鹿児島県の「北薩トンネル」が崩落したのは、内壁の覆工コンクリートが高い地下水圧に耐えられなかったからだと見られる(資料1)。加えて、崩落箇所で建設時に実施した湧水対策が影響した可能性もある。
供用中のトンネルで覆工が崩落し、内部が天井まで土砂で埋まる事故は珍しい。北薩横断道路の北薩トンネルで2024年7月25日、路面が隆起する盤膨れが発生。翌日には厚さ30cmの覆工の一部が崩落し、土砂と地下水が坑内に流入した。さらに翌日、覆工の崩落が進み、流入土砂でトンネルの断面全体がほぼ埋まった(資料2)。
トンネルを管理する鹿児島県は事故を受け、専門家でつくる技術検討委員会を設置。委員会では大雨による地下水位の上昇でトンネルにかかる圧力が高まったことが崩落の主因との見方が示された。気象庁のデータによると、トンネル付近では24年7月9日から15日までの1週間に約600mmの降水量を記録している。
ただ、大雨が崩落を引き起こしたとしても、それだけが原因とは考えにくい。全国に目をやれば、記録的な大雨は毎年どこかで発生しているが、そのたびに山岳トンネルが崩落しているわけではない。
北薩トンネルは鹿児島県出水市と同さつま町を結ぶ全長4850mのトンネルで、18年3月に開通した。崩落箇所を含む延長2610mの「出水工区」は、熊谷組・西武建設・渡辺組・鎌田建設JV(共同企業体)がNATMで掘削した(資料3)。
事故に関係していると見られるのが、建設時に実施した湧水対策だ。
出水工区では掘削中に1時間当たり最大1200tの湧水が発生。貫通後も1時間に約600tの湧水が続いた。この湧水は高濃度のヒ素を含むため、放流前にヒ素の除去処理が必要だった。開通後も継続的に湧水を処理するには多額の費用を要する。
特に湧水が多かったのが、花こう岩と砂岩・頁岩(けつがん)互層の境界辺りだ。その付近の延長約100mの区間で、厚さ3mのリング状にセメント系の注入材を浸透させる湧水対策工事を実施した(資料4)。ダム工事で基礎岩盤の強度や遮水性を高めるために使う工法の応用だ。
この現場では、微細な亀裂まで注入材を確実に浸透させるため、平均粒径0.0015mmの極超微粒子セメントを使用した。
対象とした約100mの区間では、対策前に1時間当たり最大300tあった湧水量が40t以下へと低下。湧水の減少に伴い、地下水位がトンネルの上方160m程度まで回復した。当時、トンネルに明確な変形や異常な応力は生じなかった。
しかし供用開始から約6年後、湧水対策の対象区間で事故が起こった。


































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