ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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逢戦士たち

 

「す、凄い!」

 

 ゴッデス部隊がグレイ・ゴースト発見エリアに到着したのはグレイル分隊が戦闘してから2日後。

 拠点と思われる施設の罠を解除しながら進み、たどり着いた工房を見てスノーホワイトは歓喜の声をあげる。

 

 手持ち式大口径キャノン砲、バズーカ、マシンガン、対艦ライフル、ありとあらゆる武器が工房に並んでいる。

 図面を束ねたファイルをスノーホワイトは手に取る。

 

「思い付く限りの武器を作っていたようですね」

 

「すげぇ、このミサイルランチャー良いじゃないか」

 

「危ないですから、勝手に触らないでください!」

 

 レッドフードは楽しそうに置かれた武器を次々と持ち、構えてみる。

 

「なんか良いものは見つけたかい、おちびちゃん?」

 

「主要な研究資料は持ち出されたと思うんですけど。エネルギー兵器に関する研究を進めていたと思います」

 

「エネルギーってビーム、ドカドカ撃ったりする奴か?良いじゃん、アタシの銃もビーム、ドカーンって撃ちたいなぁ!」

 

「なるほど、ラプチャーのエネルギー機関を小型化する研究をしてたんですかぁ」

 

 後ろでレッドフードがビームを撃つ真似をしているのを無視してスノーホワイトは資料を読む。施設の探索を頼まれたがリリーは何をしているのかと彼女は考えるのだった。

 

ーー

 

「……」

 

「……」

 

 スノーホワイトたちが拠点を探索していた頃、そこからかなり離れた港の廃墟でグレイ・ゴーストとリリーバイスは静かに対峙していた。

 リリーの後ろに立つ指揮官も静かに息を飲む。

 

「予想通りだな」

 

「はい」

 

 リリーは現場にたどり着く前、地区一帯の地下見取図を手に入れていた。下水、上水、地下鉄、地下道等、あの地域は地下が複雑に絡み合い、一種のアリの巣のように広がっている地域だ。

 都市開発時に渋滞が発生しない街造りのテストタウンとして造られたこの街の地下通路を利用してグレイ・ゴーストが神出鬼没に出現していると判断したのだ。

 

 リリーはスノーホワイトとレッドフードに工房と周辺の地下通路の確認、ドロシー、ラプンツェルは彼女が予測したグレイ・ゴーストの脱出ルートを警戒して貰っていた。

 そしてリリーバイスの予測は当たり、運良くリリーが警戒していた出口に姿を表した。

 

 グレイ・ゴーストはタイヤの兵器から降り、リリーに向けて歩を進める。バイザーに覆われた顔からは表情は察せないが警戒しているのは分かる。

 

「貴方がグレイ・ゴースト?」

 

「グレイ・ゴースト?」

 

 リリーの間合い半歩手前で止まったグレイ・ゴーストは首をかしげる。

 

「貴方の名前が分からなかったから、こっちで勝手に呼んでたの。貴方の名前は?」

 

ーー

 

 拠点から移動を始めて地下から出て来て待っていた人影には驚いた。白髪の美人でありながら、その姿は歴戦の戦士、機械生物がひしめき合う地域で生身でいるのは不自然だ。

 素手が武器か、それに類するものを持っているのだろうと警戒を強めたが名前を問われ戸惑う。

 

(そう言えば名前はなんだろう。転生してから名乗ることが無かったから考えもしなかった)

 

 それにしてもグレイ・ゴーストとは大層な名前をつけられた物だ。灰色の幽霊とかシャリア・ブルかよ。

 

「名前…名前か…」

 

(前世の名前とか思い出せないな)

 

 まぁ転生したのだ、そう言うこともある。

 

(キャラの名前はちょっと嫌だな)

 

 アイナ・サハリンとかマリーダ・クルスとかも良いけどやっぱりキャラはキャラの名前だけであって欲しい。

 ガンダムの名前で良いのがないかと考える。

 

「…ン」

 

「ん?」

 

「ソーンだ」

 

 ガンダムルブリスソーン、なんか響きが好きだなって思ってた気がする。本当はジオン系から着けたかったけどなんか人名ぽい機体とか思い付かないんだよね。

 

ーー

 

「ソーン、素敵な名前ね」

 

 ソーンと名乗られた時、リリーと指揮官は少しだけ反応する。

 

 ドロシー

 

 ラプンツェル 

 

 スノーホワイト

 

 レッドフード

 

 現在ゴッデス部隊所属のニケはフェアリーテイルモデルと呼ばれ、それぞれが童話に登場する人物が由来だ。

 グレイ・ゴーストことソーンとは《いばら》、その名は有名な童話《眠れる森の美女》の主人公《いばら姫》を連想させる。

 やはりフェアリーテイルモデルを参考にして造られた三大企業以外のニケなのかと考える二人。

 

 まぁ、ソーンの由来である《ガンダムルブリスソーン》のソーンは《いばら》と言う意味ではなくルーン文字から来ているので違うが。

  

  

「ソーン、違うのなら良いけど。貴方、この世界のこと知ってる?」

 

「……知らないな」

 

 やはりリリーバイスの考察は正しかった。指揮官は彼女の背を見ながらそう感じた。

 記録を確認すると彼女が活動を始めてから数ヵ月が経過している。通常のニケならラプチャーだらけの地域に留まるより味方である人間たちとの合流を目指す筈だ。

 とくに彼女は戦闘能力が高い、ラプチャーを恐れて動けないわけではないだろう。

 

「貴方は何も知らない世界に放り出され、初めて会ったラプチャーや人間、そしてニケに攻撃された。貴方が私達に不信感を抱くのは当然。でも信じて欲しい、私達は地球を奪還するために死線をくぐり抜けて来た。信頼する指揮官と一緒に」

 

ーー

 

 白髪の美少女、リリーバイスの言葉は信用できる。そう感じられる、彼女と後ろにいる指揮官には確かに強い信頼関係を感じさせられるが。

 

「奴はニケを道具のように扱っていた。」

 

 同じ制服を着ていた最初の指揮官は必死に戦うニケを役立たずと罵った。自身もニケだから分かる。例え死なないとしても痛みを、死の恐怖は感じるのだ。

 

「役立たずと罵った。ニケは機械ではない!」

 

 明確な怒りを感じた。意識としては人間のつもりだったが自身もニケと呼ばれる存在。そんな同胞がひどい仕打ちを受けて我慢できるほど我慢強くない。

 

「その通り、貴方の言うことは何も間違ってない。ニケは人類を守るために必死に戦っているし、ほとんどの人はそれを分かってくれている。でも、そう思わない人間も居るのも事実」

 

「運が悪かったと?私が会った人間は、たまたまだと?」

 

「そうと言いきれないのは悲しいけど。ほとんどの人はそう思ってくれている」

 

 思い出す。街で戦った分隊のニケたちは指揮官を守ろうと決死の覚悟で戦っていた。トラップにかかったニケを支えて出てきていた指揮官もいた。

 人間の思想や価値観はそれぞれだ。それは分かっているつもりだ。

 

「だから取引しない?」

 

「取引?」

 

 無理矢理にでも連れていかれると思った矢先の取引と言う言葉に興味を持つ。

 リリーバイスの持ってきた条件は以下の通りである。

 

 ① 敵の襲撃を警戒しなくて良い拠点

 ② 新たな工房と素材、技術データの提供

 ③ 人類の希望、最強の部隊《ゴッデス部隊》の後ろ盾

 

その代わりに

 

 ①ソーンはゴッデス部隊の監視下と言う名目で対ラプチャー戦に参加。

 ②ソーンの体の詳細な調査(ソーンの許可範囲で)

 

 悪くない。

 特に工房の獲得と素材、技術データの提供は実に興味深い。それに彼女の部隊の管理下に置かれると言う事は少なくともクズに管理されないと言うことだ。

 

「悪くない、ただし条件がある」

 

 目の前に居るのはゴッデス部隊の指揮官とその隊長だ。

 せっかく二人が居るのなら試したいことがある。

 

ーー

 

 ソーンは左腕に着けていたガトリングシールドを含む全身に備えられた武器を次々と外して地面に置く。

 それを見て察したリリーバイスも体を伸ばして準備をする。

 

「ルールは?」

 

「武器なし、素手」

 

「素敵ね」

 

 バイザーも外して準備体操をするソーンを見て指揮官は無言で二人と距離を置き、物陰に隠れる。

 二人は自然と距離を詰め、間合いに入る。

 

《EXAMシステム、スタンバイ!》

 

 電子音が鳴り響くとソーンの赤い瞳が炎のように揺らめき、輝き始める。

 

「なるほど、目が光っていたのはそのシステムだったのね」

 

「全力だ」

 

 ソーンの全身から湯気が出てくるのを見つめながらリリーバイスも構える。

 

 勝負は一瞬、それは音も置き去りにした。

 指揮官の動体視力では追い付けず、爆音と衝撃波が発生し、体が飛ばされないように必死に耐える。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「…まぁ」

 

 警戒地点から戻ってきていたドロシーとラプンツェルは唖然とその光景を見つめる。

 

 悠然と立つリリーバイス、粉砕した地面に腰から上、上半身が埋まっているグレイ・ゴーストことソーンの姿だった。

 

「くやしぃぃぃ!」

 

 足をバタバタさせて悔しがるソーンはかなり元気そうだ。

 

「予想通りではあったがヒヤヒヤしたぞ」

 

 指揮官もその様子を見て安堵の表情を浮かべていると彼の前に何かが落ちてきた。何が落ちてきたのかと拾って見た彼の表情は僅かに強ばる。

 リリーバイスがいつも右肩に着けていた軍服の飾り紐、それが千切れて指揮官の前に落ちたのだ。

 

「大丈夫か?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 飾り紐を手渡しながら確認すると確かにいつも着けている紐がない。

 

「予想以上だったな」

 

「はい、でも頼りになりそうです」

 

「もう少しですから。頑張ってください、ドロシー、貴方も手伝ってください」

 

「服が汚れてしまいます」

 

「いでででで!」

 

 ラプンツェルに引っ張られて叫ぶソーンを見ながら二人は静かに見つめるのだった。

 

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