ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

14 / 33
主人公のイメージイラストをあらすじに置きました。


怒りの島(後編)

 

 

「ソーン、6時方向!」

 

「っ!」

 

 突撃してくるラプチャーは延びていたジオングアームで蜂の巣にされ爆散。

 インコムを全て戻すと一斉射撃で空中ラプチャーを一掃する。

 

「ん?」

 

 警告音と共に確認すると推進材が危険域まで消費していた。

 

「指揮官、援護を頼む。補給に戻る!」

 

「分かった。こちらは大丈夫だ、行ってこい!」

 

 最寄りの補給ポイントに着陸するとタイミング良く、補給コンテナが飛んできた。

 

「ソーン。こっちだ!」

 

 勝利の翼号のニケたちが手を振ると手早く装備の補給を始める。

 

「状況は?」

 

「使えるもの全て使って避難を進めてる。あと半日あればなんとか」

 

「弾薬が底を尽きかけてる。補給コンテナのお陰で維持しているが」

 

 輸送に使えるもの全てを避難に動員しているせいで前線の補給状況に陰りが出てきた。

 

「補給を終え次第。戦線復帰するぞ」

 

 後ろにある避難キャンプを眺めながらソーンは装備をつけ直すのだった。

 

ーー

 

「ここをこうして…」

 

 地下坑道、そこには山野トウカが土まみれになりながらケーブルが敷き詰められた場所に潜っていた。

 この島の奴らは輸入品を説明書通りに使っているだけ、説明書を渡してきて全部やっておけと無茶振りされたトウカはその構造を把握していた。

 

「まさか本当に爆弾…核だなんて……」

 

 システムは完全にロックされているが特定のケーブルと装置を破壊すれば主端末の、ロックは解除される。核の起爆を阻止するコードは流石に分からないがラプチャーを認識するセンサーと起爆システムを切り離せばその必要もない。

 

「あった!」

 

 お目当てのケーブルを見つけて作業場から持ってきたカッターで切断しようとするが刃がボロボロで上手く行かない。

 どうしようかと悩むとソーンから貰ったマルチツールを取り出すと簡単に切断できた。とんでもない切れ味である。

 

「よしよし!」

 

 トウカは喜ぶとケーブルの隙間から脱出すると慎重に端末の元へと歩き出す。出入り口にいた警備には気づかれていないと思うが念のためである。

 ここから主端末まではかなりの距離がある。急がなければソーンたちに被害が及ぶと言う不安を抱きながら急ぐのだった。

 

ーー

 

「っ!?」

 

 端末が目の前と言う時にトウカは口を抑えて物陰に隠れる。ドロシーと口論していた指揮官と数名の兵士が端末の周辺にいたからである。

 

「よし、これで4時間後に起爆するのだな?」

 

「はい、住民の避難も完了し侵攻してくるラプチャーも一掃できるでしょう」

 

「しかし人類連合部隊にも被害が出るのでは?」

 

「当然通告はする。だが避難民は諦めて貰うがな」

 

 指揮官は不敵な笑みを浮かべながら端末を見る。

 

「生き残った人類全てを収容する施設などあるものか、なら少しでも減らして俺たちのスペースを空けて貰わないとな」

 

「「……」」

 

 指揮官の言葉に兵士たちは少し気まずそうな顔をする。

 非人道的なのは理解しているが自分達も命は惜しいし家族のために外道も辞さない覚悟だった。

 

「将軍、ロックを管理していたケーブルが切断しています。おそらく、ラプチャーとの戦闘の影響かと」

 

「ちっ、何が無敗の部隊だ。役立たずが、すぐに復旧させろ!」

 

 慌てて奥に向かう兵を横目に将軍は出口に向かう。

 

「復旧次第、ロックをしておけ!」

 

「は!」

 

 いつも不機嫌な将軍の姿を見送り、しばらく待つと兵は溜め息をつきながら煙草に火をつける。その背後にペンチを振り上げたトウカの姿があった。

 

ーー

 

「くそっ、このままじゃ。地上部隊の弾薬が!」

 

「勝利の翼号からソーン。レーダー上に巨大な反応捕捉。ストームブリンガーよりかなりデカイ!」

 

「なんだ…っ!?」

 

 移送から戻ってきていた勝利の翼号からの通信を聞いて視線を向ける。

 ソーンは想像を超える光景に絶句する。それは地上にいた指揮官たちも同じで思わず空を凝視してしまうほどであった。

 

「くじら?」

 

 大空の支配者かのように悠然と飛ぶ機械仕掛けのクジラは制空権を維持していたソーンすら路傍の石のように飛ぶ。

 

「この!?」

 

 ソーンのビーム斉射、スノーホワイトとレッドフードの対艦ライフル、その他部隊の一斉攻撃が空飛ぶクジラ。

 マザーホエールに着弾するがその巨大さも相まって分厚い装甲に阻まれ効果を確認できない。

 

「マジかよ!」

 

「レーザーが来るわよ!」

 

 リリーバイスの言葉と共にマザーホエールから放たれたレーザーはゲリラ豪雨のごとき降り注ぐ。

 

「皆さん!後ろに!」

 

 ラプンツェルの言葉と共に指揮官たちは彼女の後ろに待避し降り注ぐレーザーから身を護る。

 

「た、助け!」

 

 だが彼女の防御は万能ではない、ともに戦っていた第五方面軍のニケたちがレーザーに貫かれ焼かれていく。

 

「こ、コンテナが!」

 

「も、もうだ…」

 

 頼みの綱であった補給コンテナも積まれていた弾薬に引火、巨大な爆炎はかろうじて息のあったニケを巻き込む。

 

 たった一撃のレーザーの雨によって絶対防衛線が崩壊した。

 

「被害報告!」

 

「ゴッテス部隊は無事です。第五方面軍派遣部隊の8割が消滅」

 

「8割、これでは指揮系統が成り立たん!」

 

 第五方面軍所属の指揮車、戦車、戦闘支援車両含むほぼ全てが前線維持のために密集していた為、レーザーの雨の餌食となってしまった。

 

「くそっ、みんな無事か!?」

 

「みんな大丈夫です!」 

 

 元気なスノーホワイトの声を聞いて安堵するも火の海と化した森を見る。

 長い間、育てられてきた太く頑丈な木々は巨大な体躯を持つラプチャーにとっても無視できない障害となっていたがもう意味がない。

 

「残存部隊を再編成する!生き残った者は指定ポイントへ移動!防衛線を再構築する。負傷者の救助を忘れるな!」

 

 指揮官の言葉と共に動くニケたち。

 

「私の弾薬…使って…」

 

「任せろ!」

 

 負傷者をベースジャバーに乗せ避難させると戦える者たちは決死の顔で武器を持つ。

 

「あのクジラ。データベースに無いぞ、まさか新型の空中要塞?」

 

「ソーン、前!」

 

「っ!?」

 

 一瞬の油断、それと同時にマザーホエールから出撃したラプチャーがソーンに体当たりし爆発する。その隙を逃さないと同種のラプチャーがソーンに突撃し爆発は大きくなる。

 

「ソーン!」

 

「くそっ、油断した!」

 

 爆炎から抜け出したソーンの右腕は欠落しており、かなりの重傷であった。装備も所々から火を吹いているが残った武装で迎撃を続ける。

 

「ソーン、戻れ。後は私たちが何とかする!」

 

「やむ得ないか…なに?」

 

 流石に撤退を視野にいれたその時、マザーホエールの装甲が開くとそこには大量のラプチャーの姿が。

 ラプチャーたちは次々と降下し防衛線を再構築していた部隊に襲いかかる。

 

「くそっ!」

 

 残った武装で攻撃を再開するソーン。

 こんな状況で退けるわけがない。いくらゴッテスが居ようが戦線が突破されるのは時間の問題だ。

 

「くっ!」

 

「勝利の翼号から前線部隊。当艦はこれより避難キャンプ付近に着陸し避難民を収容する」

 

 勝利の翼号のメガ粒子砲が火を吹き、マザーホエールの鼻先に直撃する。ニケの携行火力を遥かに上回る攻撃に怯んだマザーホエールはラプチャーを降ろし終えると反転し撤退を始める。

 

「順番に並んでください!」

 

 勝利の翼号と随伴する輸送ヘリが勢いよく着陸するとハッチを空けて避難民を収容を始める。

 

「人類連合め!まだ許可はしていないぞ!」

 

 エプタ島の軍人が怒号をあげるが勝利の翼号のイーゲルシュテルンが部隊の眼前を牽制するように火を吹き進軍を止める。

 

「邪魔するな!」

 

「ひ、ひぃ!」

 

 ソーンは絶命したラプチャーを掴むと部隊の中央に放り投げる。突然、振ってきたラプチャーに驚きを隠せず兵士たちが1人、また1人と撤退を始める。

 

「ら、ラプチャーが目の前まで!」

 

「核が爆発する!」

 

「ま、待て!撤退するな!将軍がまだ坑道に居るんだぞ!」

 

 逃げ始める部隊など放っておいて、ゴッテス含む防衛部隊は必死に応戦するがラプチャーの数と防衛範囲が広すぎて対応できない。

 

「駄目だ、対応しきれない!」

 

「このままじゃ!」

 

 決死の防衛で何とか持ちこたえたがそれもつかの間。

 防衛ラインは突破されてしまう。

 

「指揮官!」

 

「っ!?」

 

 核が起爆する。

 そう思われた瞬間、リリーバイスは指揮官たちを抱えて飛び出そうとしたが何も起こらない。生き残りのニケたちも覚悟を決めて目を塞いでいたが何も起こらずに驚き、周囲を見渡す。

 

「助かった?」

 

「誰が...」

 

 その光景を空から見ていたソーンも思わず呟くのだった。

 

ーー

 

 地上が混乱で満ちた頃、坑道内では血塗れのトウカと怒りで顔を真っ赤にする将軍の姿があった。

 

「駄目です。パスワードを変えられてシステムにアクセス出来ません」

 

「この小娘が!」

 

 憎々しげにトウカを蹴り飛ばす、主端末の位置は爆発範囲外であるため将軍は最後の確認に戻ると彼女が操作しているのを発見し発砲したのだ。

 

(お役に立てて何よりです…)

 

 既に何発も撃ち込まれ、虫の息のトウカだったが彼女は冷静であり、おおよその状況を推察していた。

 

「住民の避難は?」

 

「ほぼ完了しています。このままラプチャーが真っ直ぐ来ても我々は逃げきれます」

 

「仕方ない。ここは逃げ延びることが大切だ」

 

 兵士たちは慌てた様子で出口に向かい、将軍もチラリとトウカを見るもすぐに歩を進める。

 

「ソーン……」

 

 トウカはソーンから貰ったら工具を抱き締めながら静かになる。唯一の救いは彼女の最期の表情がやりきった者が持つ微笑みであった事だろう。

 

ーー

 

「将軍、避難キャンプに空母が着陸し全員が移動したそうです」

 

「っち。だが囮がいても核が使えないのなら仕方ない」

 

 坑道から出てきた将軍は出口で待機していた輸送ヘリにいた兵に状況を報告される。

 

「住民は?」

 

「先ほど、最期の便が飛び立ったと」

 

「住民の避難を終えてからと言う約束を反故にしおって。後で人類連合には抗議をいれなければな」

 

 ヘリに乗り込んだ将軍は椅子に座ると離陸を始める。

 

「なんだ?」

 

 パイロットの言葉と共にラプチャーのレーザーがコックピットに直撃、制御を失い墜落する。

 

「な、なにが…っ!」

 

 まだ高度は低かったため、機外に脱出した将軍は顔を上げると眼前にいた、ラプチャーがこちらを見つめていた。

 

「へ?」

 

 その言葉を最後に将軍はラプチャーに踏み潰されるのだった。

 

ーー

 

 間一髪で避難民を回収した勝利の翼号の甲板でスノーホワイトに応急処置を受けていたソーンは島を埋め尽くすラプチャーを見つめる。

 

「死んだかと思いました」

 

「そうだな。ラプチャーとの戦闘でなにか不具合でもあったのか。それとも完成していなかったのか…」

 

「流石にヒヤヒヤしたな」

 

 レッドフードの言葉に全員が頷く。

 

「もう調べようがありません。日頃の行いと言う事にしておきましょう」

 

「そうだな。だがまだ避難先に着くまでが護衛だ。皆、気を抜くなよ」

 

 指揮官の言葉と共にゴッテスのメンバーは頷き、それぞれの持ち場に戻るのだった。

 

 




 数日後

 片腕を失ったソーンはより高性能な腕を開発しているとスノーホワイトが端末を持ってきた。

「ソーン、持ってきました。回収した避難民のリストですけど誰を探しているんです?」

「いや、優秀な女の子が居てな。指揮官に話を通して俺の助手にしようかと思ってな」

 残った左腕で操作し、名前を検索するも出てこない。一瞬フリーズし何度も更新ボタンを押すが山野トウカと言う文字は出てこなかった。

「……」

「ソーン?」

 心配するスノーホワイトの言葉は届かなかったのかソーンは固まったまま動かなくなる。
 次の瞬間、端末は握り潰される。
 スノーホワイトは驚きながらソーンの表情を見ると見たことない恐ろしい顔をした彼女が静かに握り潰された端末を見つめていた。

 後にも先にも彼女がその様な表情を見せることはなかった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。