どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
誰かSEKIROとゼンゼロのクロス書いてくれないかな…まだ1週目しか終わらせてない私には書けないんだ…
ジェーンって回避三回できるんですね。お前も狩人にならないか?
狩人の頭は煮え滾っていた。
この女、やけに身のこなしが軽い。攻撃という攻撃、そのことごとくが避けられてしまうのだ。狩人は、水と戦っているような錯覚さえ覚えた。
ステップで距離を詰め、怒りと膂力のままに車輪を振り下ろす。
だが手のひらに伝わってくるのは肉が潰れ骨の砕ける柔らかな感触ではなく、硬いコンクリートに響いて返ってくる衝撃のみであった。
マントのようにひらりと身を捩り、すれ違いざま、ジェーンは狩人の脇腹にナイフを滑らせる。怯んだ隙に、尻尾に握った一本で背中にもう一撃。その顔はにんまりと挑発的な笑みを浮かべていた。
「さっきから売女売女って……アンタにそんな事言われる筋合いはないわよ……?」
笑い混じりに挑発を飛ばされ怒りに脳を支配されるのをなんとか堪える。
分厚い真っ白な装束は、気づけば至る所が赤に染まっていた。
避けられては、一撃。その一つ一つは軽いことこの上ないが、しっかりとダメージを蓄積させてくるのだ。
少しだけ。少しだけだが、自分と似ているな。自身の戦法のうざったらしさを噛み締めながら、散弾銃で牽制。当然これも躱される。
必死に車輪を振り回しながら、狩人はあれかこれかと策を巡らせていた。
せめて、前が見えれば。この馬鹿にでかい三角頭を外そうかとも思ったが、それではなんだか負けた気がする。
「アンタは狩られる側……」
突然、殺気が膨れ上がった。導きの光も見えなくなった。
慌ててその場でローリングを繰り返す狩人。困った時はこれに限る。
瞬間、四方八方からの斬撃。相手は一人だが、その圧倒的な速度が狩人の感覚に追いついていないのだ。
まるで、斬撃の網に閉じ込められた様だ。死の網からなんとか抜け出す頃には、その装束はボロ雑巾さながらとなっていた。
こうなっては仕方が無い。スピード勝負というのならこちらにも策がある。狩人は、ゆっくりとポケットへ手を伸ばした。
「今なら降参させてあげるけど……どうするかはアンタ次第」
「そうか。なら良かった」
狩人の右手が取り出したのは、一本の枯れ果てた、骨。指を弾くように擦ると、狩人の身体が白い気に覆われた。
「搦め手ってわけ? あいにく、アタシもそういうのはす〜っごく得意なの」
余裕を見せるジェーンだが、狩人がただの車輪の筈のそれをどういうことか「展開」すると顔つきを変えた。
開かれた隙間からは夥しい量の何か、悍ましいそれが湯水の如く噴き出し、纏わりついていた。
ジェーンが息を呑む。あんな悍ましいものは見たことが無い。まず間違いなく、この世に存在していて良い物体ではない。
「今だっ、セスっ」
「──っ!?」
咄嗟に振り向き
気づけば、狩人は彼女の眼前に迫っていた。数コンマ秒前まで五メートルは離れていたというのに、である。
脳が情報を処理し終え、いざ回避せよと伝達信号が送られるより先に、回転する車輪がジェーンの腹部を打ち付けた。
あまりの衝撃に吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられるジェーン。打たれた所は、その冒涜的な何かによって更に蝕まれていった。
「鼠よ、卑怯とは言うまいな」
なんだ。何が起きた。ジェーンの脳内をありとあらゆる情報が駆け巡る。そして達した、一つの結論。
分からない。他に何も分からないが、少なくともあの男が超速で動けるようになったのだけは確かだ。ジェーンがなんとか立ち上がり、ナイフを構える。
四メートルと少しの距離をあけ、お互いに静止する。無限にすら思えるほどの”一瞬”が流れた。
先に動いたのは、狩人の方だった。「加速」の業を一時的に得た彼はそのステップによりほんの一瞬、瞬き一回程の時間、白い煙の軌道のみを残し世界から”消える”のだ。
ジェーンの視界から狩人が消え、一拍置いて再出現する。咄嗟に、すれ違うように回避する。背中は壁なのだ。
だがそれでも狩人、というよりは車輪の速度は凄まじく、その回転にジェーンの左手を巻き込みかけた。
その重みでその速度は流石に些か卑怯ではないか? 心の中で舌打ちを決めながら、攻勢に出る。
ジェーンにはなんとなく狩人の目論見が読めていた。この男、このままこちらの命が尽きるまで攻撃を畳み掛けるつもりだ。
狩人の動き出しに合わせ、その姿が消える前に脇へと一撃。急所である。
どくどくと、狩人の右脇から滝のように血が溢れた。すぐに輸血液を取り出そうとする右手にも、尻尾で追撃を入れる。
勝てる。今しかない。走り出すような体勢で、ナイフを構える。次の三連撃で仕留める。
ふと、突っ込む直前に狩人の方を見た。相手がどう動こうと、これから行う事を変えるつもりはないが。
ジェーンの視界に映った狩人は、丁度懐から何かを取り出している最中だった。
「──えっ」
数十分後。山獅子組、このギャングの首領であるレイザーは屋上でジェーンを待っていた。呼び出しをかけていたのである。
遅刻に腹を立てていると、突如階段から二人分の忙しない足音が聞こえてきた。叫び声もである。
「なんだ? 随分騒がし──」
「ひいぃぃいいいぃぃいいいいぃい!!!!!」
バァンッッッ!!!
真っ青な顔面を恐怖で引き攣らせ、壁ごと破壊しようかという勢いでドアをぶち破るジェーン。鍵がかかっていたのだが。全くアドレナリンというのは末恐ろしいものである。
「ジェーン? いったいどうし──」
バゴォンッッッ!!!
「YOU PLAGUE-RIDDEN RAT!!!」
下瞼にたっぷりと涙を溜め込んだ彼女に遅れて壁をぶち破りながら飛び込んできたのは、素っ裸に黄金三角頭の変態。血に塗れた全身の内、辛うじて下半身には下着が着用されていた。
邪悪過ぎる形をした、巨大な……槌、なのだろうか。真っ赤なそれをひたすらに地面に叩きつけながら、執念深く彼女のことを追いかけ回していたのである。
一瞬でレイザーの巨体とすれ違うジェーン。ぴんと背筋を伸ばした信じられない程綺麗なランニングフォームにレイザーは思わず見惚れてしまった。
びたん。前も見えぬまま突っ込んでくる変態をレイザーが横から思い切り殴りつけると、変態はそのまま壁まで吹き飛ばされて気絶してしまった。元より瀕死だったのだ、当然の結果であろう。
レイザーが振り返って見ると、ジェーンは膝に手を付きゼエゼエと肩で荒い息をしていた。黒のインナーに加えて鼠色のジャケットまで汗でびしょびしょと、まさに「へとへと」という感じである。
近くに居た部下達が手早く狩人を縛り付けると、二人に対し簡単な事情聴取が始まった。水をもらい途切れ途切れに答えるジェーン。上げた顔までびしょぬれである。
「い……いきなり……ゼェ……服を……脱いだと……ゼェ……ゼェ……思ったら……お、お腹を……ゼェ……お腹を……」
その日の内に、こっそり抜け出そうとしたセスも捕まった。ギャング一人を連れて。なんでも、彼の高潔な魂に心を打たれたのだそうだ。
時は夜。場は屋上。セス、ギャング、狩人の三人が拘束され、他のギャング達に囲まれていた。狩人だけはミイラが如く簀巻きにされていた。順に処刑されるのだという。
ジェーンの細い腕が、動けないギャングへと伸ばされる。首根っこを掴まれてなお、彼の心は変わっていない様だ。
「やめろっ!! 殺るなら──」
「私だ。私を殺せ」
狩人がぼそりと口を開いた。狐につままれたような顔で狩人を見つめるセス。ぽかんと口を開けるその顔の後ろには、どういうわけか小さな宇宙が展開されていた。
私をなんだと思っているのだ。心の中で悪態をつきながら、ギャングの首を掴むジェーンを睨みつける。掴まれた彼は宙ぶらりんとなっており、その下は奈落であった。
「最期に言い遺すことはある?」
「俺は……人生をやりなおす……!」
ほんのすこしだけ、ジェーンは微笑んだ。彼女の左手が握られる。
「そうね、できるわ」
「やめろおおおっっ!!」
セスの慟哭も虚しく、鳩尾を殴り飛ばされギャングは奈落の底へと落ちていった。力無くうなだれるセスの顔からは、ぽたぽたと涙が落ちていた。
やはり死ぬのか。狩人はことここに至って彼への感情は薄かった。助けられるならそうしてやりたいが、如何せん数分前まで顔も知らなかった大の男、ギャングの一員である。
次はこの男か。殆ど話はしなかったが、死ぬには如何せん優しすぎる男であった。あるいは、優しすぎるから死ぬのだろうか。
「待って」
レイザーの巨大な拳が振り下ろされる瞬間、ジェーンが水を差した。何事かと皆が視線を向ける。
彼女が語るに、翌日、彼と決闘を行いたいのだという。昇進の為である。
狩人の処刑も明日へと引き延ばされた。セスが負ければ、狩人も殺されるという寸法である。どの道殺す癖によくも言えたものだ。
狩人は今一度、ジェーンとレイザーの顔を確認し、その記憶に焼き付けた。
殺す。セスの尊厳と子供の為に。
ジェーンがスパイであること、ギャングを突き落とした先にホロウの外へと繋がる「裂け目」があることなど、狩人には知る由もなかった。
そのまま人質の部屋へと投げ入れられると、失敗を確信した人質達の間に絶望が充満した。至る所から啜り泣く声が聞こえてくる。
脱出の手立てもなく、翌日。屋上で磔にされた狩人の下には、これでもかというほどの角材が載せられていた。ガソリンもである。
ヤーナム葬か。猿轡をされているので喋れはしないが、趣味の悪いことだと呆れ果てた。
少し先で縛られているセスの藻掻く様を眺めていると、すぐにジェーンはやってきた。少し怪我をしているようだが。
突然、ジェーンが身を捩る。同時に、彼女の背中からバールが振り下ろされた。山獅子組の一員である。
右腕を使えなくするつもりだったのだという彼に、ジェーンが問い詰める。
「こんなことしちゃって……どう責任をとるつもりなの?」
「その必要はない」
一員の代わりに、レイザーが答える。ジェーンが振り向く間もなく、彼の拳がその腹へと捩じ込まれた。この場合、あくまで比喩的な意味ではあるが。
「お前はセスとの決闘に負けろ。その後で、俺が奴を仕留める」
吹き飛ばされたジェーンに続けるレイザー。権力欲しさに仲間割れか。ヤーナムでも中々見れない光景であると狩人は目を凝らした。
下らない、と突然ジェーンが笑い出す。そんな馬鹿馬鹿しいことのために、ここまでするのか。心の底からの嘲りであった。
もう良いとレイザーが拳を振り上げたその時。セスの屈強な身体が、彼を横から突き飛ばした。へたり込んだジェーンがきょとんと目を丸くする。
「俺は、ズルが大っ嫌いだ……散々見たし、耐えてもきた……!」
後ろ手に縛られたまま、セスがレイザーへと声を張り上げる。
その瞳は、決意と正義に満ちていた。
狩人のセリフ(英語)はヤーナムの群衆から取ってきました。別にジェーンが嫌いなわけではないです。寧ろ好き。いつも他人を手玉に取ってるのにセスくんの直球火の玉ピュアピュアストレートすぎる気持ちの伝え方されて思わず動揺してしまえ。