どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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カリンは狩人と絶対に絡ませたかったんですよね。
出せて嬉しいです。

それと昨日、二次創作日間ランキングで3位を取っていました。
とても嬉しいです。皆様本当にありがとうございます。


ふたりはノコキュア

 そこからは、俗に言う快進撃というやつだった。

 狩人が右に動けば、カリンは左。カリンが右なら狩人が左。一つの生き物にすら見える完璧な連携で敵を薙ぎ払っていく。

 そう、ふたりはノコキュア(丸ノコ兄妹)であった。

 

「あいつら、元々の目的忘れてないかぁ……?」

 

「なんというか、まあ……仲がよさそうなのは良い事なんじゃないかな……」

 

 息ぴったりに暴れ回るノコキュアの後方で呆れているのは猫又とイアス、正確に言えばそれを操るアキラである。

 特に猫又の方はその音がかなり不快なようで、戦闘中もずっとその小さな耳を畳んでいる。

 

 突然現れたゴリラのようなエーテリアス。身の毛もよだつ様な咆哮を上げるが、心の底から通じあった狩人&カリンコンビの敵では無かった。

 

「いくぞっ!」

 

「はいっ!」

 

 右腕の振り下ろしを狩人が前方向へのステップでひらりと躱すと、そのままの勢いで化物の腹部に回転ノコギリを突き立てる。

 

 激痛からかまたもや鼓膜をつんざく様な咆哮を上げるそれの左腕を、カリンが切断。

 狩人も右腕を切断し、倒れ伏したそれの頭部をふたりで同時に叩き潰した。

 

 今度は弓持ちが現れた。

 姿を消しては現し相手を苦しめる強敵だが、今回その強さを発揮することは叶わなかった。

 

 姿を消す暇も無くふたりに挟まれ、それぞれ逆方向にかかる回転により哀れにも一瞬でその身体を両断されたが為である。

 

 ギャリギャリギャリギャリ、やかましい音を立てながらありとあらゆる敵という敵を挽肉に加工していく。

 その少々残虐すぎる様にも思える狩りの中で、しかしカリンは幸せを感じていた。

 

 まるで、存在しない兄弟と出会った様な一体感。

 気付けば数十分前までの挙動不審な様子は消え去り、爽やかな笑顔を浮かべながらノコギリを振り回していた。

 ……人格変わってないか? 狩人は訝しんだ。

 

 カリンの脱出用の「裂け目」を見つけた。歪んだその空間は、ホロウの外へと繋がっている。

 悔やまれるが、ここでお別れだ。

 

「では達者でな、カリン。良い狩人よ」

 

「は、はい……! 狩人っていうのは良く分かんないですけど……狩人さんと戦ってると、なんだか少し自信が付いた気がしました! ありがとうございます!」

 

 アキラと猫又にも深いお辞儀をして礼を言うと、いつか必ず再会しようと約束し、固い握手を交わしてから、カリンは裂け目に潜っていった。

 

 己の態度が破茶滅茶に崩れていた事に後から気付き、赤面するカリンを狩人達が見る事は無かった。

 

 そうこうしている内に、もう列車に追いついた。

 トンネルを駆け抜けるそれの上に、猫又がイアスを放り投げる。

 

 これでよし、か。 意外に楽な仕事だったなと狩人は肩透かしを食らった様な気分になっていた。

 

 ……ピンチに陥ってないか? 

 銃口を向けられるイアスに狩人が気づくのと同時に、猫又が列車の窓を蹴破った。

 

 加勢したいが、まさか自分も飛び込む訳にもいかない。まず間違いなく死ぬ。

 

 狩人がしどろもどろとしながら列車を追いかけていると、イアスが窓から放り出された。咄嗟にキャッチした。

 その拍子に狩人は名案を思いついた。

 

「猫又はきっと大丈夫! 今は戻ることだけを考えよう! 列車の方向は変えた!」

 

「ダメだ。ここで少しでも敵を減らしておく。猫又、しゃがめっ!」

 

 そう言って狩人が取り出したものを見て、アキラは度肝を抜かれた。

 

「ガトリング……!?」

 

 猫又がこちらを一目見るなり一瞬で顔を真っ青にして身体を隠すのを確認すると、右から左へ流れていく窓に向かって、狩人は何の躊躇いもなく引き金を引いた。

 

 轟音。凄まじい発射レートで繰り出された弾丸達は、瞬く間に列車をミンチ工場へと変貌させた。

 

 水銀弾を撃ち尽くした時、猫又以外には運良く弾丸の雨から逃れたほんの十数名を除き、木っ端微塵、バラバラの肉塊だけが列車の床に乗っていた。

 

 これでよし。

 残りは頑張れよ、と大声で猫又に告げた。聞こえたかは知らない。*1

 

狩人はイアスを護衛しながら出口まで向かった。

 

 ……至近距離でガトリングをぶっ放され耳を傷めたアキラに説教されながら。

 

 あの兵士達、治安局のポスターに描いてあったそれと姿が同じだった。

 治安局が何故こんな事に関わっているのか。狩人は少し考えたが、すぐに面倒臭くなりやめた。

 

 翌日。店の兄妹に呼ばれて来てみれば、猫又が居た。

 ちゃんと脱出出来たのだなと安心する暇も無く、彼女はとんでもない事を口にした。

 

「あいつらが爆破する予定の街には、まだ人が住んでるんだ!」

 

 狩人の思考が、一瞬止まった。

 

 聞くに、彼らが爆破する「無人の」街は、しかし巨大なスラムとなっており、治安局の格好をして住民を安心させている間に消し飛ばしてしまおうという魂胆らしい。

 

「……なんだと」

 

 瞬間、狩人の記憶から映像が引っ張り出された。その舞台は、旧市街。

 

 獣と、まだまともな人間。その一切の区別なく纏めて焼き尽くした地獄、その痕跡。

 教会の昏い過去、その全てを煤の中に葬ったあの鬼畜の所業を、もう一度繰り返そうと言うのか。

 

「もう一度、だ」

 

 もう一度、ホロウへ向かうぞ。激情に震える狩人が静かに発したその言葉に、反対の声を唱える者は居なかった。

 

 数時間も経たない内に、邪兎屋のメンバーとは合流出来た。

 

「この声は……プロキシ! 猫又まで! ……えっ狩人? なんで?」

 

 本気で困惑するニコ達に、今までの出来事と、これから行う作戦の内容を伝える。

 

 パールマンの連中が固まっている所をホロウを通って迂回し、敵の本拠地に奇襲をしかける。

 列車を奪い、住民を乗せ、この街からはHasta La Vista(さようなら)。完璧な作戦だ。

 

 住民を地下鉄に集めていると、遠くの方でニコ達と話し合っている猫又の声が聞こえた。

 

「えっ……シルバーヘッドを殺したのって、あんた達じゃ無かったのか……?」

 

 自分には分からない事か。狩人はまた自分の仕事に専念した。

 

 住民を集め終わった狩人達は、皆でホロウへと突っ込んだ。

 

 やはり、彼らは強い。狩人はもう一度確信した。一人ひとりが強者なのもあるが、注目すべきはその連携だろう。狩人がカリンと行ったそれを、地で行っているのだ。

 

 自分にもこんな仲間が居れば、何か変わっていただろうか。

 

 死んだ者、狂った者、殺した者。彼らの中にもしも、もしも最後まで共に側で戦ってくれる相棒が居れば、自分は何か違う事を成し得たのだろうか。

 

 せめて、彼らの死を防げていれば──。

 

「考えても無駄、か……」

 

 敵を薙ぎ倒していく彼らを支援しながら、狩人はひとり呟いた。

 今は、敵を殺す事に集中しなくては。

 

「な、なんだお前らはぁっ!」

 

 嘘みたいに小柄な男を取り押さえた。こいつがパールマン、諸悪の根源か。

 

 外道の頭に散弾銃を突きつけると、ニコに止められた。ここで殺すと色々不味いらしい。

 残念だが、仕方がない。銃口を離した。それにしても小さすぎるな、と狩人は思った。

 

 これでひとまず一安心か。胸を撫で下ろした時、取り押さえた兵のひとりが叫ぶ。

 

「ご安心を、パールマン長官! 線路を爆破しました! これで誰も逃げられません!」

 

 散弾銃で頭を吹き飛ばした。だが、それが事態を好転させる事は無かった。

 どうする。見れば、四方八方から敵の援軍がやってきている。囲まれた(詰んだ)のだ。

 

「ああ、もう! このだるまのおっさん引っ掴んで隠れるわよ!」

 

 列車の中に立てこもった。今はパールマンを人質にしているが、遅かれ早かれいつかは外に出なくてはならない。

 

 ここで終わるのか。

 また、死なせるのか。深い絶望に心を覆われていると、猫又が笑い始めた。

 

 ああ、遂に狂ったか。無理もない、と哀れむ狩人の感情を、しかし彼女は裏切った。

 

「見て、これ……さっき戦闘の最中に拾ったんだ。私のペンダント……家族の形見……」

 

「猫又の隣に居るこれって……シルバーヘッド……!?」

 

 驚くニコ達をよそに、困惑する狩人。シルバーヘッドって誰だ。

 

 ニコ達と猫又に説明された。シルバーヘッドとは猫又の父、もといギャングに堕ちた自警団の首領だったのだと言う。

 

 ギャングとなったそれを抜けた彼女だが、しかし父への情は消える筈が無かった。

 故に、彼を殺した外道、ニコ達を騙し、危険なホロウにおびき寄せ復讐を果たそうと画策したのだ。

 

 しかし、蓋を開けてみればシルバーヘッドを屠ったのは邪兎屋ではなく、おまけに偶然見つけたスラム住民を本気で助けようとしているではないか。

 

 外道は、どちらか。そんな残酷な問いを、自分に投げかけてしまったのだろう。

 

 狩人は閉口した。こんな話があって良いのか。ヤーナムで、悪夢は終わるべきなのだ。それが、こんな──。

 

 こんな、幼い子供に。

 

 猫又がパールマンを掴む。何をしようとしているのか、狩人には分かった。分かってしまった。

 

「猫又、やめろっ。殺されるのが落ちだぞ」

 

「ごめん、それはできない。私は、あいつらと直々に交渉してくる」

 

「ええっ!?」

 

「おっおい! 待てよ猫又!」

 

「猫又!」

 

 狩人達が追いつくより先に、彼女はドアの向こう側へ行ってしまった。

 開かない。恐ろしく頑丈だ。パイルハンマー等を使えば開くかも知れないが、時間がかかるだろう。

 

 暫くして嫌な沈黙が車内を覆った。それを破ったのは、狩人だった。

 

「何故だ、何故なんだ。どうして、なんだって、みんな行ってしまうんだ。なぜだ、なぜ」

 

 狩人は泣いていた。大粒の涙がマスクを濡らしていく。

 また、救えなかった。やっと、やっと自分にも、誰かを救えると思ったのに。

 

 自分には、殺す事しか能が無い。絶望の泥、その深い、深い底に沈む狩人を、ニコ一行はただ無言で見つめる事しか出来なかった。

 

 啜り泣く声、押し黙る呼吸だけが、暗い車内に響いていた。

*1
突然目の前に広がったあまりの惨状に暫くうずくまったまま震えて動けなくなる猫又だった。




ゼンゼロのストーリー良く覚えてねえ(絶望)
一章の内容は特に…

話のテンポを良く出来ますように。

文章整形機能に今気付きました。めっちゃ便利ですねこれ。
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