第16話 俺を見ろ

───俺が悪い?笑わせんなや。


玄関先で、オヤジとオフクロが慌てふためいてた。けどな、俺からすれば当然の流れやったんや。

向かいのガキどもが、笑いながら手ぇ振っとったろ?あれ、完全に俺に気があるサインやん。女ってのはそういう生き物なんや。俺が動けば、絶対に惹かれる。だから俺は動いただけや。


「順平やめろ!」

「何してんの!」


うるせえ声が飛んできたけど、俺の耳には届かん。俺が選ばれるのは当たり前。尊敬されるべき存在は俺や。オヤジもオフクロも、ほんまは俺に感謝すべきやのに。自分らの息子がモテてるんやぞ?誇らしいと思わんのか。


女の子らは震えとったけど、それは照れ隠しや。小学生でもそういう感情は持っとる。俺は正直に言っただけやのに、何を怯える必要があるんや。

「嫉妬しとるんやろ?アンチどもと同じや」

心の中でそう呟いた。


押さえつけようとしてきたオヤジの手を振り払ったとき、気分は爽快やった。──見ろよ、この俺の力。もう誰も逆らえん。オヤジもオフクロも倒れ込んで、情けない顔さらしとるやんけ。

その瞬間、俺は確信した。俺は被害者なんや。今まで散々縛られて、笑われてきた。けど、本当は俺が一番強い。尊敬されるべき存在やのに、周りが認めんだけや。


ガキどもが泣き出した時も、俺の中では「勝った」と思った。泣くってことは、感情を動かされたってことや。つまり俺は影響力がある。俺は特別なんや。


オヤジは必死で叫んでた。「誰か止めてくれ!」ってな。けど、笑える話や。止められるもんなら止めてみろってんや。

──案の定、近所の奴が殴りかかってきて、俺は地面に叩きつけられたけどな。


その時に出た俺の言葉は自然と口から出た。

「俺は悪くない!お前らに責任があるんや!」


そうやろ?俺が悪いんじゃない。周りが理解せんのが悪いんや。俺を持ち上げて、俺を尊敬して、俺を一番に扱えばこんなこと起きん。

結局、全部他人のせいや。


地面に押さえつけられても、俺の心は折れん。むしろ誇らしい。──だってな、俺ほど注目浴びとる人間、おらんやろ?


業人?

そんなもんおらん。おるとしたら、この世界を理解せん周りの奴ら全部や。

俺を縛りつけて否定してくるアンチ共、それこそが妖怪や。


───俺は被害者であり、そして選ばれし者や。


誰も認めんでも、俺だけはそう信じとる。

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