ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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 去る者の思い出は胸に、留まる者の生に祝福を


友よ

 

「誰もひとりでは、生きられない~♪」

 

 勝利の翼号の格納庫の中で鎮座している1対多数を想定した空戦装備。原作では宇宙戦しか出来ないが数度の空戦データを元に安定して滞空することに成功、各部に細かくスラスターを配置すれば安定することが分かった。

 

 ギャプラン、バイアランやウィンダムとかに浮気したがやはりジオン、ジオンしか勝たん。

 エネルギー確保のためにこの装備のためだけに2つも動力を追加したのだ。おかげで強力なビームの雨を降らせられる。

 

「ソーン」

 

「これは指揮官。次の作戦が決まったのかい?」

 

 後ろから声をかけられ、振り替えると指揮官の姿が見える。

 

「いや、様子を見に来ただけだ」

 

「指揮官は真面目だね。コーヒーしかないよ」

 

「いただこう」

 

 簡易机の上に置かれた保温の卓上ポット。廃材で作られたステンレス製のカップに注がれたコーヒーはちょうどよい温度だった。

 

「大丈夫か?」

 

「ちゃんとコーティングしてある」

 

 ソーンの答えに指揮官は静かにコーヒーを飲む。

 

「どうだ、この部隊は?」

 

「楽しい奴らばかりだ。居心地が良いとはこの事をいうんだろうな」

 

 ドロシーとティータイムを楽しむのも

 

 ラプンツェルにアレな本を薦めるのも

 

 レッドフードと歌を歌うのも

 

 スノーホワイトと設計ににらめっこするのも

 

 リリーバイスと訓練するのも

 

 指揮官の指示でみんなと一緒に戦うのも

 

一人でいた頃では考えられなかった。

 

「ここに来る前に工房を見てきたが凄い散らかっていたな。スノーホワイトの工房とは大違いだ」

 

「だろうな。だが物を動かすなよどこにあるか分からなくなる」

 

「だが個室には何もなかった。ソーンが来る前の状態のままだ」

 

「帰ってないからなぁ」

 

「ちゃんと寝てるか?」

 

 少し笑いながら答えていたソーンは少し考える。

 そう言えばベッドで寝たのはいつだろう。一人でいた頃は毎日ベッドで寝ていた気がする。

 

「いつからベッドで寝てないかな…」

 

「睡眠は大切だぞ。俺も睡眠はしっかりとるタイプだ」

 

「指揮官は人間だからな」

 

 装備の最終調整をしているとコーヒーを楽しんでいた指揮官が静かに語りかけてくる。

 

「君はゴッデスだ。私たちの仲間だぞ」

 

 ソーンは沈黙を貫く。彼女は他の者たちと違いゴッデスに入るために作られたニケではない。企業も自分自身でさえ正体が分からない微妙な立ち位置にいる。

 指揮官はそこに対する居心地の悪さが彼女を休まずに働き続けることへの一つの原因ではないかと考えたのだ。

 

「ドロシーは認めてない者をお茶に誘わないぞ」

 

「ふふっ…想像がつくな!」

 

「それに全員心配していた。お前がちゃんと休めているか」

 

 心配されているというのがソーンは素直に嬉しかった。

 

「…分かった。これが終わったらゆっくり休むとしよう」

 

 そんなに心配されると少し気恥ずかしい。それに知らないうちにパフォーマンスが落ちているかもしれない。

 

「ごちそうさま。約束したからな、ちゃんと寝るんだぞ。ベッドでな」

 

「分かりました。指揮官殿」

 

「それと、一つの忠告だ…」

 

 その時の指揮官の忠告はソーンにとって予測していたことであったがその指示に深く頷く。

 その後、倉庫の床で爆睡していたソーンをラプンツェルが運んでいるところを発見されリリーバイスに説教されたのだった。

 

ーー

 

 それから2日後、2日間眠りっぱなしだったソーンは回復し無事に復帰する。

 

「おはようございます、ソーン。ちょうどアールグレイを淹れたところです。どうぞ」

 

「ありがとう、ドロシー」

 

 まさか2日も経っているとは思わずフラフラになりながら歩いているとドロシーは自前のティーセットを広げているところだった。

 

「紅茶にはあまり興味なかったけど。ドロシーの淹れる紅茶は格別だな」

 

「ありがとうございます」

 

 ドロシーの淹れる様々な紅茶はどれも絶品でゴッデスでも一つの娯楽として扱われるほどだ。

 今が戦時中で敗戦濃厚と言う事態においても我々ゴッデスが食料や弾薬に一切困らないのは優先的に回されているからだろうが。

 

「おう、博士。良く寝れたか?」

 

「レッドフード。座りなさい」

 

「はいはい」

 

 歩きながらサンドイッチを頬張っていたレッドフードはソーンの隣に座るとドロシーが用意してくれた紅茶を飲む。

 

「持ち方はこの前教えたでしょう」

 

「あぁ、ごめんごめん。つい」

 

 ドロシーはレッドフードがティーカップを大きく掴んで飲むのを諌めると彼女は頭を掻きながら元に戻す。その中身は飲み干されており空であった。

 

「それにしても部屋を使っていなかったなんて仕事熱心なのは感心しますが加減と言うものがあるでしょう?」

 

「使ってないんだったら言えよな。少し物置かせてくれよ」

 

「お前の荷物入れたら俺の部屋もぐちゃぐちゃになるじゃないか」

 

「いやいや、博士の工房も大概だぞ!?」

 

「俺はどこに何があるか全部分かってる。それに足場は綺麗だぞ。お前はいつもプレイヤー失くしたって部屋中ひっくり返してるクセに」

 

 言い合うソーンとレッドフードを見て、どんぐりの背比べだと思いながら紅茶を楽しむドロシー。

 彼女はふと思う。そう言えばソーンはお茶会にしっかりと付き合ってくれるしレッドフードの部屋事情も知ってる。ラプンツェルとなにかコソコソしてたりと部隊員とのコミュニケーションは欠かしていないなと気づく。

 

「ラプンツェルがこの前、お前から借りてた本、カビ臭いって言ってたもんね!」

 

「仕方ないだろ!しばらく読んでなかったんだから!」

 

 日中は作戦や部隊内でのコミュニケーション、夜は開発とかなりのハードスケジュール。それを考えれば睡眠時間が極端に短いのも納得できる。

 

「いやいや。ーーーーしてるときにカビ臭いのは萎えるでしょ!」

 

「そんなの気にする必要ないだろ。だってーーーーはーーーーーで…」

 

「…やはり、この二人が合わさるとお茶会の品位が落ちますわね」

 

 この数秒後、ドロシーのデコピンによって二人は吹き飛ばされることになるのだった。

 

ーー

 

「ソーンはいつも以上に元気そうだな」

 

「はい、週に一度はしっかり睡眠を取るそうです」

 

「それでも週一か…」

 

「彼女の研究は有益です。既に我々の技術力は20年早まったと言う話も聞きます。彼女も楽しくてやってる部分があるのでそこらが妥協点だと思います」

 

 ソーンは全てを人類に開示したわけではない。

 だが彼女がゴッデスと合流前に作ったラプチャー版解体新書は彼女が走り書きしたメモ含めて貴重な参考書であり、先日来た調査団に渡した結果、人類連合の技術部は大騒ぎであったらしい。

 

「第二世代フェアリーテイルモデル開発責任者から話をしたいと連絡がありました」

 

「あぁ、ニケになった開発責任者か」

 

 噂で聞いたことがある。自らニケとなり、第二世代フェアリーテイルモデルを開発している天才がいると。

 

「第二世代開発にソーンが加われば確かにさらに強力なフェアリーテイルモデルが生まれる可能性があるか…」

 

 夢ではあるが難しい。ソーンの研究は自らの体を改造したニケの使用を前提にしているものだ。体の改造は思考転換の呼び水となる。

 だからこそ、その開発責任者はソーンと話してどれが実現できて、不可能なのかを見極めたいのだろう。

 

 現に第二世代フェアリーテイルモデルの素体は既に完成し稼働中、その彼女たちが使用する兵装についてがメインだろう。

 

「それと次の作戦ですが少々面倒な作戦です」

 

「救出作戦…場所はあのエプタ島か」

 

「はい、色んな面でソーンに負担がかかる作戦です」

 

 ソーンは他のニケと違う。自らが選択して人類を見捨てることが出来るニケだ。彼女が人類に絶望すれば終わりだ。

 

「苦しい戦いになるな…」

 

 

 

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