常識をくつがえす画期的なダイエット本
大食い選手権に登場するのはたいてい「やせの大食い」。一度に何千キロカロリーを摂取しても、テレビで見る彼女たちの体形は全くと言っていいほど変わらない。
どんなに摂取カロリーに気をつけても、ちょっと油断すればすぐに体重が増えてしまう人からすると、「食べすぎちゃった」などと言いながら、何年も体形を維持している人がうらやましくて仕方がない。
なぜこんなにも気をつけている自分ばかりが太るのか。
太っているのは意志が弱いからだ、本当に痩せようという意志があれば自制できるはず、などと太っていることに対し世間は冷たい。だが、「意志が弱い」「自制できる」などと批判するのは間違っていると、唱える人物がいる。
今年8月に出版された『食欲の攻略書 なぜ私たちは食べ過ぎてしまうのか』(ダイヤモンド社)の著者、アンドリュー・ジェンキンソン医師(Dr. Andrew Jenkinson)だ。本書は肥満大国・アメリカとイギリスでベストセラーとなり、米英含む世界11カ国で刊行されている。
名門ユニバーシティ・カレッジ病院の肥満(減量)外科の現役外科医でコンサルタント。イギリスのホーマートン大学病院で、ロンドン一予約の取れない肥満治療病棟の設立に貢献し、現在はNHS(国民保健サービス)に従事するアンドリュー医師は、ロンドンクリニックとウェリントン私立病院の肥満外科部門の責任者も兼任する。
本書には、体重に悩む多くの人が知りたい
・なぜ人は太るのか(同じように食べても、太らない人もいるのに)
・なぜダイエットすると、リバウンドしてしまうのか(しかも元の体重より増えやすい)
・どうしたら食欲を抑えられるのか(ダイエット中に食べ物のことばかり考えてしまう)
・どうしたら痩せられるの(運動、カロリー制限以外の方法なんてあるのだろうか)
などが、科学的根拠を踏まえながら、丁寧にわかりやすく書いてある。
しかもその内容は、これまでの私たちのダイエットの常識をくつがえす、画期的なものなのだ。
短期連載のその1「『”食べた分だけ脂肪がつく”は科学的に間違っています』肥満外科医が伝えるダイエットの新常識」、その2「『ダイエットに成功したはずが…』減量成功後に襲ってくるリバウンドよりも恐ろしいこと」では、過食が必ずしも太る原因ではないことを伝えている。
記事その1「『”食べた分だけ脂肪がつく”は科学的に間違っています』肥満外科医が伝えるダイエットの新常識」を読む。
記事その2「『ダイエットに成功したはずが…』減量成功後に襲ってくるリバウンドよりも恐ろしいこと」を読む。
私たちの体は、たくさん食べたからと言って、その分すべてが脂肪になるわけではない。生きていくために必要な体重(セットポイント)が設定されており、体重が増え始めると、体は代謝率を上げて、よりカロリーを消費しようとするという。
だがダイエットなどによって体重が減り始めると、これと逆のことが起きる。
必要な栄養素が十分に摂れない事態を体は飢餓と認識し、できるだけカロリーを使わないよう代謝率を下げる。さらに今後の飢餓に備えて、セットポイントを上げ、せっせと脂肪を蓄えようとするというのだ。
セットポイントを上げる食べ物
ただこれは、何を食べても起こるとは限らず、誰にでも起きることでもない。人それぞれ、人種や住む地域に関係し、個体差も大きい。
個体差には、「遺伝」と(食)「環境」が大きく関わっているという。
例えば、大きく太った牛に育てようと思ったら、牧草をたくさん食べさせるだけでは足りない。
セットポイントを上げて太らせるのに有効だったのは、高カロリー・高脂質の「キャンティーンフード」だ。
人間にとってそれは、フライドチキンやオニオンリング、ピザやハンバーガー、フライドポテトなどに代表される「西洋の食事」のようである。
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