老後の安心を買ったはずだった。少しでも日々の暮らしの足しになればと願った。だが、古希を過ぎた男性は「ばかだったんでしょうか、私は」と力なく笑う。
不動産投資商品「みんなで大家さん」を巡り、1191人の出資者が解約や返金を求めて集団提訴に近く踏み切る。
関東地方に暮らす70代の男性は、今回の集団提訴に先んじて9月に訴訟を起こした。つぎ込んだ老後資金は返ってくるのか、心配ばかりが心を覆う。
「生活のためにと思って投資をしたが、結果的にだまされた形になっている」
募る不安と憤りを抱え、司法に望みを託している。
一部で分配金の支払いが滞っている不動産投資商品「みんなで大家さん」。
どういった計画を掲げているのでしょうか
ファンドがうたった未来と特異な収益構造とは
突然届いた1通のメール
「分配金のお支払いを遅延せざるを得ない事態となり……」
男性のもとに7月末、「大家さん」の運営会社から、そう書かれたメールが届いた。背筋が凍り付いた。
「話が違う」
その日のうちに運営会社の専用フォームで契約解除を申し込んだが、返ってきたメッセージには「6~12カ月かかると想定している」とあった。電話は何度かけてもつながらない。
今も返金のめどは立たず、男性は「詐欺同然」と憤る。
「老後」考え400万円出資
「大家さん」に投資をしたのは2024年1月。テレビCMやインターネット広告で知り、「資産運用という手もあるのか」と興味を持ったのがきっかけだった。
60歳で電機メーカーを定年退職し、やがて妻と2人、年金生活者になった。月々の収入は専業主婦だった妻と合わせて20万円ほど。子どもは成人して親元を離れているとはいえ、見るたびに減っていく通帳の残高は、悩みの種だった。
そんな折に取り寄せた「大家さん」のパンフレットは、魅力的に映った。1口100万円から出資でき、年7%の想定利回りで2カ月に1回配当が出るという。「年金+分配金で将来の不安を軽減」という宣伝文句にも目を引かれた。
「銀行に預けておくよりよっぽどいいじゃないか」
主力商品「シリーズ成田」が対象にする大規模開発計画は、自治体が開発許可を出しているという。そんな「安心感」に背を押され、預金の3分の1に当たる400万円を出資した。
「4カ月後から、毎回3万…
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