シン・エヴァンゲリオンに対する猛烈な違和感

 1997年生まれの24歳で、当然ながらTVシリーズのエヴァと旧劇はリアルタイムで見たことがない。エヴァに初めて触れたのは中学生のときなので、Qが上映されていた頃だろうか。確かその頃に一気観して、サブカルに浸かり始めていた頃なので、当然のように惹かれた。シンエヴァは私にとって初めてリアルタイムで観るエヴァであるともいえた。私は仕事で90年代サブカルの人と絡む機会が多い(私を知らない人が読んでいるかもしれないので追記すると、阿佐ヶ谷ロフトでトークイベントに出たりしています)。90年代サブカルおじさんはみんな例外なくエヴァをこじらせている。エヴァは当然必修しているべき科目であり共通言語だ。エヴァを見ていないとわからないこと、ついていけない話というのがこの世には山ほどある。

 シンエヴァは公開日に最速上映で見た。インターネットを見ていると、そのこじらせ90年代エヴァおじさんたちが、シンエヴァによって呪いを解かれ、成仏しているではないか。びっくりした。シンエヴァはかなり保守的な価値観を持った作品で、端的に言うとインターネットのオタクくんたちに対して「君たちも早く大人になりなさい」「現実と向き合いなさい」「家族を築いて社会に貢献しなさい」と呼びかける恐ろしい作品になっていて、なんでこれが絶賛されているのかはっきり言って謎だ。怖すぎるからだ。もっとも純粋なエヴァファンとしての自分は「完結してよかったな〜」とも思ったし、お金を払って鑑賞するエンタメコンテンツとしては十分すぎるほどに面白い。風呂敷のたたみ方も想定しうる中では最善だったと思う。

 だが、序盤の農業パートははっきり言って退屈だった。なんで綾波が田植えしてるのを見せられなきゃならないんだと思った。シンジは14年間眠っていたと思ったら目が覚めて周りの状況が目まぐるしく変わり、大人に振り回され、そして連れて行かれた先が、昔の同級生の家。昔の同級生は結婚していて家庭を築いており、しかもその家にいた知らないジジイに「飯を食え」といきなり説教をされるのだから、シンジが内に閉じこもるのも当然だと感じたのだけど、あのくだりのトウジのことを「優しい」と評している人がいて本当にびっくりした。いやいや、優しいかもしれないけど、あのトウジは完全に「無意識のうちに良かれと思って嫌なことをしてくる人」でしょう。あなたはあのシンジと同じ状況下に置かれて、ヘラヘラしながら飯を食って愛想を振りまけますか? 私には到底無理だ。

 第三村の描写を、暖かいと感じるかそうでないと感じるかに、シンエヴァという作品に対する感想の分水嶺がある気がしている。貧困や食糧不足が目に見えて明らかなのに子供を生み育てるという行為は潜在的な虐待だと感じたし、鬼滅の刃の遊郭編が話題になったときは「東北の寒村で子供を作りまくって飢饉がきたら口減らしに女児を売る」という江戸時代の農民の倫理観のヤバさについて気づいている人は多かったように思うけど、はっきり言って第三村の環境と何が違うんでしょうか。トウジは「生きるためならお天道様に顔向けできないようなこともした」という趣旨のことを言うけど、その自覚があるのに子供を作るというのは正直言ってサイコパスですよ。

 作中、特に前半で出生や生殖が肯定的に描かれていることに対する違和感が拭えない。というのも、私は今までエヴァンゲリオンのテーマを、無責任な大人に好き放題振り回される子供たちの苦しみ、というものだと思っていたからだ。エヴァという作品で出生を肯定してしまうと、子供たちの苦しみが永遠に続いてしまうことになるので矛盾が生まれるのではないか(まあ作中では「エヴァのない世界」をシンジが作り出したので一応は解決をみているということになったのだろうが、そういう問題ではないよね?)。ゲンドウが「子供が怖かった」という趣旨のことを言っていた気がするのだけど、私はあまりの無責任さに笑ってしまった。じゃあ子供を作るなよ〜。そして出生を肯定するということは、前半に登場した乳児や幼児が成長してやがてシンジのような苦しみを背負い込む可能性も出てくるわけだけど、それでいいのか?

 エヴァの物語って、端的に言えばゲンドウのせいでみんなが迷惑を被る、というものだと思うので、シンエヴァの作中で生殖を肯定されて、「エヴァに言われたくない」と正直思った。で、90年代エヴァおじさんおばさんが、自分たちが子供を生み育てる世代になったことで今回の物語を「肯定したくなる」「受け入れたくなる」のはわかるのだけど、それってもうエヴァである必要もないし、自分の中にある矛盾をエヴァに肯定してもらえて安心しているような態度にしか見えなくてすごく嫌な気持ちになる。

 私はリアルタイムで旧エヴァを見ていないからなんとも言えないのだけれど、エヴァが流行った理由って、ありきたりな成長物語に対する反発とか、無責任に子供を振り回す大人へのアンチテーゼ、反発も根っこにあるんじゃないんですか(後追いで関連本を読んだり話を聞いたりしているだけだから認識に差異があるかもしれない)。シンエヴァの内容を肯定してしまうと、それは旧エヴァを好きだった気分みたいなものとの矛盾になるのではないかと思ってしまう。もっとも、それを「成長」「年を取った」という言葉で90年代エヴァおじさんおばさんが表現していることにも一種納得できるし、人間はそういう生き物だから仕方ないという気もするのだけど。

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シン・エヴァンゲリオンに対する猛烈な違和感|めりぴょん/山野萌絵
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