どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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ビルの事ツインテッドタワーって書いてたけど実際はバレエツインズでした。申し訳ねえ。


丸ノコ使い二人。ただし最強。

 その日の内に、彼らはまたホロウ内へ向かう事となった。

 捕まえた兵士達は政府の反乱軍であり、凄腕のハッカーであるレインを利用する為に誘拐したことが明らかになったのだ。

 

 拷問自体は簡単なものだったが、開始三十秒で他のふたりに「やりすぎだ」と言われ隅っこで見つめるだけになっていた。

 

 至近距離で瞳を覗いて”宇宙”を見せたのが良くなかった。三人いた内の二人が早々に発狂死してしまったのだ。

 

 突然全身から真っ赤な槍を生やして死ぬ彼らを見て捕虜はもちろん、ライカン達でさえ少し怯えてしまった。

 

 ハッカーなど誘拐して一体全体何をするのかと皆が思案していると、突然アキラの電話が鳴り響く。

 

「もしもし、店長か? 今飛行船の中に居るんだが、ずいぶんマズイ事になった!」

 

 皆が耳を傾ける。何やら、パールマンのバッグから突然飛行船の中に睡眠ガスが撒かれ、呼気システムが故障していたビリー以外、操縦手もろとも寝てしまったそうだ。

 

 自動操縦にしたは良いものの、今度は航路がハッキングされ、バレエツインズのあるホロウの中へと突っ込もうとしているらしい。

 

 明らかに、レインの仕業。正確に言えば、彼女を拉致した反乱軍の仕業だろう。

 

 ホロウでの長時間の滞在は、人間をエーテリアスへと変貌させる。

 パールマンと邪兎屋、両方を共に葬り去るつもりか。数百人の巻き添えを作りながら。

 

「……外道」

 

 狩人は、気付かぬ内に声を出していた。こんな事が、許されてなるものか。

 幸いにも皆、狩人に同感の様だ。すぐに、レインの信号の発信地へと向かった。

 

 ……あの邪兎屋という連中、面倒事にしか巻き込まれないのかと半ば呆れながら。

 

 数分後にはレインを見つけた。用済みと判断されたのだろう、口元を掴まれ涙を流す彼女は、ビルの吹き抜けから突き落とされそうになっている。

 

「レインっ!」

 

 掴んでいた男がレインを落とすと同時に、アキラが叫ぶ。ライカンが全力で跳んだ。

 

 そのまま彼女を空中で捉え、一つ下の階へ着地。レインの感謝する声が、彼女の生存を伝えていた。

 

 後からやってきた全身黒尽くめで回転ノコギリを持った不審者を見て敵と勘違いし錯乱する彼女を落ち着かせるのは大変だったが。

 

 イアスを掴み、叫ぶレイン。

 

「急がないと、飛行船がっ……!!」

 

 直後、爆発音。天井への階段が爆破され、わざわざ一階の広場にあるホロウの裂け目から行かねばならなくなった。

 

 飛行船を無事着陸させるには、屋上から飛び移らねばならない。すぐに、階段を駆け下りた。

 

 そして、到着。やけに開けた場所に出た時点で狩人は嫌な予感がし、カリンに作戦を耳打ちした。

 

 皆にも危険そうだと伝えたが、カリンとの作戦は話さなかった。絶対に反対されるからである。

 

「着いたよ! ホロウの裂け目はあそこだ!」

 

 アキラが指差した先は高いモニュメントの頂上。少し時間をかければ登れるだろうか。

 

 すると突然、館内放送が流れる。あの音楽だ。照明が消えたと思えば、スポットライトが当たる。

 

「あれは……!」

 

 スポットライトの指し示す先を見たアキラの目に映ったのは、ドレスの怪物。スカートはすっかり修復されていた。

 

 やはりか。皆を置いて、カリンと狩人が飛び出す。

 

「いくぞっ!」

 

「おうっ!」

 

 「おうっ!」……? 

 やはり人格変わってないかこれと心配しながらも、狩人は跳躍した。カリンが丸ノコを高く掲げる。

 

 丸ノコ同士、二つの”回転”を噛み合わせ、反動で勢いをつける狩人。瞬間、カリンの丸ノコの持ち手を掴む。

 そして二人は、高く空へと舞い上がった。

 

 ふたりのノコギリが、空中で黄金の輝きを帯び、虹色の光を放ち始める。

 

 完璧なバランスと、計算され尽くした軌道。二つを組み合わせた動きが、ふたりの舞う空の中、ついに完成された運動エネルギーを生み出したのだ。

 

 ふと一瞬、ライカンの顔が見えた。それはもう、頭を抱えて泣き出しそうになっていた。きっと感動によるものだろう。

 

 光輝く空中で狩人が叫び、カリンが続ける。

 

「炸裂しろッッ!」

 

「完全なるッッッ!!」

 

「「黄金の回転ノコギリ(エネルギ)ーッッッッ!!!!」」

 

 虹と黄金を纏ったその攻撃は、しかし予想外の出来事に目を奪われ失敗することとなる。

 

「これはっ!?」

 

「ふたりっっ!?」

 

 怪物の後ろに、全く同じ形の化物が、もう一体。驚きで一瞬構えが崩れた隙に、二体の力を合わせた蹴りによりふたり並んで吹き飛ばされた。

 

「カリンっっっ!! 狩人っっっ!!」

 

 アキラの悲痛な叫びに呼応するように、皆が動き出す。ライカンの足が二体の動きを凍てつかせた。

 同時に、リナの電撃を宿したエレンの鋏が振り下ろされる。

 

 効いた。確かに手応えを感じた一同。しかし。

 

「あれはっ……」

 

「プロキシ様! エレン、リナ、下がりなさい!」

 

 二体が向かい合う様に手を繋ぐと、コマのように回転し始めた。

 そのまま、突進。スピードだけでなく、質量も乗せた攻撃。

 

 咄嗟に避けるライカン達。それを尻目に、狩人とカリンがようやく立ち上がる。

 

「あの回転……挟み込んでもパワーで負ける……ならばっ!」

 

 名案を思いついた狩人が、急いで回転ノコギリを改造しだした。

 二枚あるうち、片方の円盤を手でベリベリと取り外し、裏返してもう一度取り付ける。

 

 これでよし。そう思った矢先──。

 

「危ないっっ!!」

 

 エレンが、叫んだ。見れば奴らは次の突進の準備をし始めている。回転が勢いを増す。確実に、狙いはこちらだ。

 

 こうしている暇は無い。すぐさま回転ノコギリを立たせセ〇ウェイの要領で円盤の間に乗ると、全力フルパワーで起動させた。

 

 左側の円盤と、裏返されたおかげで逆方向に回転する右側の円盤。

 

「あれは、まさかっっ!」

 

 アキラが声を出して驚く。

 

 なんと、それぞれ逆方向にかかる回転により、狩人が直立しながら超高速でドリル回転をし始めたではないか。

 

 三半規管をズタボロにされながら、カリン、と声をかける。

 

「狩人さん……っ!!」

 

 今度はお前が()だ。わざわざ声に出す必要など無かった。

 

 跳躍。カリンが飛び上がった。ばふんっと音を立て、狩人の顔を腹にうずめさせる。

 狩人の視界がメイド服で埋もれた。

 

「来るぞっ!」

 

 二体の怪物が、ついに突進を始める。狩人の読み通り、こちらに一直線であった。

 

 同時に、狩人の顔面にしがみついていたカリンが、その手に握った丸ノコを突き出した。

 

 ギャリリリリリリリリリリリ!!!!!!! 

 

 激突する二つの回転。しかし、どちらも削れていく様子は無い。

 アキラがいち早く理由に気付く。

 

「あの回転っ! 方向が同じだ!!」

 

 ふたりの回転は、怪物のそれと重なり、全てを右から左へと受け流していた。

 対抗すれば、質量で押し潰される。故に、流す。

 

 超高速で回転する狩人に乗り、丸ノコを突き出すカリン。そのあまりの速さに残像が生まれ、ふたりは一つの「傘」となった。

 

 受け流し、防ぐ盾。襲い、斬り伏せる剣。その両方を兼ね備えた、高速で回転する絶対無敵の「死の傘」。

 そう、ふたりはデスパラソルと化したのだ。

 

 やがて弾かれる様にしてお互いに距離をとり、もう一度ぶつかろうと怪物が回転速度を上げる。

 

 限界を越えたその速度は、怪物自身の身体をも破損させていく。最期の一騎討ち、というわけだ。

 

 負けじと、狩人もノコギリの出力を上げる。カリンも地面に丸ノコを押し付け、ふたりの回転スピードは指数関数的に上昇していった。

 

 来る。怪物が最期の突撃を放つ。こちらに向かい全力で突っ込んでくる二体。その時だった。

 

 狩人の回転が限界を越えた瞬間、カリンが自身の丸ノコを思い切り持ち上げる。そして──。

 

「馬鹿な……」

 

「まあ……」

 

「……ウソでしょ?」

 

「なんというか、流石にもう驚かなくなってきたな……」

 

 ──ふわり。と、ふたりは飛んだ。跳んだのではなく、飛んだ。

 

 カリンが斜めに構えた丸ノコが空気抵抗から揚力を生むプロペラとなり、狩人の圧倒的な回転スピードに乗って二人を空へと押し上げたのだ。

 

 そのまま、怪物を飛び越える。パーツの無い顔でも、驚いている事は分かった。

 

 そこからは一方的であった。自由自在に空を飛ぶデスパラソル・ヘリコプターへと進化したふたりに、怪物はなすすべもなく蹂躙されたのだ。

 

 一方ライカン達はライカン達で、バグったゲームの様に間抜けな挙動でびゅんびゅんと空を飛ぶ彼らを呆然としながら見つめる事しか出来なかった。

 

 あのリナが「マジか」と小声で呟くのを、ライカンだけは聞いていた。




次でレイン編終わりです。
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