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カロリーは足りているのに飢餓状態

では、「ライフスタイルのリセット」とは何をすればいいのか。
私たちの生活は、狩猟から農耕へと大きく変化した。あらゆるものが工業化し、食べ物も自然の恵みから得られていた時代から加工食品が多く摂られるようになった。加工食品は簡単にカロリーが摂取できる。なのに、体に飢餓のリスクを感じさせ、セットポイントを上げさせた原因は、どこにあるのだろう。

そう考えたアンドリュー医師はセットポイントを正すための、私たちの体に必要な、過去には摂取できていたのに、現代の「西洋の食事」になくなってしまったものを探した。

肥満率が上昇し始めたのは1980年代半ば。アメリカで、政府による健康的な食事の指針、マクガヴァン報告こと「アメリカの食事目標」(*2)が示されたのは1977年のことだった。皮肉なことに、発表されたその指針こそが、肥満蔓延の原因だと、アンドリュー医師は指摘している。

指針による変化を、本書より抜粋する。
「食習慣の変化の中でも特に著しかったものの一つが、(バターやラードに含まれる)飽和脂肪酸を、綿実、ベニバナ、菜種(キャノーラ)、ヒマワリなどの植物油に換えたことだ。(中略)植物油の消費量は、1970年の年間約6キロから2009年の約28キロへと爆増した。3倍以上の増加だ。
バターにかわる『より安全』なものとして人気を博したのが、半固体の植物油であるマーガリンだ」

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当時、筆者は小学生だったのでよく覚えている。
冷蔵庫の中のバターは直ちにマーガリンに変わった。固くて塗りにくいバターと違って、マーガリンは冷蔵庫から出してすぐでも塗りやすく、「動物性よりもヘルシー」と言われ、安心してたっぷりと塗りたくり、同じ頃に出回り始めたホットプレートに押し付け、こんがり焼けたところにかぶりついたものだ。

現在は「だんなに早死にしてもらうために、マーガリンをたっぷり塗っています」などと時々SNSに上がるのを見るが、当時は体にいいものだと思い込んでいた。

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