「トリクル小隊から報告が来た」
人類連合軍第七方面軍司令部の会議室にて映し出されたのは遠方から撮影した、くすんだ銀髪と軍服のようなロングコートを羽織るニケの姿。
「コードネーム《グレイ・ゴースト》1ヶ月前、ラプチャーに占領された地域で活動しているニケが居ると偵察部隊から連絡を受け外見的特徴から量産型ニケではなく適正持ちの特化型ニケと判断され、データベースで照会を行いましたがヒット0。未把握のニケと判断されました」
司令の副官の言葉に会議室に集まっていた幹部、指揮官たちは動揺する。
ニケはラプチャーに対抗するための人類の切り札、その分野で著しい業績を残していた《エリシオン》《ミシリス》《テトラ》の三大企業が技術の粋を集めて製造している決戦兵器だ。
特に量産型ニケに分類されないシリーズは近年初陣を飾ったゴッデス部隊のフェアリーテイルモデルを始め、ごく少数に留まる。
人類が危機的状況に陥っているとはいえ、新規に製造された特化型ニケが登録もない状態でさ迷っているなんてあり得ないのだ。
「見馴れない装備だ。近くのラプチャーに襲われた施設で開発していたものか?」
「いえ、あの施設は量産型ニケ用の武器を量産、改良する場所でしたので新規製造はしていません。」
指揮官の一人の質問に答えたのは占領された施設の責任者の男性であり、現在主人公が拠点にしている部屋の主だった人間だ。
「続けます。該当エリアが占領されたのは半年前、その2ヶ月後にラプチャーによる増援が激減し、我々第七方面軍による攻勢で膠着状態に陥りました。
その後、ラプチャーの動向を探るために偵察部隊が派遣されましたがエリアE2でラプチャーの残骸が山のように積まれていた状況を確認しました。」
映像に映し出されたのは100を越える小型ラプチャーがうず高く積まれている状況だった。
「これ見たときは驚いたよなぁ」
「改めてみると確かに。特化型ニケじゃないと単機では無理だな」
ラプチャーの同士討ちなどあり得ない。だが放浪していたニケ《グレイ・ゴースト》の仕業なら納得できる。
「偵察部隊は同様の状況を何度も確認。ニケの捜索を行い、先日その姿を捉らえることに成功。コードネーム《グレイ・ゴースト》として捕獲・破壊対象に認定されました。」
「登録がないとはいえ、ラプチャーと戦っているのならニケだ。接触し同行を求めるか、最悪捕獲し、軍に編成させれば済むだけの話では?」
幹部の言葉に司令官と副官、トリクル小隊の指揮官以外の人物たちは同意の態度を見せる。
「ラプチャーによって侵食されている可能性があります。」
トリクル小隊の指揮官の言葉に会議室は騒がしくなる。
当然だ、単機で無数のラプチャーを屠る能力を持つニケが侵食されているならそれは恐ろしい驚異になる。
「ニケの報告によると夕陽の中でもはっきり確認できるほど眼が赤く輝いていたと」
「なんて事だ…」
侵食は最近発見されたラプチャーのタイプでニケにとって不治の病と言っても過言ではないデータ汚染であった。
侵食されればニケは人類の敵となる。強力なニケであればなおのことである。
「確証はありません。よって当該エリアに大規模な部隊を派遣します。主目的はエリア内に設置された工場施設の物資を回収。第二目標にグレイ・ゴーストの確保・破壊とします。第七方面軍所属ニケの8割をこの作戦で投入する大規模作戦を実施します。」