「肥満の特効薬」と科学者たちは浮き足立つが
レプチンの発見は1994年と比較的最近のことだ。レプチンを持たないマウスは旺盛な食欲で、あっという間に2倍の大きさになった。そこにレプチン代替物質を注入すると、食欲はぴたりと止まり、継続することで肥満は解消された。
「肥満に悩む人にもレプチンを注入すればよいのではないか」そう研究者たちは考えた。
1997年に先天的にレプチンを持たない2歳と8歳のパキスタンの子どもにレプチン代替注射を継続投与すると、どうやっても痩せられなかったふたりの食欲はおさまり、体重は改善を見せたという。
「肥満の特効薬」だと、製薬会社や研究者は浮き足だち、莫大なお金をかけて開発した。が、うまくいかなかった。
肥満症の患者の中に、レプチンを持たない患者はほんのわずかしかおらず、多くの患者の体内には、高濃度のレプチンが存在したのだ。
レプチンの濃度が高くなれば、食欲がおさまるはずなのに、なぜ……。
アンドリュー医師は、この原因について、「レプチンの濃度が高まると、脳へのメッセージが阻害され、脳がレプチンの存在を感知できなくなる」と書いている。
レプチンには(感知できる)限界点があって、それを超えてしまうと「レプチン抵抗性」という現象が起きる。十分すぎるレプチンがありながら、脳は飢餓状態と思い込み、食欲はおさまらないのだ。
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