どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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本来はおまけを載せる予定でしたが、内容がR-18Gだったので即刻別枠のR-18小説に移行させました。あんなものを無差別に公開してしまって本当に申し訳ない。(一応あらすじにリンク載せてますが、18歳未満の方は絶対に閲覧しないで下さい。万が一、興味があってもです。)

そういうわけでいきなり治安局編、正確に言えばネズミ色のブルース編です。改めて、本当に申し訳ない。



(夢を)犯される青衣

 ブリンガーの一件の遥か前、パールマンによる街の爆破事件が起きた数日後のこと。狩人はホロウ探索を嗜んでいた。

 

 金が欲しいのならばヤーナムの硬貨を換金するのが最も手っ取り早い方法なのだが、狩人がホロウに潜るのは単純に「未知の発見と探索の悦び」の為であった。

 

 ある程度ホロウ内での活動、特にエーテリアスや野盗との戦い方に慣れを感じてきていた狩人は、気分転換に服装を変えていた。

 

 トップハットを乗せた頭を下げれば、血を払う短いマントのついた狩人衣装。左手には愛銃エヴェリンを携え、その右手には一本の杖が握られていた。

 

 狩人は、この格好がお気に入りであった。血と糞と臓物に塗れた繰り返される悪夢の中で、いやだからこそと上品ぶるのが心の支えだった時期があるのだ。

 

 それに、村の生き残り、掃いて捨てられるような貧民風情が貴族の真似事をするという皮肉を込めた優越感に浸ることもできる。ほんの少しの嘲りと共に。

 

 そんなある日の、ある午前のこと。狩人がなぜかそのへんの民家に鎮座していた物々しい宝箱を漁っていると、ふと、声。

 

 複数の激しい怒鳴り声に金属のぶつかり合う音などが混じったそれを鑑みるに、恐らくだが平和主義者の集まりでは無いのだろう。

 

 好奇心が湧いた狩人は、すぐ近く、メートル法に則って表すならば五十と少し程であろうかという場所から鳴り響くそれの正体を見物しにいくことにした。

 

 死んだ方から身ぐるみを剥ぎ、勝者の方も主観的に見てろくでなし、かつ弱そうなら殺して血の遺志にでもしよう。

 ゴミクズのような思考で覗いた光景は、しかし意外なものだった。

 

 二つの勢力が、争っていた。片方はよく見る野盗達であり、特筆すべきことは無い。だが、問題はその相手、もう一方の方であった。

 

 身なりを見るに、治安局の者。やけにピチピチなふざけた格好をした女──おそらく変態──と仕込み杖の要領で分裂する棒を操る小女、そしてやけにガタイの良い猫男の三人からなっていた。

 

 見るからに強者の為「殺して奪う」という発想は消え去った狩人。

 

「これでひとまずは全員でしょうか」

 

「いや、まだであるぞ。用心せい、朱鳶。まだ、一人残っておる」

 

 盾で戦いに挑むなどと。少しの嘲笑を心に秘めたまま物陰から眺めていると、気配を察知されてしまった。

 

「誰だっ! 出てこいっ!」

 

 猫男が声を張り上げる。もはやこれ以上の隠密は難しく、かつ意味が薄いと判断した狩人がゆっくりと物陰から姿を現す。

 

「どうも、ごきげんよう。狩人という者だ。敵意は無い」

 

 柔らかな笑顔を浮かべ、左手でトップハットを軽く持ち上げる。視線の先には、──あくまで狩人の主観の上での──変態と、小女が居た。

 

「狩人……? ……っ! いや、そんなっ、まさかっ……!」

 

 はっと変態が目を見開いた。随分と古臭い口調で何があったのかと聞く小女に、変態──朱鳶と呼ぶらしい。以後、彼女の尊厳の為に名前か一般代名詞で表すことにする──が答える。

 

「狩人というのは、大量殺人及び6課への危害行為の容疑がかけられている男が自称していた名です! 本人は死亡が確認された筈ですが……」

 

 どうやら不味いことになったようだ。この街に来て初めての日、野盗を殺して回ったことは立派な犯罪として認識されていたようだ。

 

「大まかな服装も武器も違いますが、マントを除けばコートの特徴は一致します!」

 

 猫男が武器を構える。刃のついた盾に警棒を突き刺し、大剣へと変貌させていた。大分不味いぞ。なんとかして誤解を解かねば。

 

「待て、待て。あれは致し方のないこと、自らの命を守る為に行ったことだ。それで私を罰するというのは、ああ、酷い誤解、筋違いというものだよ」

 

「その言葉……あなたが犯人だと肯定しているとみて良いのですね?」

 

 終わった。咄嗟に銃を向け、発砲。道の空いている方向へ全速力で走り出すと、全員恐ろしい速度で追ってきた。

 

「直ちに抵抗を止めなさい! さもなくば発砲します!」

 

 やけにごつごつとした大きな銃を構えたのは朱鳶。その先端には黒い球体、ブラックホールの様なものが生まれていた。

 

 それ本当に人に使っていいものなのか。慌てふためく狩人に向かい、その黒球は飛んできた。

 躱すことは簡単だったが、明らかに非殺傷武器の火力ではない。

 

 ほっと息をつく暇もなく、猫男の急襲。エヴェリンを放つも、盾で簡単に防がれてしまった。

 距離を詰めると、男は高速で警棒を振り回した。雷光を帯びている。

 

 杖の本領を発揮しようとこちらが少し引くと、男は盾に警棒を突き刺し、聖剣擬きさながらの機構で大剣を作り出した。

 

 サイズに見合わず軽々と振り回される大剣の迫力に、狩人の全身は粟立った。流石は獣、膂力が桁違いである。

 

 負けじと、狩人も杖を変形させた。硬質の杖は捻れながら幾つもの刃に別れ、それぞれが伸縮するワイヤーで繋がっていた。

 

 獣に対し鞭を振るうは様式美である。相手の間合いから脱出したことを確認すると、その刃塗れの鞭を思い切り振り回した。

 

「ぐぅっ! ちょこまかとっ……!」

 

 距離を詰められないよう狩人にしては珍しく後方への回避を繰り返しながら、ひたすら間合いの外から切りつける。

 

 気分の高揚を感じてきたその時、しかし脇腹に三節棍が食い込んだ。怯んだ隙に、大剣に殴られ吹き飛ばされる。

 

 やはり多対一は好かんな。己の目的があくまで逃走にあることを思い出しながら、もう一度鞭を構える。

 

 小女が三節棍を振り回す速度は明らかに異常と呼べるものであり、彼女がそれは獣どころか、生命であることすら怪しく感じる程であった。

 

 バチバチと雷光を滾らせながら全方位に繰り出されるそれは、そのあまりに多い残像により狩人の目に青いドームを幻視させた。

 

 が、自棄気味になった狩人が遠間から鞭を振るうと、彼女の三節棍と滅茶苦茶に絡まり合いお互い武器を捨てることとなってしまった。

 

 即座にインファイトへと切り替える二人。猫男や朱鳶だとかの邪魔が入らぬよう早々に終わらせなくては。狩人の右手が開かれる。

 

 極端に精密なフォームの正拳突きを躱し、その小さな首元にアイエッとカリウド=チョップを繰り出すと、しかし狩人の手の方が丸めた紙のように破壊されてしまった。

 なんたる頑強さか。まるで、機械の様な──。

 

 激痛に狩人が思わず怯むと、小女はここぞとばかりに飛びついてきた。押し倒され、顔が近づく。

 今だ、と狩人は小女の頭を掴み、至近距離へと引き寄せる。

 

 そのまま、瞳の中に”宇宙”を展開する。息を呑んだかと思うと尋常ではない力で引き剥がそうとしてきたが、こちらからも顔を近づけ死に物狂いでへばりつく。

 

 ふっと小女の身体から力が抜けるのを感じると同時に、猫男の大剣に吹き飛ばされた。肋骨は折れただろうが、幸い肺には刺さっていない様だ。

 

 こちらが動けなくなるのを確認する猫男を横目に、血相を変えて小女に走り寄る朱鳶。皆が青衣(チンイー)と叫ぶのを聞いて、ようやく名前を知った。

 

「お前、青衣先輩に一体何をした!」

 

 怒りと不安のままに怒鳴る猫男の後ろでは、朱鳶が名前を呼びながら必死に青衣を揺さぶっていた。

 

「あばばばっばばばばばば」

 

「先輩! 先輩!」

 

 電力を過剰供給された玩具のようにガタガタと小刻みに痙攣する青衣。それを見た狩人には、一つの好奇心が湧いてしまった。

 

 機械でも、発狂は出来るのだろうか。彼女の目の雰囲気は、あえて最も近しいものを挙げるならば、人形ちゃんのそれだったのだ。

 

 当然だが、人形ちゃんを発狂させる事に成功した試しは無く、そもそも試した事も無い。傷つけられるわけが無いだろう。

 

 今の所、身体から槍が生えたり全身から出血している様には見えないが。猫男の声も無視しじっくりと青衣を眺めていると、突然彼女の痙攣とうわ言が止まった。

 

 白目を剥いていた目玉に緑色のそれが再び宿ると、すぐさま朱鳶が安否を確認する。

 

「青衣先輩! 無事ですか!」

 

「うむ。我、至って平穏なれば」

 

 どっと脱力する朱鳶だったが、すぐにまだその時では無いと思い知ることとなった。

 

 朱鳶にとって、猫男にとっても何の変哲も無い「いつもの顔」の青衣に、何をされたのかと朱鳶が問う。それですぐに分かったのだ。

 

「そう慌てるでない、朱鳶よ。必ずしも泥棒が悪いとは、お地蔵さまも言わなかったぞ」

 

「……はい?」

 

 朱鳶の脳に、渦が走った。普段から理解し難い難解な言い回しを好んでいた青衣だったが、今回は「何か」が違う。

 

「そもそも論を申せば、ダムの底にて育まれしウグイス嬢が湿度九割のカーテンコールを拒むは、致し方なき流れであろうて」

 

「青衣、先輩……? 本当に、何を仰っているんですか?」

 

 違和感の正体に気が付いた。放たれる言葉に、一切の意味を見出だせないのだ。あるいは、もとより存在しないのか。

 

 美麗な顔面からさあっと血の気を引かせる朱鳶を置いて、青衣の思考は悍ましい程甘美な狂乱に犯されていった。

 

「瞳が開いたのだ、朱鳶よ……それもまた、冷蔵庫の背面から。いや、それは瞳の形をした脳だったのかもしれぬが……いずれにせよ、ミミズクたちは見ていたぞ。アルミホイルの夢を擦りながら、軟体生物たちは階段の隙間から這い上がってきたのだ。ああ、たしかに、昨晩のコンセントから……!」

 

「先輩! 先輩! 青衣先輩!」

 

 下瞼にたっぷりと恐怖の涙を浮かべながら、平然として嘯く青衣の肩を揺さぶっていた。その焦燥ぶりは、もはやどちらが狂っているのか分からぬ程であった。

 

 明らかな異常。それにも関わらず、彼女自身の顔は平静としているのだ。まるで、こちらがおかしいとでも言うように。

 

 殴られた衝撃が遅れてやってきた。浴びた雷光もだ。だんだんと、意識が遠のいてゆく。

 死ぬ時のそれとは、また違う。ヤーナムで麻袋を持った大男に連れ去られる時のそれと似ている。

 

「思い知れい! 三角定規たちの肝臓を!」

 

 いよいよ声を張り上げ始めた青衣を前にパニックに陥る二人を眺めながら、狩人の意識は微睡みに似たそれの中へと沈んでいった。

 ……目覚めた時には、後ろ手に縛られた状態で建物の中に居たのだが。

 

 約一時間二十四分後に青衣が突然正気を取り戻すまで、機械仕掛けの狂気にじわじわと正気を削られていく二人であった。




「パプリカ」良いですよね。大好きな映画です。パレードのシーンはきっと一生忘れることは無いと思います。

パプリカ構文は辞書をパラパラ引いて出てきた単語を適当に並べて作りました。瞳とか軟体生物とかはわざと入れましたが。

青衣さんの口調全くわからん。すまんね。
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