どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
前回思いましたが、長い文は難しいものですね。途中でめんどくさくなっちゃいます。
みんなどうしてるんだろう…
狩人は食事を楽しんでいた。とても珍しいことに。
「うわ~、凄い食べっぷり。やっぱり大食い大会に参加するべきだって! お兄ちゃんも言ってあげてよ!」
「こら、リン。あんまり人に物事を強要するものじゃないぞ。まあ、彼の胃腸と食欲が普通じゃないというのには概ね同意するけれども……」
「オイオイ、幾らなんでも食いすぎじゃないか? 腹が破れちまうぞ!」
「アンタ、一体どこにそんな量のメシ入れてるわけ……?」
「産まれて初めてうまいモンたべたって感じの食いっぷりだな……」
この食べ放題、自分の料金は自分で払っているため誰も直接狩人を止めるようなことはしなかったが、その異様な食欲には皆驚かされていた。
最も、致し方のない事であろう。上位者の臍の緒や丸薬ばかり口にする日常を続けていれば、ニコ達やアキラ兄妹も狩人と同じ反応をした筈だ。
それに付け加え、狩人は不死人であり上位者。どれだけ飲み食いをしなくても問題が無いならば、当然逆も然りだろう。
「明らかに、人間の胃が許容する量を超えてる。
アンビーの言葉に、がらりと雰囲気が変わる。
アキラ兄妹と猫又はまだ見ていないが、先の屠殺人との死闘で、確かに彼は死んだ筈なのだ。それはもう、ぺっちゃんこにされて。
未だにその光景が瞳の裏に焼き付いているせいで、ニコ達はせっかくの食べ放題なのにも関わらず肉を避けているのだ。
説明を、と狩人に視線が集まる。
「な、なあ……狩人が死んだってのはほんとうなのか? あたし、まだ信じきれてないんだが……」
「ああ、死んださ」
「ええっ! 待ってくれよ狩人! そんじゃお前はまさか……幽霊!?」
「落ち着け、ビリー。そういえば言っていなかったな」
パニックに陥るビリーを窘め、狩人は話し始めた。
「結論から言ってしまおう。私は不死だ。死ねば、近くで……場合によっては、離れた所で蘇る」
途端に、テーブルがざわついた。
不死。この世の理から外れた者。その事実は、邪兎屋の面々を驚かせるのには十分過ぎる程のものだった。
「なぜだろう、あまり驚きを感じないな……」
「うん、私も……」
ワープが出来る人間に今更常識が通用する筈も無いか。兄妹はそんな反応だった。
「一体何があればそんな……」
「長い話になる。食べながらでも良いか?」
狩人は目の前に出された料理に手を伸ばした。大抵は肉であり、魚介類の姿は無かった。トラウマなのである。
ステーキ、スープに刺身に鍋。パンに米までとにかく美味い。いや本当に美味過ぎる。これに比べれば山岡さんの臍の緒はカスだ。
いつか人形ちゃんにも食べさせてやらねばな、と決意した。
ミルクティーを除けばヤーナム来訪以来初めてありつけたまともな飯にかぶりつきながら、狩人はヤーナムでの出来事を語った。
特別な輸血により不死になったこと。獣の病のこと。ヤーナムという地獄のこと。自分にだけ見えるランタンから蘇ること。
そして、己が人を越えた上位者であることを。
「ヤーナム……聞いた事も無いな」
「じょーいしゃ、って……つまり何よ、アンタ神サマかなんかってわけ?」
「かもしれんな。自分でもあまりそんな気はしないが」
アキラの方を見やると、何やら顎に手を当てて考え込んでいる。
リンはあんぐりと口を開いていた。今回は流石に驚いたのだろう。まさか人ですら無いとは。
アキラが口を開く。
「待ってくれ、君もその寄生虫塗れの血を入れているんだよな? ということは……」
「ああ、安心してくれ。今でもたまに血に酔うことはあるが、上位者は獣にならん。貴公らを取って食う様なことはないさ」
そもそも、上位者になったのは獣の病を克服するための事だったのだと付け加える。
ついでに、今誰かに血が入ったとしても、この街の医学なら寄生虫だけを取り除けるだろうということも伝えておいた。
ならとりあえずは一安心か、と胸を撫で下ろす一同。どこもかしこも獣だらけのこの街で、今更何をそんなに恐れているのだろうかと疑問に思う狩人であった。
「話はこの辺で良いかね。皆も食え。宴会はまだ始まったばかりだろう」
それもそうかと、皆がまた一斉に各々の食事に手を伸ばす。先程までの陰鬱な空気はすっかり消え去り、後には笑顔だけが残った。
魚や貝を見る度に一瞬顔を顰める狩人と、肉やジャムを見る度に一瞬顔が曇るニコ一行ではあったが。
楽しい宴会もいつかは終わるもの。最後に皆で写真を取り、食い放題の店の前でニコ達と別れを告げた。
元気でな、と彼らの背中を見送ると、いつのまにか足元に小さな影が居た。猫又だ。
邪兎屋の皆に気付かれないよう、抜け出して来たのだろうか。
「どうしたんだ、こんな所で。早く戻らないと、仲間が心配するぞ」
「その……なんていうか……お前には、まだありがとうって言ってなかったから……」
なんだ、そんなことかと狩人が笑う。
「良いのだよ。私がやりたくてやったことだ。寧ろ、謝りたいくらいだ。聞くに、トラウマを負ったそうじゃないか*1」
「それは……でも……」
もじもじと俯く猫又を見た狩人は、そうだ、と言って彼女に何かを握らせた。
固い感触に手のひらを開けてみれば、そこにあったのは小さなオルゴール。
「これは……?」
「ほんのプレゼントさ。私が持っているより、君の家に飾っておいた方が有意義だろう」
さあ、早く行け。そろそろ邪兎屋の連中も気づいた頃だろう。
そう告げると猫又は涙ぐみ、もう一度ありがとうと述べると、彼らの仲間、その方向に向かい夜の人混みの中へと消えていった。
……きっと、彼女が持っていた方が、あの少女も報われるだろう。
そう心で呟きながら、狩人もルミナスクエアのランタンへと向かっていった。
またしんみり回みたいになってしまった。
二章辺りは思い切って一旦飛ばします。
早く帰ってきたノコキュアを書きたいので。
いつか書くのでお許しを。