第9話

反射する悪夢
107
2025/04/09 03:17 更新
風月
一応キラキララビリンスにライオン達が挑戦した後、マリアを探しにたそがれ横丁行く前って感じです。(ゲームえん)
噛み合ってなかったらごめんね…
書きたかったから……
掘り下げみたいなことをしてみたくてですね…
寝惚けた脳を覚醒させる。
…無理矢理起こしたせいか少し気分が悪くなったが
それに関しては仕方がない。
シュヤ
シュヤ
…よかった、皆ちゃんと眠れてるみたい
本当に小さく、手を翳したら消えるくらいの声で
一人、安堵の言葉を口にした。
……皆、きっと疲れているだろうから
少し、心配だったのだ。
シュヤ
シュヤ
……よし
考え事はそこそこにして、物音を立てないように
そっとテントから抜け出した。
……僕にもきっと、出来ることがあるはずだ。
いつか使うだろうと思って作った手描きの地図を
カバンから取り出す。
ユウ先生に写させてもらって、カナタとヒナタに聞いたから
信憑性は高い。
…元が大雑把だから、さして役立たないかもしれないが。
方向音痴の僕にとっては、ないよりきっとマシである。
シュヤ
シュヤ
…すぐ、帰ってくるから。
行ってきます
それだけ言って、慎重に休憩所のドアを開けて外に出た。
暗いのは苦手だ、ひとりぼっちも。
…でも、なんとかしなくては。
探検隊の皆も、ヒカルも
ゾーヤも、もうメダルがそんなにない。
払えなくなったらどうなるか、分かったもんじゃない。
…あの手のものは、最悪死ぬ可能性だってある。
そんなの、きっと皆が傷付いてしまう。
失うのも、失わせるのも
絶対に嫌だ。
シュヤ
シュヤ
……にしても、地図で見た感じ遠いな…
皆が起きる前に、帰ってこられるといいんだけど…
〜数分後〜
シュヤ
シュヤ
はー……はー……
インドア派にさせる所業か、これが…?
最近はゾーヤにくっついて外に遊びに行くこともあったから
体力がついたと思ったのだが…
小走り、というか半ば走って来たので
流石に心拍数が上がったらしい。
普段運動しないからね、しょうがないね…
シュヤ
シュヤ
まぁ、着いてよかったよ…ともかくね…
…ここが、キラキララビリンス…だよな
カナタとヒナタに教えてもらった見た目通りだ。
入場料は確か…メダル1枚。
シュヤ
シュヤ
困ったな…迷路は得意じゃないんだけど…
でも、入場料払うなら
…是が非でも、クリアするしかないね
胸元のペンダントトップを握りしめる。
覚悟は決めた。あとは、やるだけだ。
アトラクションの扉を開けて、足を踏み出す。

……全部、守る。ゾーヤのために。
そう、決めたから。
〜キラキララビリンス内部〜
シュヤ
シュヤ
鏡…いや多いな?
…嫌な予感がする。
こういう時の直感は、嫌なぐらい当たるから
とっとと立てられた看板の内容を見て
先に進もうと思った。
シュヤ
シュヤ
『本当の自分』……
…長居しない方がいいな、これ
???
ふふ、馬鹿だね。お前は
信じてもらえるなんて、本当に思ってるの?
お前は、誰も信じちゃいないのに
嗚呼…やっぱり。嫌な予感が当たった。
ここの製作者は、相当意地が悪いらしい。
シュヤ
シュヤ
……くそったれ
次に繋がる扉を開けて、足早に踏み出す。
煩わしい声が、纏わりつくように移動してきた。
???
あはは!
言葉に責任を…なんてどの口で言ってるんだか
お前の本質はそれだろ?
優しさなんかない。粗暴で、否定的な破壊者。
そんなんだから、嫌われるんじゃないの?
シュヤ
シュヤ
…うるさいな、お前だって僕だろ
スタンプ2個、どこにある
30分以内にクリアしなきゃいけないんだ
???
はは!…仕方ないな〜、連れてってあげるよ
シュヤ
シュヤ
そりゃどーも、早くしてくれよ?
強く、在らねば。
ゾーヤの前ではあまり使いたくないが
自己を在らしめるには、この口調が1番いいのだ。
自分のペースを保つ。相手を上手く使う。
その為には、この位が丁度いい。
猫の手も借りたいのだ。
兎に角、使えるもんは全部使ってやる。
???
はいはい、わざわざゾーヤに言わないで
勝手に行動してるんだもんね
結果くらい、ないとね?
シュヤ
シュヤ
っ…!
…なんで、お前が知って
その一言で、足が止まる。
???
さっきお前が言ったでしょ?
僕はお前で、お前は僕。
だから、分かるんだよ、簡単に
…動揺するな、考えるな。
上手く、扱え
シュヤ
シュヤ
…そーいやそんなこと言ったっけ
こっちで合ってる?
???
そうそう、そっちそっち。
ていうかまだ押してなかったの〜?
相変わらず遅いね〜僕。
シュヤ
シュヤ
お前が無駄口叩くからだろ
相槌打つのも大変なんだよ、知ってると思うけど
そう軽口を叩いてスタンプを押す。
あと、ひとつ。
???
はいはい、ごめんね?
……そんなのどうでもいいから、早く二個目押しなよ
シュヤ
シュヤ
…分かってるよ
下がった声のトーンに威圧感を覚えながら
案内された道を通って、二つ目のスタンプを押した。
???
はーい、次のステージレッツゴー
シュヤ
シュヤ
テンション高いな……
???
…だって、こうでもしないと
考えたくないこと考えるでしょ?
……希死念慮とか、ゾーヤの脱落とかね
シュヤ
シュヤ
……そうだな
扉を開けて、次の場所に踏み入る。
カラフルな扉が、やけに目に付いた。
…どうやら、本格的に迷路らしい。
シュヤ
シュヤ
問題文探して答えろだってさ
お前分かる?
???
問題文の場所?
いいよ〜案内してあげる〜
……早くお前がいなくなってくれた方が
僕としてもせいせいするしね
シュヤ
シュヤ
…それにはおれも同意する
???
あ、ついに一人称まで変えたね〜
やっぱり、そっちの方が楽?
シュヤ
シュヤ
まぁ…好きで使ってるし…
勘違いされたくないから、あんまり使わないけど
普段、人と話さない時
もしくは家の人と話す時は、一人称が混在する。
どちらも好きで使っているけど…
「おれ」は使うと言葉が刺々しくなるから
あまり使わないのだ。…特にゾーヤ達の前では。
ただ…それも、理由の一つだが
???
自認が無性別だから?
シュヤ
シュヤ
…そーだよ。
ていうかお前は知ってるだろ、僕なんだから
これが一番大きな理由である。
……僕はどっちでもない。だから、分けられたくはない。
「勘違い」されたくないのだ。
それでもまぁ、服装や髪型、一人称を好きなものにしてるから
どうしても勘違いはされるのだけど。
???
まーね
あ、問題文読んだ?
ずけずけくるなこいつ…
まぁ、変に気を遣うよりいっそこの方が
僕らしいという話ではあるが。
シュヤ
シュヤ
読んだ。
扉の色の数答えればいいんだっけ?
???
そうそう。で、覚えてる?
シュヤ
シュヤ
今まで見たのは…
赤、青、緑、黄色、水色
この5色…だったはず
???
正解。そこまでは合ってる
じゃあ、あとは出口まで行けばいいね
シュヤ
シュヤ
…道案内よろしく
???
はいはい…まぁ、時間かければ
お前でもいけると思うけどね
シュヤ
シュヤ
一分一秒惜しいからそれは却下。
???
はは…言うと思った
そう言って、鏡の中の僕は前を向いた。
…こいつが出来るってことは、僕も出来る
それは、さっきからの問答で予想がついてたことだ。
そうして、僕達はお互いに
僕であり、おれであり、自分であるから
この先言う言葉も、お互いの感情も
嫌という程、分かるのだ。
〜案内中〜
シュヤ
シュヤ
えっと…さっきの色に合わせて
紫とオレンジ見つけたから…7色か
???
正解。
よかったね〜僕。
ほんじゃ、残りもサクッと行こうか
シュヤ
シュヤ
…あぁ
次の場所の問題は、そう難しくなかった。
扉の色は7色。
虹の模様が扉の上に掲げられていて
ヒントは「外から内」
シュヤ
シュヤ
簡単だなぁ…
???
ね〜
…入る順番間違えないでよ?
流石にそこまで馬鹿じゃないと思うけど…
シュヤ
シュヤ
…お前僕のことなんだと思ってる?
ていうか言葉刺々しいなさっきから……
???
僕だと思ってる。
ていうか刺々しいのは当たり前でしょ
嫌がらせなんだから
……ここは、そういう場所だよ
お前も、知ってて来たんじゃないの
シュヤ
シュヤ
全部への回答どーも。
…ま、分かってはいたけど。
ここしか選択肢なかったんだよ
現状知ってるアトラクションの中で
唯一僕にクリア出来そうだったから
…僕はこの手のことには耐性高いし
そう言いながら、虹の終わりにあたる
紫色の扉を開ける。
ゾーヤのケープと同じ色が無くなるのが寂しくなって
少しだけ、指先を撫でるように滑らせた。
次の床を踏みしめる。
断ち切る様に、開けた扉を通り過ぎたら
後ろで、扉の閉まった音が聞こえた。
???
だろーな
……馬鹿だよね、お前も僕も
一度だって、もらった愛情を
大事にできたことがない
シュヤ
シュヤ
そうだな
それは否定できないわ
一番最後の、第3ゲートと呼ばれていた
真っ黒な扉を開ける。
…ユウ先生の色に似てるな、なんて少しだけ思った。
シュヤ
シュヤ
で?こっから先は、あと進むだけ?
???
そーそ、道案内はしてあげるから
早く行くよ
シュヤ
シュヤ
ん、分かった。
……ありがとな
???
…どーいたしまして
案内された道を進みながら会話をする。
普段のこと、ゾーヤのこと
その他にもまぁ…色々と。
そんな風に会話していたら、出口付近に来たらしく
鏡の中の僕が立ち止まった。
???
さて、ここまで来たら間に合うかな
…ねぇ、ちょっと話しておくれよ
一番大事な、最後の話。
シュヤ
シュヤ
…いいよ
???
お前は、守り切れると思う?
誰も信じてない、ゾーヤ以外なんにもない
空っぽのお前に。
…お前は、愛せやしないのに
傷付けるしか、できないのに
シュヤ
シュヤ
……そうだね
言ってることは間違ってない。
……だからこそ
シュヤ
シュヤ
だからこそ、僕は僕の全部を賭けて
全部費やして、守るよ
ゾーヤも、ゾーヤの大切なものも
???
……それが、ゾーヤを傷付けることになっても?
悲しませるって、分かってても?
シュヤ
シュヤ
……なるべくそうならないようにしたいけどね
これが、僕にできる唯一だから。
これも、愛だろう?
???
……それで、ゾーヤを危険に晒すなよ
その時点で、それはもう
愛じゃないんだから
シュヤ
シュヤ
ん、肝に銘じとくよ
ご忠告どうも
これはきっと、元から愛の形をしていない。
独り善がりで、馬鹿みたいな考えだ。
だって、ゾーヤは
「みんな」で脱出したいだろうから。
それでも…僕だって、僕以外の何かを
切り捨てたくない。
???
…じゃあね、僕
話、聞いてくれてありがとう
シュヤ
シュヤ
…あぁ、どういたしまして
???
…あぁ、それと
傷付ける前に、お前が居なくなるのを
祈ってるよ
その言葉が、どこか悲しそうで
それ以外に方法がない、みたいな顔に見えて。
…あぁ、きっと
もう、誰も傷付けたくないんだろう。
僕だって、そうだから。
シュヤ
シュヤ
…もしもの時は、そうするよ
じゃあね、僕。
お前が、安らかに
……幸せになれるよう、祈ってる
それだけ伝えて、出口に足を進める。
強く床を踏んで、外に飛び出した。
???
…本当、馬鹿だよ
お前も、僕も。
嫌われたくない、傷付けたくない。
優しいあの子達を、守りたい。
その為に、自滅覚悟の行動をとる。
……残される、あの子の気持ちを想像しながら
???
分かっていて、それしか選べないなんて
ほんと、救いようが無いね
ギリギリで手にしたメダルをポケットに入れる。
…これだけあれば、少しは役に立てるだろうか。
あげられる分は、5枚しかないけれど。
シュヤ
シュヤ
……皆、もう起きたかな
心配かけてないといいんだけど…
全力疾走一歩手前の速度で休憩所までの道を戻りながら
そんなことを思った。
…ゾーヤは、平気だろうか。ヒカル、無理してないかな。
皆がなるべく無事で、平穏であることを望みながら
足を進める。
シュヤ
シュヤ
はっ……はっ…げほ……
よかった、帰ってこれた…
行きよりもスピードを上げたせいで、咳き込む程に乱れた息を整える。
させたであろう心配を払拭できるように、弁明を考えながら
休憩所の扉に手をかけた。
シュヤ
シュヤ
…ただいま
ゾーヤ
ゾーヤ
…シュヤ…?
開けてそうそう、一番心配してくれていただろうゾーヤが
視界に映った。
驚いたような、そんな風に目を見開いている。
その瞳は、いつもよりずっと不安そうで
珍しく潤んでいるような気がした。
…嗚呼、これ
思ったより心配かけすぎたな……
シュヤ
シュヤ
…ごめん、心配かけ…
言い終わることを遮るかのように
強く、強く抱きしめられた。
ふわふわの三つ編みが肌に当たってこそばゆくて
少し甘くて暖かいゾーヤの匂いがして
ふっ…と、張り詰めていた気が解けて、心の底から安心した。
ゾーヤ
ゾーヤ
どこに行ってたの…心配、したんだよ
シュヤ
シュヤ
…うん、ごめんね
実は、ほら
アトラクション、クリアしてきたんだ
ゾーヤを抱きしめながら、右手でポケットの中身を出す。
ゾーヤは驚いたような顔をもう一度してから
少しだけ怒りを滲ませた表情をした。
多分、心配故の怒りだろう。
ゾーヤは、優しいから。
ゾーヤ
ゾーヤ
…ひとりで?
なにが起きるのか分からないのに…
シュヤ
シュヤ
一応確認してから行ったんだけど…
ほら、キラキララビリンスに行ったから…
カナタ達の話も聞いて、僕なら割といけるかなって…
ゾーヤ
ゾーヤ
そっか……でも、もしもなにかあったら
大変なことになってたかもしれないでしょ?
だから…挑戦するのはいいけど
なにも言わずに行くのは、やめてほしかったかな
シュヤ
シュヤ
……それについては、本当に申し訳ありません…
今後はしないように気を付けます…
本心からの言葉を、きちんとゾーヤの方を見ながら言えば
ゾーヤは、いつものように優しく
花が綻ぶかのように笑った。
…相変わらず、本当に眩しい。
この一等星に影を落としたことに、改めて後悔するほどに。
ゾーヤ
ゾーヤ
うん、そうしてくれるとうれしいな
じゃあ…約束。
シュヤ
シュヤ
(…あ)
…裏切らないと、信じられているからこそ
だからこその、約束。
言葉で圧することなど、きっとそれより単純で簡単だ。
それでも…お互いがお互いを思って
結び合うこれを、ゾーヤはいつもしてくれるのだ。
僕を信じて、僕を大切にしてくれるから。
シュヤ
シュヤ
うん、約束。
…ちゃんと、守るよ
きみの心を、きみを。
皆を。
…あぁ、なるべく
約束、破りたくないなぁ…
……裏切りたくない。傷付けたくない。
悲しませたく、ないんだ
ゾーヤ
ゾーヤ
…じゃあシュヤ、センセイ達が帰ってきたら
メダルのことも話そう。
…ちゃんと言うんだよ?ボクも手伝うけど…
シュヤ
シュヤ
うん……ありがとう…
あれ?そういえば…
ユウ先生が、ヒカルが、いない?
僕が起きた頃には、皆いたはずだ。
そう思った僕の疑問を読んだかの如く、ゾーヤが言った。
ゾーヤ
ゾーヤ
実は……マリアがいなくなったんだ。
多分、シュヤと同じで
アトラクションに行ったんだと思う。
今、ヒカルとセンセイが確認しに行ってるから…
シュヤ
シュヤ
え、
風月
たそがれ横丁辺りは気が向いたらか
リクエストあったら書くと思います…
今回はあまりゾーヤが出なくて申し訳ない…

プリ小説オーディオドラマ