「V.T.Cから報告があがってきた。侵食研究に対しても中々の知見を発揮しているそうだ」
「新兵器開発に侵食に対してもか」
「戦闘能力もそうですが知識面で類を見ない天才と言っても過言ではないでしょう」
人類連合本部の会議室にて繰り広げられていた議題はソーンの事についてだった。
「だがアイツは我々にかなり非協力的だ。リリーバイス少佐やゴッデス指揮官の説得のお陰でいくつかの計画にも参加しているが」
「人類存亡の危機だと言うのにまさに傍若無人。天才と言う生き物は図に乗りすぎている」
1人の官僚の言葉に全員が頷く。
「ゴッデスには入れ込んでいるのだろう?それを利用して条件を飲ませられないのか?」
「それをした士官の腕は粉々になった」
その言葉に全員が冷や汗をかく。
ソーンは敵対する人間への遠慮など微塵もなく、まるでスナック菓子を食べるかのような気軽さで骨を粉微塵にしてくる。
どうしようもなくなれば発見前みたいにラプチャーの勢力圏に逃げられれば追跡は難しい。
「あの頭脳さえ手に入れられれば」
「脳スキャンの精度はまだまだ。しかもあれはスキャンだけだ。我々が望むのは彼女が自ら思考し産み出すことだ」
「手はあります」
その言葉に全員が発言者に目を向ける。
「ナカモト博士か」
「思考を止めることなく情報を抽出させれば良いのでしょう?」
「…やってみろ。次の会議までに纏めておけ」
「分かりました」
ちょうど時間だったようで会議は修了し解散する。
「ナカモト博士。あんな事を言っても良いのですか?」
「脳スキャンよりも技術的には簡単だ。だがかなりの規模の設備が必要なのとそれに対して1人にしか使えんからコスト面もかなりのネックだったが予算が降りるなら実現できる」
ナカモトは大きな眼鏡を拭くとかけ直して長い廊下を進む。本来任される筈だった第2世代フェアリーテイルモデルの開発計画を自分より遥かに若いエイブに持っていかれ地位だけのお飾りとして揶揄されてきたがこの計画さえ上手く行けば名声を取り戻せる。
そう考えると久々に笑みが溢れてくるのを感じていた。
「ヤツの知識が手に入れば第3世代フェアリーテイルモデルが…いや、ラプチャーを滅ぼせる究極のニケが誕生することになる」
後日、提出された計画書を元に《ザバブルグ計画》が密かに開始されることになる。
ーー
一方、ゴッデス部隊は内乱が発生したと言う連合軍基地を訪れていた。
「へぇ…」
壁の血の飛びかたからみて銃器での負傷では無さそうだ。鋭利な刃物による切断と見て間違いないだろう。
全身に追加装甲を施した近接戦闘装備《イフリート改》を纏っていたソーンは興味深そうに眺める。
「あの…リリスお姉ちゃん。その部隊…剣を使いますか?」
「そうだけど…どうして分かったの?秘密事項なのに」
「弾痕や爆発の跡がないので。鋭いような物で斬られた跡しかありません」
「前に言ってた部隊か…」
前にその話をしたのが一月ほど前の筈だからその間にこんなことになってたのか。
そんな話をしていると生存者の捜索開始することになり、ソーンは指揮官とリリスと共に分かれようとするがその矢先、黒い装束に紅の剣を構えたニケが現れる。
「全員、動くな。動けば斬る」
ただならぬ気配を持つニケ。まるで獣かのような獰猛さを感じる気配ではあるが身体中、傷だらけであり、持っている剣も刃が溢れボロボロであった。
「たく、初対面で斬るとかどーとか。物騒なヤツだな!?」
レッドフードは黒いニケの言動が気に入らなかったようでまさかの眼前でタップダンスを踊り出す始末。
彼女のまさかの行動に全員がため息を着いてしまう。
その後は予想通り、2人は取っ組み合いのケンカのような感じで争っているとリリーバイスが2人の間に割り込みソーンにも行った物理スカウトを披露。
黒いニケは上半身が地面に突き刺さり、沈黙してしまう。
「なんか見たことあるな」
「見覚えがあります」
「私が抜きましたから...私が...抜く!?」
「…博士もこんな感じだったよな」
「ソーンが痛がって暴れて大変でしたね」
「親近感わくなぁ…でも俺は気絶してないから俺の勝ち」
ゴッデス部隊最後の加入メンバー《紅蓮》が参加した瞬間であった。