どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
皆様のコメント大変励みになります。
※2025/7/17 ストーリー展開に矛盾が生じたので内容を少し大きめに編集しました。お許しを。
実に面白かった。早く返しに行こう。
狩人はRandom Playで目覚めた。真っ昼間だったが、兄妹達を驚かせる事は無かった。
実はあの不法侵入事件を受け、申し訳無く思った使者達が裏の駐車場にランタンを置き直していたのだ。かわいい奴らめ。
鉄柵をよじ登って越えると、店の正面までまわり、改めて玄関から入店する。
……誰も居ない。Openと書いてあった筈なのだが。
カウンターのボンプはとても気持ちよさそうに寝ており、起こすのは憚られた。
また後で来るか、と勢い良く踵を返した時、聞き親しんだ声が聞こえた。
「お兄ちゃん、もっと奥だってば!」
カウンター横の扉からだ。金属製のそれを見るに、恐らく立ち入り禁止なのだろう。
……もっと奥とは?
「すまない、途中で急にキツくなるものだから……ダメだ。とてもじゃないが、これ以上は入りそうにない。なんなら、締め付けが凄すぎて抜くのも一苦労だ」
「だから道具使おうって言ったじゃん……って、も〜! だからってそれは大きすぎだって! そんなのむりやり突っ込んだら、壊れちゃうよ!」
……嘘だろ?
狩人は己の耳を疑った。
良く聞けば、男が少し息を荒くしている様子が分かった。
己の啓蒙を確認してみたが、大して数はない。幻聴という線は考えにくいだろう。
……嘘だろ?
いや、と狩人は思い直した。見た所、二人とも十分大人だ。愛し合っているのならば問題は無いだろう。ここで邪魔するのは野暮というものだ。
そこまで考えた所で、しかし狩人は思い出した。
彼らは兄妹ではないか!
狩人は頭を抱えた。
いや、いや待て……!
唯一露出した肌、目元から冷や汗を大量に垂らしながらも、狩人はまた思い直した。なにもまだ本当に「そういうこと」をしているとは限らない。こちらの勘違いかも知れないと。
そうだそうだ、きっとそうに決まってる。
狩人が店を出ようとしたその時──。
「うおおっ、入ったぞっ!」
「うわあ、ほんとに入った! お兄ちゃん、早く出してっ!」
狩人はドアを蹴破った。大声を上げて驚いた兄妹は、しかしどういうわけか、服を着ていた。何故。
「いや……そのだな……本当に……本当にすまなかったっ……!」
狩人はそれはそれは美しい土下座を決めていた。
なんでも、彼らはタンスの隙間に入ったディスクを取り出そうとしていただけらしい。
指では隙間に入らないから道具を探していたとのことだ。壊れる、とは道具とディスクの事であったか……
「全く、いきなり人の店のドアを蹴破るなんて……ここまでされてしまっては、流石に見過ごせないな」
「うん……びっくりし過ぎて心臓飛び出ちゃうかと思ったもん……ていうか、『何かに襲われている様に聞こえた』ってどんな理由?」
本当の理由など言える筈も無かった。
今回ばかりは流石の兄妹もわりかし本気で怒っているようで、蹴破ったドアの修理代と、ビデオを返す時に追加の料金をたっぷり支払うこととなった。
意外と軽いな、と、狩人は内心思っていた。
人を怒らせれば待つ暇も無く命のやり取りが始まる、目と目があったら即ヤーナムバトルが常識の野蛮過ぎる街で暮らしていたせいであろう。
それでも治安局を呼ばれないだけ本当に温情ではあるのだが。
彼等の優しさは突き抜けている。だからこそ、狩人の抱く罪悪感は凄まじいものだった。
玄関でもう一度心から謝り、店を出た。
扉を開けた瞬間に、凄まじい勢いで突っ込んできた猫の獣人に突き飛ばされもう一度店内に押し込まれる事となるのだが。
一体何なんだ。
猫又と名乗るその獣人に殺意を抑えながら聞いてみると、詳しい事は良くわからないが、とにかく邪兎屋が危ないということが分かった。
なんでも、ギャングに絡まれた彼らが立ち往生している場所は、もうすぐパールマンなる男の建設業の一環で爆薬を詰めた列車により木っ端微塵に吹き飛ばされるのだとか。
狩人の返答は一つに決まっていた。
「猫又。私にも手伝わせてくれ。アキラ、リンもどうか、頼む」
気付けば、口が動いていた。
彼らは、文字通り狩人の命の恩人だ。狩人の命が彼らのそれと比べて遥かに軽いことを考えても、見殺しになどできる筈も無かったのだ。
数時間後には、狩人と猫又はボンプを連れてホロウ内を歩いていた。
子供を戦わせるのには抵抗があったのだが、圧倒的な実力をもって説得された。
これだけの強さがあれば、あの娘も死ぬ事は無かったのだろうか。
──今更か。狩人は一瞬脳裏に浮かんだ考えを振り払った。
このまますぐにでも爆薬を積んだ列車を止めに行きたい所だったのだが、早々に問題にぶち当たった。
「この列車、一体どうするんだ……?」
猫又の前には、脱線した列車が倒れていた。
仕方がない、一旦どっちかが踏み台になって登ろう。そこから手を引っ張ってもう一人も引き上げればよい。
そう提案しようと猫又の顔を覗いたとき、声が聞こえた。
「あ、あの、えっと……」
電車が喋った!!
思わず二人で抱き合い驚いた。というのは冗談だが、アキラまでノッてきたのをリンに咎められた。どうやら、反対側に人が居る様だ。
「い、今そっちに行きますね!」
……どうやって?
跳躍力に自信でもあるのかと考えていると、突然けたたましい爆音が鳴り響き始めた。
何かが高速で回転するような、初めて聞く筈なのに、どこか親しみのある音。
好奇心に駆られ列車に顔を近づけた猫又。
するとまたもや突然、今度は爆音と火花を散らしながら何かが飛び出して来た。
咄嗟にボンプと猫又を掴み、後方へステップ。
薄く丸い板の様なそれに、電車の壁は切り刻まれていった。
ばたんっ。
土煙を上げながら倒れた電車の壁から飛び出して来たのは、猫又と同じような小さな子供だった。
「んしょ、うん、どこも破れて無い……ああっ! どうも、はじめまして……!」
カリンと名乗る挙動不審な彼女の得物を見て、狩人は先程の音に感じた親近感の正体を知った。
「貴公……良い狩人だな」
思わず、口を突いて出た。
あまりにも似すぎていた。変形機構こそ無く、刃も一枚しか無いが、核心は同じだ。
狩人もこれ見よがしと言わんばかりに一つ武器を取り出した。
「えっ……それって……」
「どうだ? 素晴らしいだろう!」
△車輪マンの様な口調になりかけるのを堪え、カリンに見せびらかしたのは回転ノコギリ。
この並ぶ二枚の刃で良く再誕者を挽肉にしたものだ、と思い出に耽りながらカリンの方を見ると、無言ながらも小さな口を小さく、大きな目を大きく開きながら紫色の瞳を輝かせていた。
やはり分かるか、このロマンが。目の前でギャリギャリと火花を撒き散らしながら回転させると、その瞳の輝きは一層強くなった。
この小女、気と身長こそ少し小さいかもしれないが、心に秘めたるロマンはデカいのだ。彼女の反応を、狩人はそう解釈した。
一言二言言葉を交わしただけなのに、何故かもう、心から通じあった気がした。間違いない、彼女はもう
「丸ノコ使いが二人も……勘弁してくれぇ……」
不快そうにぶるぶると震えながら耳を抑える猫又の言葉で我に返った狩人とカリンだった。
流石にそろそろ話進めます。