親から子に遺伝する「肥満遺伝子」
アンドリュー医師によれば、環境が変わってもさほど影響を受けず、標準体重を維持している人は全体の3分の1いるという。同じ条件でも環境の変化による影響を多少受け、標準体重から過体重になる人も3分の1、そして極度の肥満になる人も3分の1だという。
私たちは生まれながらにして、
「肥満耐性」(標準体重を難なく維持できる)、
「肥満脆弱性」(食べ過ぎたらジムに行かなければならないことを自覚している)、
「肥満過敏性」(気をつけていても体重に悩まされる)」
の3種に分類されており、さらに「何を食べるか」(環境)が掛け合わされて、セットポイントが決まる。
この肥満遺伝は75%という高い確率で親から子へ遺伝する。民族や人種などによっても一定の傾向がみられる。
だが、肥満遺伝子に関わらず、肥満リスクが高まることがある。
生前、母親の胎内にいる時に、飢餓や過激なダイエットなどにより母親の栄養状態が悪くなると、生まれ落ちた後の飢餓のリスクに備える(これを遺伝子のエビジェネティックプライミング=遺伝子発現変化を伴うことのない潜在的な分子メカニズムという)。
エビジェネティックな変化は私たちの体が、いかに「飢餓」を恐れているかを表している。栄養失調状態の母親から生まれた胎児は、生まれ落ちた環境のリスク(飢餓の危険)に備えて、(食物を得ようと活発に動けるよう)食欲旺盛に、(貯蓄カロリーはできるだけ使わないように)代謝は抑制し、(次の飢餓に備えらえるよう)脂肪を多く貯められる体にしてくれてしまうのだ。
ああ、なんて余計なお世話をしてくれるのだろう。
実際の世の中には、食べ物があふれ、高カロリー、高脂質のファストフードは、安価で簡単に手に入る。結果、肥満遺伝子を持って生まれた人は、食欲を抑制できずにたくさん食べ、食べた分はどんどん脂肪として蓄積され、運動してもあまり消費されず、気にしてカロリー制限をすればセットポイントを上がり、さらに食欲が増して……
悪夢のスパイラルとなる。
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