「っ!」
「ん!」
勝利の翼号の甲板で激しくぶつかり合う2人のニケ。
高速の刺突攻撃を躱した紅蓮は
「この前とは剣筋が全く違う。恐ろしいな君は」
「武装に最適な剣術をインストールして体に馴染ませれば苦ではない。アンタほど上手くはいかんがね」
「ニケという身体を髄まで使いこなしている君らしい戦いかただと実感するよ」
フェンシングを基本とするソーンの刺突攻撃は速く、今までで経験したこの無い剣筋に紅蓮は苦戦を強いられる。
「っ!」
紅蓮の体勢が崩れた瞬間、ソーンは鋭い突きを放つがそれはフェイント。刺突を避けられ間合いに入られ焦る。
「ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ!あれは良いものだ!」
「貰った!」
ソーンの首筋に花無十日紅の刃先が添えられる。
「参った」
「今回も楽しい手合わせであった」
紅蓮は満足そうに剣を納めるとソーンもビーム刃を納める。
「君の刃はビームと聞いたが刃が溢れておらぬ。コーティングのお陰かね?」
「スノーホワイトが刃を研ぎ治したときに耐ビームコーティングを施したからな」
「これならビームを斬れると言うことか」
「理論上は可能だがおすすめしないよ」
「毎回元気ね」
紅蓮と話しているとリリーバイスがゆったりと歩いてくる。
「リリスか。どうした?」
「こん晩は皆でご飯食べるから。1900に食堂に集合ね」
「?…分かった」
「手合わせをしてくれたら聞かんこともないがな…」
数秒後、甲板に埋められた紅蓮を見つめるソーン。
「この穴埋めるの俺なんだけどなぁ…」 パシャパシャ
持っていた端末で紅蓮のケツを撮影するソーンはフォルダーに《○月✕日バウナッター》と名付けるのだった。
「ぐれ~ん。意識ある?」
「……」
「あれま」
ーー
リリーバイスによって埋められた紅蓮を抜いて甲板を補修したのが午前中、午後にはいつも通り工房に引きこもり始める。
侵食研究に関しては残念ながら自分の手が回りきらずにラプンツェルがV.T.Cと連携して引き継ぐことになった。
人類連合に提出するデータ資料を纏めて指揮官にメールして新装備の調整をしているとスノーホワイトが大きな音を立てて工房に入ってくる。
「ソーン!」
「白ちゃんどうした?」
「時間見てないんですか?もう19時ですよ!」
「本当だ」
フレキシブル・スラスター・バインダーの調整をしていたソーンは時計を見ると時間は19時10分、約束の時間を過ぎていた。
「すぐ行くよ」
「リリスお姉ちゃんには行っておきますからシャワーを浴びてください。せっかくなんですから!」
「あらら」
シャワー室に放り込まれたソーンは渋々、シャワーを浴びてスッキリすると待っていたスノーホワイトに連れられて食堂に辿り着く。
「「「ハッピーバースデー!」」」
「???」
目の前に広がるご馳走と酒、酒、酒。
突然の事でフリーズするソーン。
「ソーンは始めてよね。私たちには誕生日がないから部隊に参加した1年経ったら誕生日パーティーをするって決めてるのよ」
「俺の…パーティー?」
「そうよ」
リリーバイスから受け取ったグラスを持ちながらもいまだに固まっているソーンを面白そうに見ていたレッドフードが肩を組んでくる。
「な~に驚いてるんだよ。やっぱり博士って祝われたりするのが苦手って言うか慣れてなさそうだもんな」
持ったグラスに遠慮なく酒を注ぐレッドフードは指揮官に視線を移すと彼は悔しそうにコインを彼女に向けて渡す。
「甘かった。こういう時、逆にテンションが上がると思ってたのに」
「まだまだだなぁ。隊長~」
指揮官とレッドフードはどうやら賭けていたようでそれを見ていたドロシーはため息をつく。
「タイミング良く紅蓮も来てくれましたし。歓迎会もあわせて今日にしたんです」
「この前、紅蓮がドロシーに勝ったから初勝利記念パーティーも込みだけどね」
「リリスお姉ちゃんに地面に埋められてたのが1年前だなんてなんだが不思議な気分ですね」
「ほう。ソーンも埋められていたのか?」
興味深そうにスノーホワイトに話を聞く紅蓮もゆっくりと酒を注ぐ。
「とりあえず。ソーンの誕生日と紅蓮のゴッデス歓迎パーティーを始めるわよ。いらっしゃい紅蓮、ソーンはおめでとう!乾杯!」
「「「乾杯!」」」
リリーバイスの乾杯の合図と共に宴会が始まる。
「あれは驚いた。私が目釘を刺すまでに銃が組み上がっているなど」
「白ちゃんの組立は芸術の域だからな。俺には無理だわ」
スノーホワイトの高速の分解、整備、組立はソーンを遥かに凌ぐ速さで戦場でメンバーの武器が不調の際はその場で直してしまうのはスノーホワイトしか出来ないことだ。
「君とのレースも中々に楽しかった。空飛ぶ円盤を操る感覚は良いものだった」
ちなみに紅蓮の加入テストはソーンももちろん参加している。内容はベースジャバーを使った空中レースだったが紅蓮は最初こそ戸惑っていたものの、すぐに使いこなしてい良いレースをしたのは記憶に新しい。
「このカセットプレイヤーもスノーが作ってくれたんだぜ」
「そうなのか。大切に扱ってると思ったらそういう理由か…」
カレーのルーを肴に酒を飲みながら狼が描かれたカセットプレイヤーを見つめる。確かにレッドフードをイメージした専用のカセットプレイヤーは市販品ではないだろうと思っていたがスノーホワイトが作ったものだとは。
「あの…実はソーンにも造ってまして。ソーンは何でも造っちゃうから悩んだんですけど」
「え、マジか。ありがとう」
スノーホワイトが差し出したのは掌ほどの小箱、それをゆっくりと開けるとそこには灰色を基調としてアクセントに茨が装飾された腕時計があった。
非常にシンプルなデザインのおかげで時間が見やすく、実に機能的だ。
「腕時計だ!」
「当初は様々な機能を入れようと考えてたんですがそれだとすぐ壊れてしまうのでとにかく頑丈に正確に時間を見られるようにしました」
「白ちゃん!」
「わぁぁぁぁ!」
ソーンはスノーホワイトを持ち上げ上へ放り投げる。
スノーホワイトは天井にぶつかるギリギリまで飛ぶと落下しソーンに受け止められる。
「大切にするからな!」
そんな事を派手にしていると全員が何事かとワラワラと集まってくる。
「スノーホワイトの腕時計ですかお似合いですわね」
「似合ってるぞ」
「あんまり暴れないでね」
「はぁ…はぁ!」
「予想以上にテンションぶち上がったなぁ」
「相変わらず愉快だねこの部隊は」
「圧が!圧が凄いです!」
スノーホワイトの頬をスリスリするソーンは心底嬉しそうに笑い、最後に全員で写真を撮るのだった。
ぼちぼち「RED ASH」に行きます。