東京大学が、国内外の先住民族の遺骨を研究目的で収集してきたとして謝罪を表明した。
19世紀以降、頭骨から人種を特定する研究が欧州などで行われ、各地の先住民族の遺骨が盗掘された。日本では東京帝国大がアイヌ民族の遺骨を収集し、オーストラリアの研究者と先住民族の遺骨の交換もしていた。
収集は国内の他の大学も行った。尊厳を奪う行為だ。海外では大学側が人種差別的だったなどとして謝罪し、遺骨の返還も進むが日本の対応は遅い。東大の謝罪は一歩前進といえる。
国内では12大学がアイヌ民族の遺骨を集めていた。謝罪したのは他に札幌医科大だけだ。残る大学、特に遺骨の保管数が一時、千体を超え突出していた北海道大の姿勢が問われている。
東大は先月、公表した謝罪文で、先住民族の意向に配慮せず収集された遺骨があると認め「心よりおわびする」とした。
7月に小樽市内の団体へアイヌ民族の遺骨を返還した際、東大として初めて口頭で謝罪しており今回、文書で示した形だ。副学長を座長とする専門チームを設置し、遺骨の情報整理や返還を進める方針も表明した。
東京帝大の小金井良精(よしきよ)教授は1880年代に道内でアイヌ民族の遺骨を盗掘したとみられる記録を日記に残している。東南アジアや台湾、南米などの民族の遺骨を入手したとの記述もある。東大は責任を持ってこれらの全容を解明する必要がある。
2007年採択の「先住民族の権利に関する国連宣言」には遺骨の返還も明記された。今年6月には東大や京都大などが保管していたオーストラリアの先住民族の遺骨10体が豪政府の要請で返還された。すでに欧米から約1800体が返還済みだ。
もはや謝罪や返還は国際的な潮流である。東大の表明がなぜここまで遅れたのか、経緯も丁寧に説明しなければならない。
北大は1930年代からアイヌ民族の遺骨を収集していた。
アイヌの人々は80年代から説明や返還を求めてきた。北大は学内の資料などから遺骨の実態を調査し13年に報告書を公表した。「発掘は遺族の了承を得ていた」などとして違法性は確認できないとした。
ただ収集された全ての遺骨を記録した資料はないとしており、検証は不十分だ。「北大病院の医者が黙ってお墓を掘り、穴だらけになっていた」というアイヌ民族の証言もある。北大の姿勢は不誠実ではないか。
北大は来年、開学150周年を迎える。節目を前に歴史を直視してこそ、未来は開けよう。
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