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階上ジム振動裁判は控訴審でも全面敗訴、「医療機関が勝手に出ていけ」が司法の判断

2025/11/05
谷口 恭(谷口医院)

quanlun/stock.adobe.com

 過去のコラム「階上ジム振動裁判は谷口医院の全面敗訴」で報告したように、突然階上に入居したキックボクシングジムの振動で診療を妨害されたことに対して谷口医院が原告となった地裁の判決は、谷口医院の敗訴に終わった。階上のジムがつくりだす振動を建築士に計測してもらい、その報告書を裁判所に提出したにもかかわらずだ。しかも、判決文には我々が最重要事項とした針刺し事故のリスクについて一切の言及がなく、また、「なぜ振動下で診療できないか」を証言してくれた神経内科医の池田正行先生のコメントにも全く触れられていなかった。これではきちんと審議されたのかどうか分からない。そこで控訴に踏み切ったのだが、結果は惨めなものだった。

 患者が悲鳴を上げ、壁や天井にひびが入るほどの振動がいつ起こるか分からない恐怖の下で医療行為を続けられるはずがない。極論を言えば、医療機関がビルに入居する場合、「最上階以外は選べない」ということになってしまう。それが司法の判断だというのなら従うしかないが、新たに開業を考える者はどうすればいいのか。今回は、この件の最終回として、「ビルで開業するリスク」を考えてみたい。

 なお、僕の筆力では振動の恐ろしさを伝えることは難しいが、1回目の報告「緊急事態宣言よりも、苦しんでいる患者よりも大事な“ユメ”って何だ?」に掲載した、振動で生じた天井と壁のひび割れをご覧いただければ、少しはあの恐怖を感じ取ってもらえるのではないかと思う。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。2002年大阪市立大学医学部卒。タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に開業した太融寺町谷口医院を2023年6月に閉院し、同年8月に谷口医院を開業。

連載の紹介

谷口恭の「都市型総合診療の極意」
谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」の続編です。2023年6月、太融寺町谷口医院の閉院とともに終了した谷口氏のコラムですが、同年8月に谷口医院を開業したことから、コラム名を改めました。患者さんに最も近い立場で医療を行う谷口氏の都市型総合診療の実際をお届けします。

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