ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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少女たちが見た流星

 

 ソーンがゴッデス部隊と合流してから数日、スノーホワイトの横の部屋に設置された彼女の工房で行った最初の作業は新しい工房の扉に名札を設置することだった。

 隣のスノーホワイトも気になるようで様子を見に来ていた。

 

「よし!」

 

「部屋に名前が必要なんですか?」

 

「白ちゃん。合理性だけを追求していたらロマンは生まれないのだよ」

 

「つまり意味は特にないと言うことですね」

 

 名札に書かれた名前は《ジオニック》ジオンの有名企業の名前を冠するこの工房で再スタートを果たす。

 

「最初はどんな武器を作る予定なんですか?」

 

「設備も物資も揃ったし、やはりビーム兵器が目標だな」

 

「エネルギー兵器ならラプンツェルの杖ですが」

 

「あれな、エネルギー出力は低いな。あの程度の出力では大気の影響を受けるだろ?対エネルギー兵器用の磁場フィールドは素晴らしい。基本的に後方支援用装備だな」

 

 いつの間にか持ってた端末から確認している姿を見てスノーホワイトは驚く。いつの間にそんなデータを手に入れていたのかと。

 

「あぁ、飲み会の時に先に目が覚めたから手持ちのスキャン装置でパパッと」

 

 油断も隙もないとはこう言う事を言えば良いのか。

 だがらこちらもソーンが検査しているときに色々と見させてもらっているのであまり文句が言えない。

 

「白ちゃん。君はゴッデス部隊の武器の開発、整備に当たっているらしいな」

 

「は、はい」

 

「と言うことは君は俺の先輩と言う事だ。よろしく頼む」

 

 手を捕まれブンブンと振られるスノーホワイトは驚く。

彼女の自己評価が低いのが主な原因ではあるが腕の良いソーンに居場所を奪われるのではないかと心配していた矢先にこの態度は意外であった。

 

「俺の研究データを見てどう思った?」

 

「驚きました。武器開発のアプローチ方法が私と全く違って、どんな考えをしていたらこんな物を思い付くんだろうって」

 

 ソーンの武器開発は造りたい物を先に考え、そのゴールにどうやってたどり着くか試行錯誤を繰り返すやり方だ。

 スノーや他の技術者のように現状の物をより良いものに改良していくやり方とは全く違う。

 

「ロマンだよ」

 

 ソーンは満面の笑みでそう答えた。

 

ーー

 

 天下のゴッデス部隊だからと言って年中無休で働いているわけではなく。ソーンが加入した時期はたまたまラプチャーの動きが鈍化した時期であり、ソーンは工房で新たな開発を進めることが出来た。

 得意とする分野が同じなためかソーンとスノーホワイトは2つの工房がありながら同じ部屋に居ることが多くなった。

 

 たまに暇を持て余したレッドフードが乱入して工房がディスコ会場と化しスノーホワイトがブチ切れる騒ぎもあったが楽しく過ごしていた。

 

 

「日傘ですか?」

 

「まぁ、お近づきの印にと思ってレッドフードに聞いたら日傘が良いと言われたのでね」

 

「お嬢様はずっと持ってるからさ」

 

「…ふむ。デザインは悪くないですね」

 

 そんなある日、ソーンとレッドフードはドロシーに日傘を差し出すと彼女は値踏みするように傘を見ると開いてみる。

 

「あら、ひんやりしますわ」

 

「傘から少し冷気を出すようにしたんだ。暑い日にはピッタリだろう」

 

「誰かさんとは違って気が利きますわね」

 

 そこそこ気に入ってくれたようで色々と傘を動かして使い心地を確かめているドロシー。そんな様子をリリーバイスも見つけ寄ってくる。

 

「どうしたの、ソーンが作った日傘?」

 

「そうだ、感想を聞きたくてね」

 

「冷気のON.Offは出来ませんの?」

 

「ハンドルの上ボタンを押せば出来るぞ」

 

 日傘のハンドル部分に2つのボタンがあり、上のボタンを押すと冷気が止まる。

 

「へぇ、便利ね。私も何か作って貰おうかしら」

 

「下のボタンはなんですの?」

 

「あぁ、下のボタンは…」

 

 上機嫌なドロシーはソーンの言葉が終わる前に下のボタンを押すと日傘の生地の内側が激しく光だしまるでディスコ会場にいるようなカラフルな光がドロシーを照らし、石突きから派手な音楽が流れる。

 

「……」

 

「………」

 

「………ブフォ!」

 

 絶句するリリーバイスとドロシー。我慢できずに笑うレッドフード、笑いながら甲板を駆けるソーン。

 数秒の膠着を得てとんでもない表情で追いかけ始めるドロシーとの追いかけっこはかなりの時間続いた。

 

 その後、

 

《私はソーンに変な提案をしました》

 

と書かれた札を持たされ正座させられてるレッドフードと

 

《私はレッドフードの提案を採用しました》

 

と書かれた札を持たされ正座させられてるソーンの姿が発見されたと言う。

 

「レッドフードがいる時点で警戒するべきでした」

 

とドロシーは語ったと言う。

 

ーー

 

「皆、集まったな」

 

 そんな時、ついにソーンがゴッデス部隊として初めて戦場に出るときが来た。

 

 状況は避難民や食料、軍事物資を運んだ装甲列車がラプチャーに襲撃。敵には大型複数体含む大舞台であり、応戦しているがジリ貧の状況、航空部隊による支援は航空型ラプチャーにより阻止され絶望的な状況らしい。

 

「貴方の初舞台にお似合いの状況ね。ソーン」

 

「派手にかましてやろう!」

 

 リリーバイス言葉にスノーホワイト以外のニケたちはなんの事だと首をかしげる。

 

「作戦はシンプルだ。ソーンはカタパルトから射出し先行、敵の航空戦力を片付け、陸上部隊の支援を。俺たちはいつも通りだ。航空戦力の減少を確認次第、降下地上のラプチャーを蹴散らす」

 

「ソーンだけに航空戦力を?」

 

「見てりゃ分かる」

 

「はぁ…」

 

 ラプンツェルの言葉に不適な笑みを浮かべるソーン。

 ラプンツェルは取りあえず納得するのだった。

 

ーー

 

「いつの間にニケ用のカタパルトが?」

 

「ニケ用と言うかソーン専用って言っても過言ではないかな」

 

 本来は戦闘機を運ぶためのエレベーターで空戦装備のソーンが姿を表す。

 ソーン自身の変化はあまりなく、いつも装着している軍服、バイザー姿で現れるが目をひくのは両手に装備されたムーバブル・シールド・バインダー。

 リリーバイスに「空戦は可能か」と問われ「当然」と答えた彼女が導きだした空戦装備(候補)はギャプランを模して造られた装備だ。

 

「とても大きな装備ですね。ソーンさんが見にくいです」

 

「すげぇ!ソーンもスノーもこんなの造ってたのかよ!」

 

 アッシマーやギャプランは飛行形態で高度を取り、自由落下中にモビルスーツ形態で戦闘を行うのがセオリーである。高い機動力を誇るこの二機を主眼に開発を進めていたがニケが着ける装備として考えるとアッシマーは不向きであり、ギャプランを採用したのだ。

 

 ビーム兵器の小型化が間に合わず、ムーバブル・シールド・バインダーに内蔵する形で解決したのもギャプランを採用した理由だ。

(本当はグフフライトタイプにしたかったが空戦における機動力に不安が残ってしまい断念)

 まぁ、滞空戦闘用に足装備はグフフライトタイプの足を採用しているが。

 

「実戦での運用は初めてですから気を付けてくださいね!」

 

「白ちゃん!俺が作ったんだ、分かってるよ!」

 

 両腕のバインダーと空戦装備様に付け替えたギャプランを模したバックパックのスラスターが火を吹く。

 

「ソーン、空戦試験装備。出るぞ!」

 

 勝利の翼号のカタパルト・オフィサーが合図を出すと体重を前に傾けるとカタパルトは勢いよく動きだしソーンを射出、彼女はその勢いのままスラスターを吹かしてさらに加速するのだった。

 

ーー

 

「くそ、リロード!」

 

「あれだけあった弾が尽きてきたぞ!」

 

「敵が多すぎるんだよ!」

 

 装甲列車の護衛をしていたニケ3個分隊は愚痴を漏らしながらも迫り来るラプチャーの群れをなんとかいなしていた。

 

「制空権さえ取れれば」

 

「無茶言うな。戦闘機で空飛ぶラプチャーに勝てるわけないだろ」

 

 空戦において旋回性能差は戦闘の優劣を着けさせるのに重要な要素の1つだ。

 その場で旋回できるラプチャーと違い戦闘機は旋回に時間が掛かる。その差が制空権をラプチャーに奪われた原因の1つだろう。

 

 空に漂うラプチャーの軍勢を絶望の表情で見つめるニケたちだったがその軍勢を裂くようにビームが空を駆け抜け、木の葉のように落ちていくラプチャーたち。

 

「援軍?」

 

「でもさっきビームが…」

 

 小型化飛行ラプチャーを薙ぎ倒しながら進むニケ、それを見た護衛のニケたちは歓喜の声を挙げる。

 

ーー

 

 想像以上のGに晒されながらもラプチャーの中を飛び回り、バインダー内蔵のビーム砲、手持ちの軽量型マシンガンを撃ちながら次々と撃破していく。

 

 しばらくすると勝利の翼号が目視で確認でき、リリーバイスたちが降りていくのを確認する。

 

「航空戦力のほとんどは撃破した。地上の状況は?」

 

「こっちも問題ない。タイラント級も…今ドロシーが倒した」

 

 滞空しながら周囲を警戒していると

 

「ストームブリンガー来ます!」

 

 勝利の翼号のオペレーターの言葉にスラスターを吹かしてランダム回避、彼女の周囲に稲妻が走ったのを確認するとさらに加速。

 ストームブリンガーのタレットの攻撃を回避する。

 回転しながらビームでタレットを破壊するも稲妻が邪魔で近づけない。

 

「援護頼めるか?」

 

「すまない。こちらもタイラント級が3体、応戦中だ。スノーホワイトかレッドフードの手が空くのに時間が掛かる!」

 

「何とかしよう!」

 

 ソーンは大きく後退し、全力加速で高度を取る。ストームブリンガーも上を取られまいと追いかけてくるが直線加速にはこちらに分がある。

 ストームブリンガーもそれは承知のようでこちらが向かってくる時の方向転換で止まった瞬間を狙っているのだろう。

 

「ぐぬぬなぬ!」

 

 ソーンはバインダーに装備していたヒートランサーを起動、大斧であるヒートランサーの刃は赤く加熱される。

 その瞬間、ソーンはバインダーのスラスターを前方に向け急速反転、その時のGは冗談じゃないほどかかり、失敗したと思うも止まらない。

 

「舐めるなクソ鳥がぁ!」

 

 瞬時に反転してきたソーンに対応できずストームブリンガーは彼女の振るうヒートランサーに顔面を両断されそのまま胴体も真っ二つに切り裂かれる。

 

「……」

 

「すげぇ…」

 

 空の支配者として人類に恐れられていたストームブリンガーが地面に向けて加速するソーンによって両断された姿を見て護衛のニケたちも避難民たちも歓喜の声を挙げる。

 

「お星さまが落ちてきたみたい」

 

 避難民の女の子の言葉は歓喜の声に書き消されたが確かにこだましたのだった。

 

 このソーンの初舞台は《天空の女神が降臨した日》として呼ばれることになるのだった。

 

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