ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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震える廃墟(後編)

 

「状況報告!」

 

「こちら、ヤオ損傷なし。粉塵により視界不良。」

 

「こちらニア。爆破の影響でバイザー破損、その他損傷なし。戦闘続行可能ですが敵を見失いました」

 

「そうか…なんだウォー?」

 

「いえ…」

 

 ひとまず、全員が無事なのを見て安堵するグレイル、ウォーと呼ばれたソルジャーO.Wは笑みを浮かべながら視線をそらす。

 

「予想通りゲリラ戦で来ましたね」

 

「そうだな、向こうが単独である以上。それしかない」

 

 敵は武装コンテナを破壊した後、ニアに何もせずに移動した。深入りして囲まれるのを避けるためか、それとも別の理由か。

 

「どう思う?」

 

「敵の意図が我々の全滅なのか。退かせたいだけなのか分かりません。重火力のニアを倒すより、囲まれるのを恐れたのか、より驚異となる対象へと向かったのか」

 

「向こうも時間をかけたくないはずだ。増援は?」

 

「ここは数が少なかったですが、他エリアではラプチャーの数が多く。我々がグレイ・ゴーストに集中できるようにするのが限界だと言うことです」

 

「我々だけで対処するしかないか…」

 

 ウォーの言葉にグレイルも考える。

 

「敵の装備は、シールド懸架型ガトリングとサーベル。マシンガンが確認出来ました。中、近距離戦闘用装備に見えます」

 

「なら狙撃手は目障りの筈だ…ヤオか!」

 

ーー

 

「こちらヤオ…指揮官どうされましたか?」

 

「ヤ……敵……そっ……可能…」

 

 狙撃銃を構えながら周囲を警戒するヤオに通信が入るが突然の通信不良によりよく聞こえない。

 粉塵は徐々に晴れ、視界が戻ろうとした時。

 

「こちらヤオ。指揮官、無線メリット1です」

 

「き…つけ…ろ…」

 

 粉塵の中、真横から伸びてきたムチのようなものが狙撃銃に巻き付いたと思えば高圧電流が流れる。

 

「きゃぁぁ!」

 

 狙撃銃から黒煙が上がり、電流によりヤオの両腕は力をなくし使えなくなる。

 高圧電流に曝され腕が一時的に使えなくなったヤオはムチがやってきた方向に視線を移すとグレイ・ゴーストが粉塵から現れ、タックルを受ける。

 

「ぐぅ!」

 

 壁に激突して苦悶の表情を浮かべるヤオはグレイ・ゴーストのサーベルにより両足を切断され床に転ぶ。

 

「やられる!」

 

 グレイ・ゴーストがサーベルを振り下ろそうとした瞬間、その後ろからマシンガンを構えたニアが無言のうちに射撃開始。

 

「っ!」

 

「飛んだ!?」

 

 グレイ・ゴーストの背部スラスターが火を吹き、浮き上がる。跳躍や自由落下以外でニケが空を飛ぶなんてあり得ない。

 

「逃がすか!」

 

 動揺しながらも射撃を続けるニアだったがグレイ・ゴーストはガトリングを射撃しながら高速道路に着地。

 その射撃によりニアの左肩アーマーが吹き飛び、マシンガンの銃身が破壊される。

 

「敵は23号バイパス高架上に降下。指揮車に向けて進撃中!」

 

 ニアは撃たれた足を押さえながら詳細な位置を報告する。

 

「捕捉した。攻撃を開始する!」

 

「サラ、頼む」

 

 サラと呼ばれたI-DOLL・サンは輸送ヘリの1機に乗り込み上空からグレイ・ゴーストの姿を捉えた。サラのアサルトライフルの射撃に加え、輸送ヘリに搭載されていたロケット弾も火を吹く。

 

ーー

 

「指揮官、私も」

 

「あぁ、頼む」

 

 試作された刀を腰に差したウォーは敬礼をすると装甲車から出る。それをグレイルは静かに見つめるのだった。

 

ーー

 

「サラ、助かる」

 

 ウォーはサブマシンガンを構えながらバイパス高架が見える位置に陣取る。

 ウォーのいる位置まで追い詰められたグレイ・ゴーストはそこでバイパス高架が崩壊するほどの集中砲火を受ける。

 

「品切れた。あとは頼む!」

 

「任せて!」

 

 ヘリのパイロットの言葉に親指を立てて答えるとサラは離脱するヘリから降り、ウォーの横で陣取る。

 全力火力であったがそれで沈黙するほどヤワではないのは分かっている。粉塵から出てきたところを集中射撃で仕留めるために銃を構える二人。

 

「さぁ、来い…は?」

 

「指揮官の元へは行かせん…え?」

 

 倒壊した高架道路が動いたと思えば徐々に持ち上がって行くのを見て二人は戦慄する。

 道路は二人の元へと倒れ、とっさに身を隠すがあまりの状況に二人の思考が止まってしまう。

 

「怯えろ!竦め!自身の性能を活かせぬまま、死んでいけ!」

 

 倒れた道路の上を悠然と歩くその姿はまさに鬼神、だが二人は退くわけにはいかない。二人の後ろには心から尊敬する指揮官がいるのだから。

 

「いくぞ!」

 

ーー

 

(最高にハイって奴だぁ!)

 

 グレイル分隊が決死の覚悟を決めている時、当の元凶はまるで原作再現みたいな状況のせいで興奮の極みにあった。

 

 だが目的は見失っていない、ニケも人間も殺さない、指揮車と二人のニケを戦闘不能にさせて逃げ支度を進める。

 拠点はトラップの山だ、二度目の爆発がないのなら諦めたかやられたかの二択だろう。

 

(強いな…)

 

 それにしても先程の狙撃手とマシンガンのニケ、二人もそうだったが目の前の二人もかなりの腕だ。

 一番最初に出会った部隊に比べたら天と地ほどの差があるだろう。

 

「ははっ!楽しませてくれる!」

 

 機械生物相手に無双するのも悪くないがこうやって頭を使ってしのぎ合うのは最高に楽しい。

 

(でも時間はあまりかけたくない)

 

 長引けば援軍が訪れるかもしれない。その前にこの部隊を退かせ安全を確保しなけばならない。

 

ーー

 

「手強い…」

 

 体に着けたボディカメラと上空のドローンからの映像を見た指揮官からの指揮に支えられてなんとか対等の勝負が出来ている。

 

「元のスペックも違うだろうけど。戦闘慣れしてるなぁ」

 

「残弾も少ない。仕掛ける!」

 

 ウォーはそう言うと射撃しながらグレイ・ゴーストに突撃する。敵はシールドで弾を弾きながら近づき、サーベルを振るう。

 ウォーは突然軌道を変え、ビルの中へガラスを突き破って入っていく、視線が彼女の方へと向かった瞬間、サラの全力射撃で釘付けにする。

 

 ウォーはビルの二階から飛び上がりグレイ・ゴーストの真上に銃を構えながら現れる。

 サーベルの間合いには遠く、ガトリングは銃身が邪魔で撃てない完璧な間合い。

 

 獲った!

 

 二人は確信した瞬間、グレイ・ゴーストのシールドからガトリングがパージされ、シールド裏に隠されていた3連装の銃口が姿を現す。

 

「ウォー!」

 

「っ!」

 

 援護のためにリロードした銃を向けるサラが見たのは投擲されたサーベル。

 サーベルはサラの腹部を貫き、壁に串刺しになる。

 

「ぐっ!」

 

 グレイ・ゴーストとウォーは撃ち合い、ウォーは左腕を失い、グレイ・ゴーストはバイザーが砕ける。

 先に立ち直したのはウォー、彼女は弾切れのサブマシンガンを捨て、試作されていた刀を抜く。

 

(貰った!)

 

 最短最速の動作による刺突、バイザーを失い一瞬の視界不良を利用した一撃。

 

《EXAMシステム アクティベーション》

 

 赤い線のような残光がウォーの視界に残る。彼女の視界にはそれしか映らなかった。

 先程まで見ていたはずの敵の姿は消え、影が自身を覆っているのに気づいた頃には胴体が真っ二つに切り裂かれる。

 腹に刺さったサーベルを必死に抜こうとしているサラが涙を流しながら叫ぶ姿を見ながら彼女は空を見上げる。

 

「なに…が……」

 

 目にも映らぬ速度で背後に回られ斬られた。

 腹から下を失いなった状態で顔を動かしこちらを見下ろすグレイ・ゴーストを見る。

 腰につけていた斧を持ち、炎のように輝き揺れる瞳がこちらを見る。

 

「指揮官…逃げ……て」

 

 意識が切れる寸前まで指揮官の身を案じていたウォーに敬意を示すようにしばらく立っていたグレイ・ゴーストは血反吐を吐きながらもがくサラに刺さっていたサーベルを抜くと血をはらう。

 

「行かせない!」

 

 サラは残った力でグレイ・ゴースト足を掴むが悲しくもすぐにはらわれ、指揮車に歩みを進める。

 

ーー

 

「私が不甲斐ないせいで…すまない」

 

 グレイルは指揮車で静かに謝罪すると車から出る。

 相手が殺すつもりならどちらにいても同じだ、他の乗員はウォーとサラが戦っている間にヘリまで逃げて貰っている。

 

「……」

 

「……」

 

 武器もなにも持たずにグレイルはグレイ・ゴーストと向き合う。

 

「彼女たちにトドメを刺さなかったこと感謝している。ありがとう」

 

「……」

 

 グレイ・ゴーストは無言で腰にマウントしていたドラムマガジンのマシンガンを向け、装甲車を破壊する。

 その爆発によろけながらも立つグレイルは静かに見つめる。

 

「軍を退かせろ、これ以上の戦闘の意思はない!」

 

 そう言うとグレイ・ゴーストは高く飛び上がり姿を消す。

 

「指揮官!」

 

 それに入れ替わるように、足を失ったヤオを背負い、ボロボロの足を引きずりながら必死に歩いてくるニアを見てグレイルは安堵する。

 

「ル…グレイル。無事か!」

 

「トルタル!無事だったのか!」

 

「あぁ、仲間のお陰でな。トラップにまみれだったから抜け出すのも時間がかかってな」

 

 ソルジャーF.Aに肩を貸しながら施設から出てくるトルタルは大量の汗をかきながら町を見つめる。

 

「ひどい目にあったな」

 

「あぁ、本当にだ…」

 

 グレイルはそう呟きながらヘリで待機していた救助部隊をウォーとサラたちに向かわせるのだった。

 

ーー

 

 

「っと言うことで説明したコードネーム:グレイ・ゴーストは第七方面軍のニケを単機で壊滅させた。怪我人は出たが指揮官、ニケ共に生存なのが唯一の救いだな」

 

「製造記録、類似する設計図、全てにおいて記録なし。まさに幽霊ですね」

 

 空中空母会議室にてゴッデス部隊指揮官とリリーバイスは報告書を読み上げた。

 戦闘自体は数時間前の出来事だがそれが即座にこちらに送られてきたのを見るとグレイ・ゴーストの対応をゴッデス部隊に任せたいと言うことだろう。

 

「本当に侵食されているんでしょうか?」

 

「不明だ。だが作戦に参加した指揮官の一人がグレイ・ゴーストと会話を行っているらしい」

 

「侵食されたニケは会話はままならない。第七方面軍に非はありませんでしたか?」

 

 リリーの言わんとすることは指揮官は理解している。

 第七方面軍は侵食を受けたと誤解して戦端を開き、グレイ・ゴーストが防衛目的で反撃してきたのではないかと言う事だ。

 

「なんとも言えない。前日に偵察部隊が瞳が赤く輝いているのを確認している。グレイ・ゴーストと最初に接触したニケたちは治療中、指揮官も重傷で意識が戻らない」

 

「気になりますね。唯一怪我をしている指揮官が」

 

 リリーの言葉に指揮官も無言の同意を示す。従来のニケでは実現できなかった装備を扱い活動する未登録ニケ。

 

「説得する必要がある」

 

「力ずくでも」

 

 グレイ・ゴーストは先の戦闘で人間に対する不信感を得ただろう。最初は戦闘になるかもしれないが落ち着かせて説得するしか方法はない。

 だがリリーの言葉に指揮官は思わず笑みを溢す。

 

 こうして空中空母《勝利の翼号》はグレイ・ゴーストの居るエリアに向けて進路を取るのだった。

 

 

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