どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
「ハァ……ハァ……感謝する……ハァ……如何せん、犬は苦手でな……」
「はいはい、どーいたしまして。ふふっ、あんなに強いのに、ハティには負けちゃうんだ……」
ざぁ〜こ♡。そう、囁かれた気がした。……本当に気の所為だったようだ。そろそろ啓蒙を下げねばな。
ビルの中枢に辿りついた。良くわからない巨大な機械をイアスが弄り、パールマンの居場所を突き止める。すぐ近くだ。
瞬間、ビープ音が鳴り響いた。あまりの音量に思わず耳を塞ぐ狩人。
「随分と個性的な音楽だな。私の耳には合わん」
「違うよ、狩人! これは時限爆弾のカウントダウンだ! 急いで脱出しないと、巻き込まれるぞ!」
アキラの言葉に、全員が血相を変える。パールマンは出口までの道に居るらしい。急いで階段を駆け上がる。
「うわああ! やめろぉ! 私はまだ死にたくないいぃぃ!!」
情けない声で叫ぶパールマンを、狩人が抱き抱える。相変わらず小さな男だ。
すぐに出口へと辿り着いた。ホロウの裂け目か。
「ここを抜ければ良いのか」
「うーん……その筈なんだが……」
アキラの口調が濁った。理由を聞くまでもなく、彼の方から口を開いてもらえた。
「どうにもおかしいんだ。普通、ホロウからの出口は幾つもあるはずなのに、今回は一つとしか表示されない……何かが怪しいんだ……」
「もうすぐこの場所も爆発します! 躊躇っている暇はありません!」
覚悟を決め一足先に飛び込んだ柳に続き、皆が裂け目に足を踏み入れた。
──不味いな。目の前に広がった光景に対して、最初に浮かんだ言葉であった。
「これはこれは、なんたる偶然か……」
白々しくも話すのは、ブリンガー。パールマンの言葉が正しければ、全ての元凶。
隣に居る女にも見覚えがあった。確か、爆発する街から助け出した市民に銃を放とうとした外道。
ブリンガーが言葉を続ける。パールマンはもちろん、我々全員は彼と関わった容疑者として捕らえられるのだという。
「なにか、勘違いをしていませんか?」
既にガトリングを懐で握っていた狩人を置いて、柳が言った。勘違いとは。
「これら全ては雅課長の独断で行われた事です。私達は上司の非行を止めるべく追いかけていた。それだけのことです」
この女、何を言っている。柳の背中に導きの光が見えかけた。が、次の瞬間。
「おい、パールマン。宇宙はどこにある?」
「へ?」
「不正解だ」
突然、雅がパールマンを掴んだかと思うと、ホロウの裂け目へ一直線に投げ飛ばしてしまった。
こいつら遂に発狂したか。鎮静剤を懐で探していると、ブリンガーが声を荒げた。
「何をしている、雅!」
「質問に答えられなかった故、激昂してホロウへ投げ込んだ。これで分かっただろう。全ては私の責任だ」
「なんだと……!」
「逮捕するのならば、すると良い。私だけを、な」
ようやく、狩人にも理解が出来た。全員が捕まるのを避けるため、一番の強者、死ぬ可能性の最も少ない雅をスケープゴートにしたのだ。但し、本人の合意の上で。
直接的な言葉一つ交わさずに行われた連携に、思わず狩人は感嘆してしまった。
……死なないというのなら最適な者がここに居るだろうに、という考えは捨て置いて。
「貴様……良かろう! そこまで捕まりたいのなら……」
周りにいた兵士達が、無抵抗の雅を拘束した。歯痒い思いで、ただ見つめていた。
雅が輸送車に押し込まれると、すぐに魔の手はこちらにも向けられた。
下衆共が。即座に裂け目へ潜り、パールマンを捜索しながら逃走した。ふとイアスを見る。通信が切断されてしまっている様だ。
しかし柳の智力は凄まじいもので、あっという間に追手を振り切り、パールマンを見つけた。同時に、アキラとも連絡がついた。
アキラによれば、雅は輸送車に乗せられた後、音信不通。ブリンガーは演説の為港に居るそうだ。
それと詳しい事は分からないが、どうもブリンガーの目的は彼女自身、あるいは彼女の刀を手に入れることの様だ。
道理であの時あんな分かりやすく怪しい男*1を捕まえなかったのか、と一人合点がいった。
アキラと協力する治安官、朱鳶と青衣が協力するので、手分けして両方確保しようとの事だ。
相変わらず、頭の切れる男だな。狩人は安心から、思わず笑ってしまった。
「雅は私達が追います! 今すぐホロウを脱出しますので、ガイドをお願いできますか!」
「いや……僕達は課長を追うべきではないと思いますよ」
突然、悠真が口を挟んだ。冗談を言っているというにはあまりに真剣な眼差しであった。
「何故です! 彼女が心配ではないのですか!? もしも彼女になにかあったら、私は……」
「落ち着いて下さいってば、月城さん。僕達が居るのは、どちらかといえばブリンガー長官の近くですよ」
狩人はようやく気が付いた。この6課という集団、柳の賢さだけで回っていると思っていたが、違う。
切れ者は、一人ではない。悠真。この男の知性は柳と並んで凄まじいものだ。いつもふざけた態度をとっているものだから気が付かなかったのだ。
「ナギねえ……わ、わたしも今回だけはハルマサの言う通りかなって……こんなことめったにないんだし、たまには聞いてあげようよ?」
「……」
ぴしゃり。頬を叩く静かな音は、こだますることも無く消え入ってしまった。
「そうですね……すみません、どうかしていました。ブリンガーは私達が担当するので、雅のことは任せました!」
決意の籠もった目でイアスに告げる柳。すぐに行動が始まった。
ブリンガーの居る筈の場所へ辿り着くと、既に朱鳶達に手を回された治安局が封鎖していた。どうやら、ブリンガーはボートを使いホロウの中へ逃走した様だ。
信頼出来る別組織*2にパールマンを保護させ、さてどうしようかと思案していると、悠真が話しかけてきた。
「え〜っと……大丈夫? 嫌いな人でも居た?」
「いや、大丈夫だ……ただ、海は苦手でな……」
苦虫を噛み潰したような顔で、悠真へ返す。海には本当に碌な思い出が無いのだ。この男は大好きらしいが。
雅は後から合流すると聞くと、すぐにボートで出発した。満月が海に浮かんでいた。海を見ないよう目を閉じていたので狩人には分からなかったが。
ホロウに入って数分で、ブリンガーを見つけた。逃げようとする彼の足元に、雷光を纏う矢が突き刺さる。
「クソォッ……!!」
「今度こそ、我々と一緒に来てもらいますよ、ブリンガー長官。いや、今は『容疑者』ですか……」
くい、と柳が眼鏡を押し上げる。結局殺さないのか。少し残念に思いながらも、狩人は事態の行く末を眺めていた。
……なんか注射してないか? 気付くと同時に、ブリンガーの身体から爆風が巻き起こった。思わず吹き飛ばされる一同。
まあ、こうなるだろうな。薄々予想出来ていた展開に溜め息をつきながら起き上がると、ブリンガーは既に巨大な怪物と化していた。やはりな。
「始まりの主よ……私に再創を……!」
特に肥大化したその右腕には、大量の目玉。真っ白な肌に浮かぶ黄色い瞳が、冒涜的な悍ましさを醸し出していた。
「言葉を話すのか。化物風情が、偉そうに」
私の言えた事では無いがな。心の中で自嘲する狩人は、既に空中に浮かぶそれにノコギリを向けていた。
……こんなものなのか? 戦闘が始まって数分、狩人は肩透かしを食らった様な気分に陥っていた。
弱すぎる。6課の面々が強すぎるのもあるが、それでもだ。
狩人は空中に浮かぶそれにノコギリが届かないので悠真と共に弓を放っていた。それでも十分ダメージを与えられるのだ。
「CURRRRSE YOOOU BRINGERRRRRRRRR!!!! I HEREBY VOW!!! YOU WILL RUE THIS DAY!!!!」
「うっるさいなあ、もう……!」
狩人の咆哮に悠真は思わず耳を塞いだ。
致し方なし、というやつであろう。全ての元凶であるブリンガーに対し、狩人は純粋な憎しみしか感じていないのだから。
「BEHOLD, THE TRUE DRAKE WARRIORS!!! AND I, HUNTER!!! YOUR FEARS MADE FLESH!!!!」
まだ叫んでる。これ以上は鼓膜が危ないと踏んだ悠真だが、ブリンガーが倒れ込むとすぐにその声は止まった。
「気をつけろ。恐らくだが、まだ生きて──」
またもや、爆風。やっぱり。巨大な腕が、空中に跳ね上げられた狩人達を纏めて薙ぎ払った。飛ばされた先は、崖。
「マズイッッ!!」
イアス、もといアキラが悪態をつく。だが自由落下のスピードに反して、着地の感触は実に柔らかいものであった。そうっと、目を開いてみる。
「ご無事で何よりですわ」
「リナさんっ……!」
見渡せば、ヴィクトリア家政の皆が居た。遅れて、6課が駆けつける。柳が口を開いた。
「面識が?」
「うん、けど……」
イアスが柳の後ろを指さす。振り返った柳の視界に映るのは、地面から延びる巨大な腕。これを操るブリンガーも、近くにいるのだろう。
「積もる話は後ですね」
柳が構えると、6課の面々は勿論、家政まで構えた。手を貸してくれる様だ。
柳が激戦を繰り広げる中、狩人はようやくホロウ内へと戻った。死んだのである。
死因は高所からの落下。即死である。
6課とアキラの身を案じながら走っていると、その耳が聞き覚えのある声を捉えた。この声と、このエンジン音。間違いない、これは──。
カリンは窮地へと立たされていた。ブリンガーの手を撃退出来たは良いものの、その後集まったエーテリアスと戦っていた所、いつの間にか孤立していたのだ。
「カリン!!」
皆が呼んでいる。大量のエーテリアスを前にするカリンを助けようと、それぞれ必死で武器を振るっている。
カリンも必死であった。ひたすらに丸ノコを振り回し、怪物どもを蹴散らしていく。が、その時。
「あっ──」
足を、踏み外した。今転べば、死は確実。分かっていても、身体は物理法則に従って地面へと突っ込んでいった。
だが、とすん、とカリンの身体に触れたのは硬いコンクリートではなく、怪物の牙でもなく、しかし優しい手つきでカリンの背中を支える右腕であった。
こちらに飛びかかったエーテリアスが、散弾銃に吹き飛ばされた。この腕は。この銃声は。この見慣れた帽子は──。
「久しいな、
「狩人……さん……!?」
宇宙色の瞳と、目が合う。瞬間、カリンの脳内に溢れ出した、存在する記憶──。
「狩人さん……! うっ、うぅっ……!」
背中を右腕に預けたまま、
いつの間にか、家政の皆によって周りにいたエーテリアス達は駆逐され尽くしていた。また暴れられると笑みを零したその時。
「貴公ら……協力に感謝する。ではな、カリン」
「えっ」
思わず口から漏れ出たその声に、狩人がこちらへ振り向いた。
「カリン。私にはどうしても殺さねばならん相手がいるのだ。それも、今、このホロウの中でな。それに……」
狩人が、微笑んだ。
「約束しただろう。貴公は、私が居なくとも平気だと」
ふと、振り向く。後ろでは、仲間達が死闘を繰り広げている。
「さあ、行け。彼らには、貴公が必要なのだ。守るべき相手を間違えるんじゃない」
カリンの心は、もう固まっていた。頬を流れる涙を拭う。
「……はい……っ!」
丸ノコを握りしめ答えると、狩人は「命を大切にな」とだけ告げ、背中を見せ振り向く事も無くその場を去っていった。
その背中が消えるのを待たず、カリンも振り向いた。仲間へ襲いかかるエーテリアスを前に、カリンは思い切り丸ノコのエンジンを起動した。
その瞳に、もう涙は浮かんでいなかった。
どうでも良い話ですが、ゼンゼロとSEKIROのクロスオーバーって全然見かけないですよね。日本では多重クロスが一つだけ、英語圏のサイトではまさかのゼロという。
ゼンゼロとフロムゲーのクロス書くなら真っ先に題材になる作品だと思ってたので驚きでした。
なんなら今ゼンゼロ×フロムってブラボしか無いんですよね、少なくとも、私が知る限りでは。
できることなら、もっとフロムとのクロスが盛んになって欲しいものですね。
-追記-
ACもありました。だまして悪いが、未プレイなんでな。