ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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怒りの島(中編)

 

 ラプチャーがエプタ島に上陸する予測時間は4時間後、大陸側である東側から接近中、島の中央からやや東側に避難民キャンプ、西側端に居住エリア。直線距離で100㎞以上離れているのにも理由があるはずだ。

 

「ドロシー、俺は地下坑道を調査する」

 

「どうしましたか?」

 

「避難民を使ってやらせてた工事が気になる。避難はそっちに任せて良いか?」

 

 ラプチャー侵攻が始まった今、一刻の猶予もない。既に避難民キャンプに輸送ヘリが着陸し避難を開始している。

 約束を破ることになるがそんなことは知らない。ラプチャーと接触するのはこちらの方が早いのだから。

 

「分かりました。こちらは避難誘導を続けます。時間は?」

 

「一時間以内に終わらせる」

 

「頼みます」

 

 装備を外して生身で駆けるソーン。生身であっても常人では到底追い付けない速度で走る彼女は頭の中に入れた地図を頼りに坑道が崩れないように駆け抜ける。

 

「あった!」

 

 地下設備と地上に設置されたセンサーを管理する端末。ソーンは急いで持ってきた端末を接続して状況を確認する。

 

「マジかよ。クソどもが!」

 

 怒りのあまり地面を殴り付けるソーンだが急いで端末を操作するのだった。

 

ーー

 

「ソーンからの連絡は?」

 

「まだです。もうすぐ一時間ですが」

 

 時計を見ながらドロシーは落ち着かない。近くにいたラプンツェルも心配そうに時計を見る。

 

「ーーーシー」

 

「ドロシー聞こえるか?」

 

「ソーン!」

 

 地下から出てきたのかノイズの向こうからソーンの声が聞こえる。

 

「何があったんですか?」

 

「核だ!」

 

 ソーンの言葉にそれを聞いていたドロシーは体温が下がるような感覚を得る。

 

「アイツら地下坑道に核を複数埋めてやがった。センサーが一定数のラプチャーの通過を確認したら自動起爆。核でラプチャーを排除しつつ、新しい運河を作って侵攻を遅らせようって腹だ!」

 

「範囲は!?」

 

「避難民キャンプを余裕で巻き込む!避難民キャンプはラプチャーを引き寄せるための囮だったんだ!」

 

 ドロシー、ラプンツェル、レッドフード、スノーホワイトは愕然とする。

 

「避難状況は?」

 

「まだ500って言ったところだ!どれだけ早くてもあと8時間はかかる!」

 

 レッドフードの報告は絶望的だった。どうあがいても間に合わない。

 

「地図にラインを追加した。ここが阻止臨界ラインだ」

 

 飛んできたソーンは着地しながら皆に地図データを転送共有する。

 

「ひ、広い」

 

「ラインの前に展開してラプチャーを殲滅します。避難までの時間を稼がないと」

 

「ひとまず勝利の翼号、所属部隊は向かって防衛線を構築中だ。すまない、なんとか解除しようとしたんだがシステムが完全にロックされてて情報を抜き出すのが精一杯だった」

 

「いえ、ありがとうございます」

 

 先程から指揮官と連絡を取ろうとしているが通信状況が良くない。

 

「お前たち、なにをしている!」

 

 突然の怒鳴り声にドロシーとソーンが振り返るとエプタ島の軍人が明らかに不機嫌そうな顔でこちらに歩み寄っていた。

 

「救助活動ですが?」

 

「避難民の避難開始は住民の避難を終えてからだろ!そう言う条件で人類連合の入国許可を出しているはずだ!」

 

 軍人は明らかに階級が高そうな服に赤いベレー帽。指導者直属の親衛隊の指揮官だろう。

 

「状況は変わりました。ラプチャー侵攻が開始された今、優先順位関係なく救助活動を行うのは当然のことです」

 

「状況の変化は関係ない。今すぐ止めさせろ!」

 

 後からやってきたエプタ島の軍隊の戦車の砲身は避難民に向けられ、戦闘ヘリも空が飛べるソーンにライトを照らす。

 

「お前ら…いい加減にしろ!」

 

「レッドフード!私たちは人間を傷つけられません!無意味です!」

 

 今すぐにも殴りかかりそうなレッドフードをスノーホワイトが抑える。

 

「避難民を囮にした核滅却作戦。これが人類連合に知れ渡れば貴方たちは終わりです。人類存亡の危機と言っても国際社会は健在です。貴方たちの居場所はありません」

 

「そんな作戦は認知していない。君たちの言葉は我が国に対する深刻な侮辱行為だ。人類連合に対し正式に抗議する。これ以上、避難民の移送を続ければ、我々は君たちを武力を用いて我が国に侵入してきた侵略者とみなし排除する!」

 

「どの口が!」

 

 ドロシーも我慢の限界のようで怒りを露にする。

 すると島の兵士たちは銃を構え、臨戦態勢に移行する。

 島の軍隊は全員人間だ。いくらゴッデスだとはいえ人間を攻撃できない。今強行すれば避難民に被害が及ぶ。

 

「ドロシー」

 

「……全員。ソーンの指定した防衛ラインを死守します。住民の避難を最優先、少しでも早く避難再開を」

 

 必死に怒りを抑え込むドロシーは踵を返して歩を進める。他のメンバーも軍隊を睨み付けながらもドロシーに続く。

 

「さっさと行け!」

 

 そんな軍人の言葉を無視してメンバーは不安そうに見つめる避難民を見る。

 

「安心しな、私たちがラプチャーを全部倒せば済む話さ。なんせゴッデスは勝利の女神だからな!」

 

 レッドフードの太陽のような笑顔に避難民は少しだけ表情を和らげる。

 避難民たちはまだ自分達の足元に核が埋まってるとは知らない。

 

「ソーンさん」

 

「トウカ。見てろ、勝利の女神の力をな」

 

 避難民たちに笑顔を向けながらも全員が決意する。

 そんな彼女たちの姿を見て避難民たちも騒ぐことなく、静かに座る。女神の背中を見続けながら。

 

ーー

 

「リリスは?」

 

「勝利の翼号経由で通信してます。指揮官もすぐに向かうそうです」

 

「オケ、やるか!」

 

 住民の避難完了まで数日かかるだろう。軍隊だってずっといるわけではない。チャンスは必ず来る。

 

「それにしてもよく手を出しませんでしたね」

 

「ラプンツェル、俺は良識あるニケだぞ。守るべき避難民の前で殺戮なんてしないさ」

 

「居なかったらしてたんですね…」

 

「どうかな?」

 

 ラプチャーの主な侵攻経路は空だ。飛行型のラプチャーが陸型のラプチャーを掴んで持ってくるのが基本、上陸阻止の為には空を抑えなければならない。

 

「貴方の負担が多くなります。無理をしないように」

 

「分かってる。ありがとう」

 

「私たちも援護するから安心しなって!」

 

「間違えても私に当てるなよ…」

 

 レッドフードとグータッチを交わすとソーンは装備を展開する。

 

「ソーン。パーフェクトジオング装備、行くぞ!」

 

ーー

 

「たくさん居るな…エンカウンター!」

 

 ラプチャーの大群を見て笑うソーン。まだレッドフードたちの射程外だが1対多数を想定した装備の力を実験するには最高の戦場だ。

 

「いけ!」

 

 ジオングアームとブラウブロインコムが飛翔しビームをばらまく。無数のビームが多方向から押し寄せラプチャーの先遣隊を壊滅させる。

 ジャイアントバスを2門持ったソーンはそのまま突撃、迎撃に来るラプチャーを次々と撃破していく。

 

「多いって!」

 

 空だけではない。海からもラプチャーが来る以上、こちらで出来るだけ処理するしかない。

 

「バカ鳥が!」

 

 もはやストームブリンガーは相手ではない。腰部ビーム砲が火を吹き、ストームブリンガーのコアを破壊、一撃で落とされる。

 

 空でソーンが陸ではリリーバイスも合流したゴッデスたちが迎撃しラプチャーの第一陣から第三陣まで退けることに成功した。

 ラプチャーたちはエプタ島の手前の島に留まり一旦、進撃を停止するのだった。

 

「ソーン!」

 

「白ちゃん。水」

 

 たった1人で空を支えていたソーンは疲労困憊で着陸。スノーホワイトは頭から冷水をぶっかけ、飲み水を渡してくる。

 一晩中戦い続けたゴッデスは時間のあるうちにと軽食を食べながら今後の事について話す。

 

「エプタ島の指導者は無事に脱出して安全圏に居るそうだ」

 

「良い報告じゃないな…」

 

 指揮官の言葉にソーンは装備の点検をしながら答える。

 

「アレが無事に逃げ出したから。軍も退くかと思ったんだけどまだ居るわね」

 

 リリーバイスの視線の先には避難民を見下ろす位置に配置された部隊が鎮座している状況であった。

 

「補給ももうすぐ到着する。向こうだってまだ諦めてないだろうからな」

 

「アイツらの顎で使われてると思うと腹が立つな」

 

「レッドフード、私たちは彼らに使われているのではなく。避難民を護るために戦っているのです。避難民が居ようと居まいと住民の避難が完了するまで島を護ることは変わりませんよ」

 

「聖女様…ありがとよ」

 

 大きく息を吐いたレッドフードはソーンを真似して冷水を頭から被る。文字通り頭を冷やした彼女は笑顔を浮かべて避難民たちの元へと向かう。

 

「ヒーローって言うのはアイツの事を言うんだろうな」

 

「はい、レッドフードの周りには笑顔が堪えません」

 

 レッドフードの振る舞いはまさに象徴たるゴッデスの誇りと言っても良い。

 

「足元に爆弾がなければもう少し気持ち楽に戦えるんだけどな」

 

「背水の陣だと思えば良いさ。その方が力が出る」

 

「指揮官には敵わんな」

 

 ソーンは大きく伸びをするとレッドフードの所へと向かう。彼女ほどではないが避難民を安心させなければならないと思ったからだ。

 

「ソーンの様子はどうだ?」

 

「かなり疲れています。陸上戦と違って空中戦は全方位に気を配らなければなりません。それに援護があるとはいえ基本1人ですから」

 

「そうだな。やはりこうなるか…」

 

 ドロシーの言葉に指揮官も悩む。

 だが現状、このままでいくしかないのも事実だ。

 

「ソーンの事を気にかけておいてくれ」

 

「分かりました」

 

ーー

 

「爆弾って…まさか私たちが地下に設置した…」

 

 ソーンに水の差し入れを渡そうと近くまで来ていたトウカは持っていた水を持ったまま駆け出すのだった。

 

 

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