セットポイントを上げる「キャンティフード」
カロリー制限をして体重がセットポイントを下回り始めると、体は「必要な栄養が足りない」=「飢餓の状態」と認識する。そして危機感を募らせ、セットポイントを上げる。さらに猛烈な食欲を起こして、新たなセットポイント=上げた体重の上限まで脂肪を蓄えようとするのだ。
セットポイントの設定値や上げ方は、個人差が大きい。
基準となるのは、「環境」と「遺伝」だと、動物の例を出して、アンドリュー医師は説明する。
アメリカの酪農家が牛を早く大きく育てるために何をしてきたか。
単純に飼料の量だけ増やしても、体重の上限=セットポイントは思うように上がらない。セットポイントを上げるためには、特別な飼料――高カロリー、高脂質の「キャンティーンフード」と呼ばれるーーを与える必要があった。それは、マウスの実験でも証明されていることだった。
人間にとっての「キャンティーンフード」は何を指すのだろう。
下記は、本書に記された1970年~2010年のアメリカの肥満率とカロリー摂取量と、1822年~2000年のアメリカの砂糖消費量の推移のグラフだ。
2つのグラフの1980年代以降の線の上がり方を見ていただきたい。それ以前60年間ほぼ同じだった砂糖の消費量が上がり始める地点で、肥満率も右肩上がりになっている。
食習慣が変わったのだ。
*ちなみに日本にマクドナルドの1号店が出店されたのが1971年、ケンタッキーは1970年、サーティワン《バスキン・ロビン》が1974年である。
けれども、テレビでは、大食い選手権の細くて小さな女性たちも、フライドチキンやホールケーキをがつがつ食べている。キャンティーンフードを食べても、太らない人もいる。
そこには、もうひとつのファクター「遺伝」が関わっている。
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