どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
因みにこの世界での英語についてですが、「存在はするけど話せる人は少ない(日本と大体同じ)」という体で進めることにしました。だってゲーム本編でライカンさんが喋ってたし(確か)…
一応最初の回でのニコの発言とも矛盾しない…はず。
「うわ~、凄い食いっぷり……物理的におかしくない、それ?」
狩人は蒼角と並んで暴食を決め込んでいた。何かを食べ終えるなり皿や入れ物を積み上げていくおかげで、テーブルの上にはピザの斜塔が出来上がっていた。
狩人達の滑稽な姿に大声を上げて笑う悠真。そうだ、と思い出した様に雅を見やると、ハムスターが如く口いっぱいにメロンを詰め込んでいた。
「約束の品がまだだったな」
「……! ああ、
途端に耳の動きが増える雅。メロンを飲み込み終わるのを待ってから、先程夢から調達したスペアの仕掛け武器たちを取り出す。もちろん全て無強化だ。
「……気絶はしないでくれるな」
「ああ、分かっている」
そう言いながらも、差し出された千景を受け取る腕はぶるぶると震えていた。鞘に入ったそれを、これでもかと眺めていた。
「おお……これが……」
鞘から持ち手へ、じっくりと愛撫をかけると、その洋風の拵えが施された柄を握りしめる。雅が恐る恐る鞘を抜くと、現れたのは研ぎ澄まされた美麗な刀身。
思わず、その場で軽く振ってみる雅。ひゅんひゅんと鳴る風切り音に、雅の心は湧き上がった。ふと、その刀身が狩人へと向いた。
「……まさかとは思うが、試し斬りは勘弁してくれたまえよ」
「安心しろ。向けてみただけだ」
舐め回すように刀身を見つめる雅。薄く反ったその刀身には、意味ありげな波紋が張り巡らされていた。
「妖刀というからには、この紋様にも何か意味があるのか」
刀身中に彫り込まれた滑らかな溝を指でなぞりながら雅が聞くと、鋭いなと狩人が答えた。
「ああ。その波紋に己の血を這わせると、刀が力を増す。瞬く間に生命が削られていくので、おすすめはしないがな」
それこそ、不死人か多血症でもない限りは。ゴミの様なヤーナムジョークを無視しながら、雅が頷いた。
指を切らない様忠告されながら、ゆっくりと納刀。この刀、鞘に入れたままでも少し刃が露出するのだ。素晴らしい。その一言が、雅の感想であった。
「他にもあるのだろう。見せろ」
「そう慌てるな。一つずつだ」
その後も暫く、瞳を輝かせぱたぱたと耳を動かす雅に武器を見せていた。その中でもパイルハンマーは特に好評で、複雑な機構を見せつけるとまた鼻血を垂らし始めた。
落葉や千景、東洋系統の武器はなんとなく気に入るだろうとは勘付いていたが、まさかパイルの魅力まで分かるとは。狩人は、彼女と少し心が通じ合った気がした。
手渡されたハンカチで鼻を拭うと、礼をさせろと雅が言った。
元々礼など求めていなかった、というよりはあの事を水に流してもらうのが礼だと思っていたので困惑した。
だが、何かを貰えるならどこまでも図々しくなるのが狩人というものである。
「そうか……なら、その肩のバッジをくれないか」
狩人が指差した先にあったのは、6課が6課であることを示す、金属製のバッジ。狩人証の様なものだと踏んだのだ。
「こんなもので良いのなら、構わない。本部に予備もあることだしな」
肩に付けていたそれを取り外し狩人の手のひらに乗せると、それはそのまま彼の懐へ収められた。
結局一人で全てを持ち帰ることは出来ないので、6課の所属する組織H.A.N.D.の社用車に乗せることになった。
歓喜に打ち震える雅を連れて、再び席へと戻った。
「それで、どこまで話したかな」
「えっとぉ……確か、結局不死身なのか〜って僕が聞いたとこまでだね」
思い出した。質問に答えようとした時に丁度料理が運ばれてきたのだ。一時的にとはいえ魚介類恐怖症が治る程美味いピラフに病みつきになっていたというわけだ。
柳の膝の上に座る蒼角の口元に片手でピザを運びながら、狩人が答える。
「ああ、不死だとも」
テーブル中に動揺が走った。意味が良くわかっていない蒼角は幸せそうにピザを頬張っていた。
見たことのある流れに頭痛を覚えつつ、不死になった経緯について説明した。尤も、狩人自身全てを知っているわけでは無いのでちぐはぐとしたものであったが。
「どうした、悠真。貴公を傷付ける様な事を言ってしまったか」
「全然。ただ……いや、やっぱりなんでもないや」
腕を組んだまま、浮かない顔をした悠真が目をそらす。狩人の口から「医療」や「輸血」、「獣の病」といった言葉が飛び出してからというものずっとこの調子なのだ。
確かに聞いていてあまり気分の良い話では無いのだろう。雅どころか蒼角でさえ場の重さを感じ取り静まり返っているのだ。
だがそれにしても彼の反応は異常であった。うっすらと怒りを孕んだその顔は、まるで当事者のような──。
止しておこう。あの顔の理由は、恐らく進んで語りたいものではないだろう。それに、下手に秘密を探ると碌な事がないのだ。
「……それで、お前は我々のことを、人間達のことをどう思っているのだ」
突然、雅が口を開いた。なんてことを聞くのだと皆が窘めるより先に、軽く笑いながら狩人が答える。
「失礼な奴だな。私も、元は人だぞ」
狩人は近くにあったウイスキーの小さなカップを持ち上げると、ぐい、と一口で飲み干した。焼けるような感覚が喉を伝う。
「……赤の他人に、特別どうのこうのという思いは無い。貴公らも同じであろう。貴公らのことは良き友人だと思っているし、願ってもいる」
本心からの言葉であった。それが伝わったのだろう。ゆっくりと、雅が立ち上がった。
「そうか。なら、問題無い。お前は我らの友だ」
雅が手を差し伸べる。握手を求められていると気付くのには少し時間を要した。
それは良かったと固い握手を交わす。再び席につくと、いつの間にか陰鬱な空気は消えていた。
丁度、新しい皿が運ばれてきた。乗せられているのは、それはそれは大きな苺ケーキ。間違いなく蒼角のものだろう。
「蒼角、貴公のもので合っているな」
「うん、みんなで食べよ!」
良いのか。狩人が聞くと、当たり前だと蒼角が答えた。どこまでも純粋なその笑顔が輝いていた。
一つの食べ物を分け合って食べるなど、いつぶりであろうか。こみ上げる気持ちを堪えながら、狩人はケーキを切り分けていった。
人生で一番甘いケーキを食べ終えると、狩人は少し散歩することにした。すぐに戻ると伝え、席を離れる。
塩辛い海の匂いを浴びながら人を探していると、見覚えのある影が狩人の目に映った。
「あれは……アキラと……リンか。一体何を……」
数時間後、アキラとリンはホロウ内に居た。その目の前には、ブリンガーの、腕。
腕だけに成り果てて尚知能のあるそれがようやく正気を取り戻すと、すぐに兄妹を視認した。
「答えろ! お前らは、先生を何処へやったんだ!」
小さな腕、目玉塗れのそれを蹴飛ばしながら、アキラが問い詰める。
その言葉に反応したブリンガーが、嘲る様に言葉を返す。
「『先生』……? そうか、貴様ら、あいつらの……ならばっ!!」
真っ白なその腕が、突如光を放ち始めた。自爆をしようとしているのだと兄妹はすぐに気付いた。逃げようとするも、間に合わないのは明白であった。
「主よ、再創を──」
ぶちゅんっ。
暫く経っても自分達が生きていることに気づき兄妹が視線を上げると、不機嫌な様子の狩人が居た。
「
ぶつぶつと呟きながら、虫を潰す様にぐりぐりとブリンガーの居た場所をブーツで踏みにじっていた。満足した様子で狩人が顔を上げると、ようやく兄妹に気が付いた。
「危ないだろう、こんな所で。港へ戻るぞ」
ぶっきらぼうに、狩人が吐き捨てた。数秒の硬直の後、兄妹は頷いてホロウを脱出した。
「すまない、すぐに戻るつもりだったのだがな。少し用事が長引いてしまった」
席につく狩人。もう皆腹が一杯の様で、蒼角だけが次から次へと食べ物を口へ放り込んでいた。そろそろお開きの様だ。
連絡先だけ交換し、6課の皆とも別れた。千景の扱いには気を付けろ、何か起こればすぐに手を離せ、と改めて雅に念を押しておいた。
港へ戻ると、丁度狩人の視界に再会を諦めかけていた者が映った。席を外した元々の理由である。
名前を呼ぶと、一瞬うろちょろとした後こちらを視認するやいなや、その小さな身体を小刻みなリズムで縦に揺らしながら駆け寄ってきた。
「狩人さんっ!」
「カリン。良かった、無事だったか」
目を細くし満面の笑みを浮かべるカリンを、片膝をついて受け止める。そのままの勢いで抱き上げると、小さな身体は軽々と持ち上がった。
脇を持ち上げられ足をぷらんとさせたまま、カリンは笑っていた。再会の感動に浸っていると、聞き慣れた言語で話しかけられた。
「It has indeed been some time, my liege」
「……What……?」
突然の母国語に目を丸くする狩人に、言語を変えぬままライカンが続ける。
「英語を母語とする、と耳にしましたので。お気を悪くされた様なら謝罪致します」
「いや、まさか。こちらの言葉を話せる者がいるとは思ってもみなかったものでな。嬉しいよ」
困惑が、笑みに変わった。こちらにもこの言語は存在するのか。文字だけだと思っていた狩人は衝撃を受けた。軽い世間話などをし始めたその時、腕の先から消え入るような声がした。
「うぅ……」
ゴリゴリの
お互いの安否を確認し改めて胸を撫で下ろすと、さっそくノコギリを取り出した。
「羽目を外すぞっ」
「はいっ!」
こほん、と背後から聞こえた咳払い。駄目か、と落ち込むカリンに、しかしライカンは柔らかく微笑んだ。
「怪我はしないように」
「……! はい!!」
爆速で海まで駆け抜ける。スピードを活かして回転ノコギリで海の上を走るデス水上バイクなどをして遊び呆ける狩人達を背に、明るい夜は更けていった。