く詠唱は最大限の短縮を行い、勘付かれない範囲での最高峰の援護魔法を形とする。


「アル・リベレイション・オーラEX!」


 ディフェンスリンクで繋がれた線を伝って魔法を伝導させる。

 戦場にいる全ての味方に向けて援護魔法は発動した。

 そのお陰で、クソ女神が唱えた援護魔法で強化された敵軍と、俺達はまとも以上に戦えるはずだ。

 俺達の魔法を無効化させるための、チート能力の掛った魔法と異能力が降り注ぐ。


「錬、樹、フォウル、グラス! そいつらに向かっていけ!」

「わかった! 尚文はどうするんだ!?」

「俺か? 俺はコイツを止めるのと同時に……」


 降り注ごうとする無効化の魔法に対してスキルをただ一言だけ唱える。


「ディ・ディスペルパリィ!」


 ……このスキルは援護を無効化する攻撃を全て、受け流すスキルだ。

 本来はディスペルパリィと言う単体を守るスキルだけど、これはディと言う複数系だ。

 つまり――


「な、動きが遅くならないだと!」


 転生者共が絶句する。

 そう……敵軍が使ってくる援護無効の攻撃は全て、無効にさせてもらった。

 もちろん、クソ女神がルールを守っている範囲での話だけどな。

 まあ、奴は遊んでいる。

 この程度なら、まだ本気にはならないだろう。


「よし! 尚文の言う通りに行くぞ!」

「「おお!」」


 錬達が駆け抜けて行く。

 ディフェンスリンクの効果は切れない。

 本来は効果時間があるんだが、今の俺は任意で効果時間をコントロールする事ができる。

 事実上、無限に続く防御スキルだ。

 昨日と同じく、錬達が死ぬ気の特攻をしても全くダメージを受けない。


「な、なんだこいつ等! 攻撃しても避けずに突き進んでくる!」

「チートだ! こいつ等ズルしやがって! 卑怯者!」


 何度目のお前等が言うな! を言っているんだこいつ等は。

 チート能力を使っているのはお前等だって変わらないだろうが。


「さて……」

「いつまで掴んでいるんだ! 放せ!」

「誰が放すか」


 刀を持った奴が俺に向かって怒鳴る。

 思い通りに事が運ばずにイラ付いているんだろうなぁ。

 コイツみたいな奴のこう言う顔を見ると胸がスッとする。


「死ね!」


 銛を持った奴と鎌を持った奴が脅威と感じたのか俺に向かって眷属器で突いて来た。

 しかも後方には楽器を持った奴まで居て、その上には船……ああ、あそこから転送スキルでここに降り立ってきたんだな。

 調度良いな。


「アトラ!」

「はい!」


 俺の声に応じ、盾の中にいるアトラが答える。

 刀に触れ、俺は精霊との意識を合わせる。


『タ……スケ……テ』


 異能力で縛られ、無理やり行使されている、異世界の眷属器の精霊の声が聞こえる。

 ああ、今すぐに助けてやる。

 本来、武器に宿る精霊は世界を守る意志の形。自らの世界を守るために他者の世界の精霊とは敵対する。


 だが、今この世界は一つになってしまっている。

 元は異世界とは言え、戦うべき敵では無い。

 この眷属器達の大本である、異世界の四聖は既に大半が失われてしまっているんだ。


 いや……何処かにあるのかもしれないが、封じられている。

 眷属器を媒介に精霊の繋がりを確認する。

 ……さすがに四聖クラスの精霊は支配から逃れていた。

 だけど、既に戦う力は残されていない。


「自分の意思とは関係なく利用されるのは嫌だろ? 必ず自由にさせてやる」


 俺は……そっと、その精霊達に語りかける。


「異世界の聖武器の精霊様方……どうかお聞きください。そして力を貸してください」


 盾の精霊と共にいるアトラも共に声を掛けた。

 俺を通じて精霊達に力が宿り、同時に答えてくれる。

 今、この戦場に居る精霊と話が通じた事を確認した。


「今こそ、イワタニ殿と力を合わせて手に入れた力を見せる時! 剣舞無ノ型・絶影 十!」


 その戦いの最中……グラスが、俺達の世界の精霊武器とコンバートした力を使って、辺りの敵を、剣の様な大きな魔力で作られた扇を使って薙ぎ払った。

 その威力は、今までのグラスの比では無い。

 元から化け物染みた強さを所持した魂人と言う短期決戦に特化した種族の、全力の眷属器のスキルだ。


「ぐぁあああ――」


 グラスに向かって集まっていた転生者の仲間や取り巻き、軍の兵士は跡形も無く消し飛んだ。

 転生者が仲間の名前を叫んでいたが知らんな。


「絶対に許さない! 手加減無く殺してやる!」

「残念だが、お前等じゃ無理だ」


 俺は敵の持つ眷属器との交渉を終えて宣言する。

 正直、成功する自信は無かった。

 だけど……どうやら精霊の力だけでどうにかなるようだ。

 クソ女神はこの辺りは適当だったみたいだな。

 対策は……無い訳じゃなかったが、調べた限りじゃ、クソ女神は外されるとは思っていなかったのかかなり甘めだった。


「……お前等の主である精霊に代わり盾の勇者とその精霊達が命じ、力を貸す。眷属器よ愚かなる力の呪縛から解き放ち、我等に力を貸せ!」


 俺の宣言と同時に、刀、楽器、銛、鎌、船が光の玉へと変化して所持者から離れる。


「な――」


 言葉を失うと同時に、眷属器は俺達の軍の方へ降り注いだ。

 そう……これがアトラが囁き、俺が出来ないかと試す事にした間接的に相手の力を削ぐ反撃手段。

 精霊を活性化し、クソ女神の呪縛から解き放って転生者から武器を奪うと言う物だ。


 まずは相手の世界の眷属器から聖武器にアクセスして、共有をしないと行けなかった。

 だけどグラスの武器は、状況を察し、既にリンクを外していたから、相手に直接ハッキングを掛けるしかなかったのだ。

 色々と妨害されないように厳重に防壁をクソ女神は施していたが、俺からすれば大した事は無かった。


 まあ、察知される危険性はある。

 けれど、これで大きく状況は傾いただろう。

 今や、世界の眷属器は全て俺達の味方となっている。


「いや! 私は勇者に成りたくない!」


 後方からメルティの情けない声が聞こえてきた。


「わーメルちゃん、これでフィーロと一緒だね。メルちゃん楽器弾くの上手だからフィーロも一緒に歌えるね」

「ホッホ……メルティもワシと同じくこれで勇者じゃ。共にこの時を乗り越えようぞ」

「う……」


 なんとも間抜けな声が聞こえてくる。

 メルティは楽器の勇者か。

 メルロマルクの元第二王女にして現女王、更に楽器の勇者……役職が増えていくな。

 それにしても楽器でどうやって戦うんだろうかと思っていたら後方から音楽が聞こえてくる。


「英雄の旋律十!」


 結構、良い音がする。

 メルティ……楽器なんて高尚な物弾けたのか。

 そういえば以前、フィーロの歌で稼いだ時、マネージャーをしていたな。

 というか、それ以前の問題として腐っても王女だったんだ。楽器位弾けるか。


 そう思ったらステータスが跳ね上がった。

 おお、援護スキルか。しかも魔法とも重複できる。


「フィーロがんばるよー!」

「ワシもやるとしよう!」


 フィーロとクズが後方から前線に遠距離スキルを放った。

 ああ、ちなみに今回解放された眷属器には解放される直前に盾のコンバート機能を掛けてある。

 今、眷属器の所持者に選ばれた勇者達は視界にわかりやすい使い方が浮かんでいるはずだ。


「電撃竜、十!」


 空を穿つ程の大きな光の柱が戦場に伸びて行った。


「イエーイ! この武器使いやすくて良いわー」


 銛の勇者となったサディナが空を泳ぐように戦場で暴れ始めた。

 元が化け物染みて強いからなぁ。

 勇者補正が掛ると更に化け物感が加速する。

 フィーロより……多分強いな。


「スターダストブレード十!」


 女騎士はやはり刀に選定されたか。


「うわあああああああああああああああああ――」


 名前の通り流れ星……流星剣の亜種か?

 錬と共に転生者の仲間を屠った。


「ふむ……小剣とは扱いが変わっているが、どうにか」

「エクレール。大丈夫か?」

「ああ、だが私は突き技が得意で刀は専門では無い」

「大丈夫だ。突きも刀は向いている」

「……そうだな。三撃突、十!」


 三段突きのスキルを新たに現れた敵兵にお見舞いする。

 元から早い奴だったが、更に早くなった感じだな。

 さっき撃ったスターダストブレードってまんま錬の流星剣だったぞ。

 系統は似ているんだろうな。


「みどり、私達だって武器を手に入れたんだから、一人だけ特別だなんて思わない事よ!」

「わ、わかってるよ!」

「じゃあ行くわよ!」


 元康の取り巻きである三匹のうち二人も眷属器に選ばれたみたいだな。

 みた感じ、鏡と本だ。

 クーは鏡、マリンは本だ。

 どんな攻撃なんだ? と思っていると、攻撃を始めた。


 ……クーが鏡を敵に向けて投げつけて高圧力のブレスを吐き、マリンは本を開いて魔法を唱えだす。

 鏡にクーが放ったブレスが反射して敵の予想外の位置に命中していた。

 マリンの本はクズの杖と同系統だな。集団合成魔法を一人で詠唱をしている。

 クズがそれに合わせて……って二人でも出来るのかよ。


「「高等集団合成魔法『裁き』Ⅹ、十!」」


 辺りに稲光が轟いたかと思うと三十メートル範囲の敵が粉々に消し飛んでいた。


「ラフー」

「クエエ!」

『ふむ……これは勝利しか見えない程になったな』


 どうやら船はラフちゃんを選んだらしい。

 なんでだ? まあ……いいけどさ。


 船の舳先で腕を組んで高らかに叫んだラフちゃんに船が応じて戦場に弾幕を張る。

 フィトリアは……馬車を前に向けて押し車で戦場の連中を轢き殺すと言うエグイ攻撃を始めていた。

 まあ、その馬車は常時大砲ぶちかましているのだけどな。


 ガエリオンは谷子と一緒にスキルとブレスを高高度から放っていて、もはや一方的な状況になった。

 後は……鎌はキールの所に飛んでいった。

 器用に三つの頭の一つが鎌を咥えて使っている。


「く……卑怯な! 俺達から武器を奪うだと! この不正野郎! お前等は負ける為に存在するんだよ!」


 何処までもこいつ等はゲーム感覚なんだな。

 いや、他者を出し抜き、力で抑えつけて愉悦に浸る卑怯者か。

 もうここまで来ると止められる奴はいないだろう。

 クズの作戦は幾らでもあったんだろうが、もはや必要ないか?

 いや……。


「皆さん……うろたえてはいけませんよ」


 バシンと聖武器、眷属器の勇者全員に黒い雷が降り注いだ。

 体が硬直する。

 あのクソ女神、話には聞いていたが、少しでも自分達がピンチになると遠くから妨害かよ。


「不正な力で眷属器を奪ったその所業、私は許しません。さあ、早く本来の持ち主の所へ戻りなさい。そして、このような力を使った者達には罰を与えましょう」

「く……力が……」


 錬が呻く。

 カタカタと聖武器が勝手に持ちあがって行く。

 力の流れからして、無理矢理武器を奪おうとしている。


 さて……どうするべきかな。

 簡単に防ぐ事も可能だが、勇者の限界を軽く超えてしまう。

 まだラフタリア達が来ていないから、手の内を見せる訳にはいかない。


「尚文!」

「あんまり人に頼るな! 自分の精霊を信じろ!」

「わかった!」


 錬と樹が俺の声に応じ、強く武器を握りしめる。

 それは俺の声を聞いた勇者に選定された者達全ての意志……。

 聖武器も眷属器もクソ女神の声に、一歩も引かずに抗う。


「貴方達はズルをしているのです。素直に私の力に応じて下さい。この卑怯者達よ」


 俺はまったく影響を受けていないんだけどなー。

 まあ、精霊の力が強すぎて見えないんだろうけどさ。


「ぐあああ……」


 抵抗から電撃が強まる。

 ……さすがに精霊達も悲鳴を上げ始めた。

 おそらく、次は即死の雷でも落として武器を剥奪するつもりだろう。


 さすがに仲間を殺させる訳にはいかないから、そうなったら本気で行く。

 正直、その状況にはしたくないのが本音だ。

 俺の能力はラフタリアがいてこそ本領を発揮できる様に作られている。

 その逆にラフタリアの能力は俺がいないと成立しない。


 本気を見せれば、この世界を守る事は可能だ。

 だが、クソ女神を倒すにはラフタリアの力がないとダメだろう。

 とことんクソ女神を追い詰めるには、やはりラフタリアが必要なんだ。

 でなければ、クソ女神は本気を出さないはずだ。


「卑怯者共の分際で抵抗をして……何人か見せしめに殺してあげるわ」


 ……まずい。

 このまま黙って見ていたら皆が死ぬ。


「パーフェクト・スレイブ」


 俺を初めとした、勇者をランダムに選択し、聖武器と精霊を奪いながら持ち主を殺す概念が流し込まれてくる。

 まともに受ければ誰であろうと即死だ。

 さながら電線に電気を流すみたいな、お手軽な感じで殺されそうになっているぞ。


 しょうがない……仮に逃げられたとしても、この世界を救ってから追いかければいいか。

 地獄の底までな!


『力の源流足る世界の代行者が命ずる。理を捻じ曲げ、何者にも負けぬ不屈の力と成せ!』

「イモータルマインド!」


 クソ女神が放った死の概念を消し去り、精霊達に世界の活力を与える。

 これによって精霊はもはや誰にも強要されず、縛れない。


「さすが新しい盾の力、簡単に奪われたりはしないな。皆、これで奴の攻撃は無効化したぞ!」


 凄い棒読みである。

 自分で言うのもアレだが、白々しい。

 気付かれてもおかしくはないが、何が起こってもおかしくないのが、精霊の力だしな。


「くっ……インフィニティ・デストイヤー!」


 クソ女神が以前俺を即死させた攻撃を放ってきた。

 面白くないからって力を出してきたな。

 だが、まだ本気じゃない。

 クソ女神には本気になってもらわないとダメなんだ。


「……その程度か?」


 俺はそのまま盾で受け止めた。

 死の概念が俺を侵蝕しようとするも、弾かれる。


「ちっ! なら――!」


 クソ女神が先程よりも強い力を使おうとしている。

 さすがに誤魔化しも限界だ。

 俺は隠していた能力を使うべく、動き出す。


 直後――時の流れすらも引き裂いて近付く気配を察知した。


「……残念ですが――貴女の企みは終わりです」


 クソ女神が何かを使うよりも早く、世界すら軋む轟音を立てて現れた。

 土煙が前線に巻き起こる。


「遅かったじゃないか」


 誰かが土煙を風の魔法で吹き飛ばす。

 土煙が晴れた先には、ハンマーを持ったラフタリアが立っていた。


「随分と変わった並行時空に槍の勇者が行ってましてね。連れてくるのに苦労しました」


 本当に遅かったな。

 元康……お前の所為でクソ女神に逃げられたらどうするんだ。

 まったく……まあこうして元康が来たなら、こちらも本気を出せる。


「おお! これは、みどりにクーにマリンじゃないか! 元気にしてたか? マイエンジェル!」


 元康がハイテンションでラフタリアの影から現れて、三匹に声を掛ける。

 何がマイエンジェルだ。

 そしてキョロキョロと辺りを見たかと思うとフィーロに向けて駆け出した。


「フィーロたぁあああああああん!」

「むー! 来るなぁあああ! すぱいらるくろーてん!」


 フィーロのスキルを思いっきり受けて笑顔で飛んでいく元康。

 ……アイツは全く変わらないな。


「な……」


 クソ女神の声が驚きで彩られている。

 さすがに俺とラフタリアが、唯の勇者じゃないと気付いたみたいだな。

 だが、それはもう遅い。


「さて、貴女の力で世界を壊そうとしていた様ですが、そうは行きません。ここからが――」

「本当の戦いだ」

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