エプタ島、東西に伸びる島で、人口10万ほどの島であり様々な諸島を持つゾンダ共和国に所属していた島である。
昔、エプタ島は民族派閥により分裂し独立した軍事国家であり、かつて様々な国の利権が絡まりあい、その国力に見合わないほど膨れ上がった軍事力を保有している。
島国と言うこともあっていまだに存在する国であり、近くの大陸から多くの難民がこの島に集まり、かなりの規模の避難民キャンプが存在する。
避難民はその国で強制労働に枷られ、労働力を搾取される日々、人類連合としても問題視されていたがラプチャーの侵攻の対応が優先され、今まで放置されてきた問題でもある。
「で、そこにラプチャーの大規模な侵攻が予測されている」
「避難民はどれほどの数が居るのでしょうか?」
「正確には分からないが予測では5000ほどだそうだ」
「多いですわね」
元々広い島とは言えそれほどの数が避難していたとは驚きだ。
かなり前からゾンダ共和国の人々は避難を開始しており、人道的観点から人類連合とゾンダ共和国はエプタ島にも避難指示を行ったが最近までそれを固く拒否。
エプタ島の外交官を通じたラプチャー侵攻の可能性と指導者の地位を保証することを確約しやっと避難が開始されることになった。
「自分の地位を守るために島の民と避難民を人質にしたわけか…」
「言葉を選ばずに言えばそうだ。それに避難の最優先は自分だとな」
「はぁ!意味わかんねぇ!」
指揮官の言葉にレッドフードは怒りを覚える。
ここまで避難させずにいたせいで危機に陥っているくせに自分は先に逃げ出すと言う話に不快感を覚えない人間はいないだろう。
その上、避難優先は指導者、住人、避難民だとわざわざ指定してきたらしい。
「しかも私たちを護衛に着けろと言う話らしいわ」
リリーバイスの言葉に怒りを通り越して呆れすら感じる。
「よくそんな話が通りましたわね」
「10万の住民と5000の避難民の為だ」
これ程、気乗りしない作戦はないだろう。そんな思いを抱きながらゴッデス部隊は問題の島、エプタ島に向かうのだった。
ーー
「甲板が片付いてますね」
「この船にも避難民を乗せられるだけ乗せるらしい」
ラプンツェルの言葉に周囲を見渡す、確かに勝利の翼号の甲板に並べられていた戦闘機の姿は見当たらず、代わりに輸送ヘリが並んでいた。
「俺の装備も一つを除いて全部降ろしたからなぁ」
ちょっとイジけるソーンの頭を撫でるラプンツェル。
「住人は既に退避を始めていますわね」
ドロシーの言う通り、勝利の翼号の眼下には漁船や連絡船らしき船たちが人を満載して進んでいるのが見える。
例の指導者は勝利の翼号に乗船予定だがソーンの装備が多すぎて積み降ろしに時間がかかった。
先行していた第五方面軍は指導者と協議の末、住人から救出活動を開始、それと同時に自力で脱出する人々も出てきたのだろう。
「お、島が見えてきたぜ」
レッドフードの言う通り、島が姿を表す。
見える限りでも町の人々は港や、輸送ヘリのある広場に殺到しているのがわかる。
そんな救助活動をしている部隊を監視するようにエプタ島の軍隊が配置されており物々しい雰囲気だった。
「なんですかあれ、手伝ってくれてもいいのに…」
「俺たちに怯えてるのかな?」
「怯える?」
ソーンの言葉にスノーホワイトは首を傾げる。
「ラプチャーを理由に侵略してきたって認識なんじゃない?」
「意味が分からないんですけど」
「そうだよね~」
実際、エプタ島を含む諸島にラプチャーとしてもうま味があると思えない。侵攻理由は、ただ人が密集しているからと言う理由かもしれない。
なら大多数の人を移動させればラプチャーの攻撃目標から外れるかもと言う意図もあるのだろうが…。
完全装備の軍隊が島中にいるのは気分がよくない。エプタ島にはニケはいない。ラプチャーが侵攻してくれば長くは持たないだろう。
「間もなく到着だぞ」
ーー
「暇だぁ!」
「レッドフード、向こう側のラプチャーにタイラント級が複数体確認されたらしい」
「来たかいがあったわけだ」
島に着いたゴッデスは指揮官とリリーバイスを除いて避難民がいるキャンプの護衛に着いていた。
リリーバイスと指揮官は指導者とやらの護衛として町に向かい。
まるでラプチャーに対する壁かのように配置された避難キャンプの護衛を残りのメンバーが担当することになった。
「お姉さん、大きいね」
「君たちは運が良い。今回、初めて装備してきた新品だぞ」
避難民の子供たちに話しかけられたソーンは上機嫌で新装備を見せびらかす。
「最近、ゴッデスに加入したソーン博士か」
「すごいゴツイ装備だな」
モチーフはジオン驚異のメカニズムの象徴《パーフェクトジオング》
足はリックドム
両腰部、左右に分割して配置された大型スラスター兼装備コンテナ兼ビーム砲《ジオングスラスター》
両手ではなく、背部には全方位に向けられるジオングアーム、当然有線でオールレンジ可能。(イメージとしてはヘイズル・アウスラ・ギガンティック・アーム)
両手は基本空いてるが武装コンテナから武器を取り出して戦闘可能。
そして両肩部に有線式二連装ビーム砲(ブラウブロのやつ)
1人で戦場の制空権を制圧できるようにすると言うコンセプトで作られたこの装備は剥ぎ取ってきたストームブリンガーの動力炉を小型化したうえで2つも設置してやっと完成した虎の子である。
「これって駆動部と火器のジェネレーターは別ですか?」
「ん?」
高校生ぐらいの女子の言葉にソーンは驚きながら顔を向けると女子高生は言葉を続ける。
「すいません、ジェネレーターの数が多すぎるなって思ったので」
「君、名前は?」
「山野トウカです」
「へぇ」
思わず笑みが溢れるソーンは装備を脱いでトウカに見せる。
「君の見解を聞きたいな」
「はい!」
ーー
「あら、大人気ですわね」
山野トウカを筆頭にその道に携わっていただろう人間たちが集まり、ソーンの話を聞いているとドロシーが彼女のもとへとやって来る。
「そろそろです」
「了解」
ドロシーはラプンツェルに目配せすると彼女の指示で少しずつ避難を開始させる。
街から離れている場所だ、島民にバレないように少人数単位で避難を開始させる。
少し離れた森に勝利の翼号所属の量産型ニケがベースジャバーで待機している。
ベースジャバーは操縦するニケを除いて人間なら五人ほどは乗れる。それを5機、25人ずつだが移動させないよりマシだろう。
「病人と怪我人を優先させます。私の方でも処置しましたが本格的な治療が必要な方が多いですね」
「強制労働ってやつね…」
ラプンツェルは怪我人の処置をしつつ、優先順位を策定、スノーホワイトとレッドフードも手伝い始める。
「トウカ」
「はい!」
その場を離れる前にソーンはトウカに自作のマルチツールを渡す。
「これは!」
「流石に専門の物は無理だが。これがあれば大抵の物は直せる。一段落したら私のところに来い」
自分やスノーホワイトには及ばないが彼女には溢れんばかりの才能があると感じたソーンは握手をする。
「必ず来いよ」
「はい!ありがとうございます!」
泣きながら喜ぶトウカを見て笑いかけるとソーンはドロシーの元へと向かうのだった。
ーー
他の者たちが避難誘導をしている中、ソーンは労働の拠点に足を運んでいた。
ラプチャーが襲ってくるのは時間の問題だったはずだ、それなのに無理矢理にでも働かせた理由がそこにあるのではないかと調査をドロシーに頼まれたからだ。
「避難キャンプの近くに古い地下坑道。それの拡張工事と、なにか設置してる?」
工事は全て終わっているようで何かが地下に設置されているらしい。
さらに離れたところにはセンサーらしき物まで配置している。
「なんか嫌な予感がする…」
そんな感覚を得ているとソーンに通信が入る。
「ラプチャーが動き出した?」