青い空、白い雲、そして眼前に広がる廃墟。
俺が見たのはそれが最初だった。
「見慣れた空だ…?」
そんな言葉を吐きながら起き上がろうとすると体が動かない事に疑問を持つ。
何故かと視線を下げると体の半分以上が瓦礫に埋もれていた。
「人生詰んでね?」
だがなんと言う事でしょう、少し力を加えてやれば大きな瓦礫たちは音を立てて崩れそこから抜け出すことに成功する。
「てか何で廃墟?」
確か自分は携帯でめぐりあいを見ながら布団で怠惰な時間を過ごしていたはず。寝落ちして起きたのは分かるがなぜ自分は廃墟の瓦礫に埋まっていたのか。
「転生?」
よく読む小説の展開を考えながら少しだけ冷や汗をかく。そんな訳ないと心の中で否定しながら腕を組もうとすれば違和感を感じる。
腕組が思ったより上手くいかないばかりか柔らかいものを感じる。
恐る恐る視線をもっと下げると腕は見えず、完全に胸部に隠れた状態が視界に入る。
「はいはいはい…」
一歩、二歩とゆっくり歩を進め早足でその場を左回りで数回、周回すると
「馬鹿やろうがぁ!」
手頃な位置にあった瓦礫を蹴飛ばし、飛んだ瓦礫は廃車に直撃、大穴を空ける。
「WelcomeTo終末世界じゃないのよ!どこだよここ!クルジスかよ!」
ショックで跪き、両手でアスファルトを何度も叩く。
一撃でアスファルトは粉砕し破片が飛び散るが気にしない、気にしていられない。
(ってかパワー、ヤバくね?絶対人じゃないじゃん)
「なんで女!?そりゃ、来世では女性として生きてみたいとか思ったことあるけどさ!違うじゃん!」
なんか言葉にならないが違うということを言いたかった。
「もうなんだよ…」
ひとしきり騒いだ後は気持ち的な疲れを感じて視線を横にずらすとなんかデカイ多足機械生物?がこっちを見つめていた。
「…」
「…」
数秒、いやコンマかもしれない。2人?は視線を合わせていると機械生物?が叫びながら飛びかかってくる。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
咄嗟にでた右ストレートで機械生物は顔面らしきものが粉砕し吹き飛ばされ廃墟に激突し沈黙する。
「あ?」
しばらくの沈黙、状況を理解すると体の埃をはらう。
すると遠くから同じ機械音が迫ってくるのが分かる。
(逃げよう)
三十六計逃げるに如かず、偉大なる誰かの教えだ。
幸いなことに奴はハグレだったようで迷わず開いていたマンホールに飛び込み危機を脱した。
「…マジか」
なぜマンホールが開いていたか?
それは誰かが開けたということ、下水道には無数の遺体が並び、下水の匂いと相まって地獄の光景を生み出していた。
その光景に吐き気を催し、吐こうとするがなにもでない。胃が空っぽなのかそれとも胃がないのか。
そんな事を考えている自分に嫌気を覚えながらも先に進む。
「お借りします…」
手を合わせたのは明らかに重武装している少女、一見して致命傷を受けてからここに運ばれたのか、逃げてきたのか。
ライフルと弾薬、その他諸々を手慣れた手付きで装備する。自分自身、銃器に関する知識は皆無、なのに日課でこなしてきたかのような自然さで銃を扱えるのは体が覚えていると言うやつだろう。
「なかなか…」
地上に上がり、周辺が静かなのを確認すると比較的原型を留めている家にお邪魔して無事な鏡を確認するとそこには美少女がいた。
短く切り揃えられたくすんだ銀髪、赤い瞳のしたには隈、軍服のようなデザインのロングコートの下にはしっかりシャツとネクタイを着けている。
「社会の波に飲まれて疲れきった美人って感じだな…」
目の下の隈はデフォなのだろうか。
そんな事を考えながら一番綺麗に残っていた風呂場に埃まみれの布団を敷いて寝る。
幸いなことに機械生物に襲われることもなく一晩を過ごせた。
ーー
「……」
無事に朝を迎えれた。という喜びと同時に夢じゃなかったと絶望を感じる。
誰もいない、廃墟の街を隠れながらたまに機械生物と戦いながら進んで行くと明らかに重要そうな施設が見えてくる。
ひとまずその施設探索は置いといて適当な家で夜を過ごすことにする。
「ちょっと分かってきた」
今日、1日。ただ逃げ回ってきた訳ではない。
自分の体を知るために様々な戦い方や動きを試してみて分かったことは自分は人間に限りなく寄せたアンドロイド的な存在と言う事になる。
常時振るえる馬鹿力、体重計を一撃で破壊する体重、動き回っても全然減らないお腹。
食事ができると言う事だから限りなく人間に寄せたと言った。
そしてなんか沢山いる機械生物が地球を占拠しようとして自分達が戦ってるって言ったところか。
「モビルドール系のヤツが暴走したのか。それとも、ELS的な宇宙からやって来たのか…」
廃墟の様子、ご遺体の状況から見て占拠されてからそれほど日は経ってなさそうだ。
分からないが敵の数もそんなに多くなさそうだ。
盆地にあるやや田舎だから、目の前にある施設を潰したから用済みと言ったところか。
(とにかく中を確認しよう)
人類が生きているのなら合流したい。
何か手がかりがないかと期待を膨らませながら眠りにつく。
ーー
下水道を経由して勘で通風坑を抜ければ綺麗な部屋にたどり着く。
出来るだけ音を立てないように床に着地すると今までの廃墟とは比べ物にならない綺麗な状態の部屋や廊下が広がっていた。
「すげぇ」
敵の図体がデカイから入れなくて諦めたのだろうか。
誰かがこっそり作った設備なのだろうか。無事な所はそれほど広くはない。
だが奥には小さな工房のようなものがあり、電気も稼働している。
「暮らせるわ。これ」
かなりの数が揃っている工房に綺麗な部屋、エリア全体がかなり質の高い防音設備に覆われているため音漏れの必要はない。
「え、水道も使えるじゃん」
家主は避難したのか居ないがありがたく使わせてもらう。慣れない女体に苦戦しながら3日ぶり?のシャワーを浴びるとスッキリした気持ちになり、綺麗なベットで眠る。
精神的に回復したのか元気一杯になっていた。
「ここが俺のエデンだったわ」
しばらく休んでいると知らない天井を眺めながら考える。
世界は絶望的な状況だ。もしかしたら人類はもう居ないかもしれない。だが本能が囁くのだ、敵を倒せと。
そんな衝動は強くなり、戦うのは必須だろう。どうせ戦うなら泣きながらは嫌だ。絶望して泣きながら戦って死ぬのは嫌だ。
せっかく強い体に生まれ変わった。なんか知識も沢山ある。ならそれを活用して楽しく戦えば良いじゃないか。
「そうだよ。俺は今から最高の人生を歩むんだ」
夢が叶えられるじゃないか。前世と言ったら良いのか分からないが俺はあった。
叶えられないと分かってた夢が。
流石にガンダム世界には行けなかったが憧れのモビルスーツ武器を作ろう。これを造ろうと思えば知識が沸いてくる。そして目の前には工房がある。
そう、俺こそがガンダムになるのだ。
人類を救うガンダムになろう。
「俺が、俺こそがガンダムだ!」