どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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狩人がニコ達と一緒にホロウを脱出し、Random Playで解散するまでの話です。

日間ランキング12位!!!!有難うございます!!!!!
皆ブラボ好きだな…私もだが。

皆さんの語字報告にも感謝しております。


おまけ:狩人が獣人に慣れるまで。

 狩人がホロウを抜けてから一番最初に苦労した事。

 それは獣人との関わりだった。

 

「とりあえず、ここまで来ればアイツらも追って来れないでしょ……」

 

 息を切らしていたのはニコ。狩人を含めた一行でホロウから抜けだして来た所であった。

 メンバーの安否を確認すると、呼吸を整えたニコが口を開いた。

 

「とりあえず、このままRandom Playに行くわよ」

 

「賛成。とりあえず今は、安全に話し合える場所に行くべき」

 

「オレも賛成だぜ、親分。こんな辛気臭い場所で長話は御免ってやつだからな!」

 

 皆が同意する中、狩人は首を傾げた。

 

「ランダムプレイ?」

 

 口を滑らしたと慌てるニコだったが、ボンプからは意外にも肯定的な反応が返ってきた。

 

「もう、教えてしまっても良いんじゃないかな、ニコ。こんな事を言ってはなんだけど、僕達の事を治安局に垂れ込める立場の人には見えないし……」

 

 なかなかの言いようである。

 今の所戸籍も無い全身黒づくめでノコギリと散弾銃を持った不審者なので全く言い返せないのだが。

 

 どうも、このボンプを遠くから操っている若い男とその妹がやっている店の事らしい。

 表向きは「ビデオ」と呼ばれる動く絵を取り扱っているのだが、その裏ではニコ一行のようにホロウを利用する者達を非合法に案内する仕事を行っているそうだ。

 

「ざっとこんなもんかしら。ていうか、ビデオ知らないってどういう事よ……」

 

「この言葉…こちらではRandamu pureyと発音するのか。それに……」

 

 困惑するニコを置いて、狩人は考えに耽っていた。

 ビデオ。動く絵。是非とも見てみたい。狩人にとって今さら合法非合法など毛程も興味は無く、命の恩人でもある彼らを警察に突き出すような事をするつもりも無かったが、ビデオという存在には好奇心を刺激される。

 

「分かった、向かおう」

 

 すぐに、皆で歩き出した。ノコギリ鉈と散弾銃はしまっておいた。幾らなんでも見た目が物騒過ぎるから、との事だ。

 

 この街についての事をニコ一行──先程知ったが、邪兎屋というらしい──から聞かせてもらっていると、突然、狩人の鼻が、嗅ぎ慣れた忌まわしい臭いを感じ取った。

 

「下がれ」

 

「へ?」

 

「どうしたんだよ、狩人。ここは街中だぜ? 敵なんか……」

 

 機械男、ビリーの言葉をジェスチャーで遮る。アンビーですら困惑している様子だった。ここまでの強者が、気付かないものなのか。狩人は不思議に思った。

 

「この臭い……間違いない、獣だ」

 

 平和な街だと思っていたが、こんな所にまで居るのか。狩人は心の中で悪態をついた。

 静かに、一撃で仕留める。狩人がノコギリ鉈を取り出した時*1、背後からその手を掴まれた。伸びてきた細い腕の主は、ニコだった。

 

「こんな街中で、一体何をするつもり!? 獣……まさか、シリオンのことを言ってるの?」

 

「……まさか、知らないのか」

 

 獣の病について簡潔な話をしようとした時。

 

「そこの御一行方、出て来て下さい。そんな風に殺気を向けられては、散歩も出来ません」

 

 獣の方から、声をかけてきた。喋る獣とは珍しい。初めてではないが。

 

 皆が、物陰から出る。真っ白な獣が一匹、立っていた。足元はビリーの身体の様に真っ黒な金属で構成されており、それが鎧では無いことは狩人にも分かった。

 義足。それも、流れ出る冷気を見るに、かなり攻撃的に作られているものだ。

 

 冷気を纏う仕掛け武器を直接足として使い、流暢な人語を操る獣。

 全てが新鮮だと狩人の血は沸き立ったが、同時に一つ違和感も感じた。

 ──賢すぎる。獣性に屈し、人の血肉を喰らうことしか考えられない獣にしては、あまりに理知的な立ちふるまいをしていた。

 

 まさか。狩人は隠れる様に後ろに回るニコに聞いた。

 

「……まさかあいつ、まともなのか?」

 

 結果として、狩人は白い獣、フォン・ライカンに平謝りすることとなった。

 まさか正気を保った獣がいるとは。ローレンスが聞いたら喜ぶだろうな、と狩人は思った。とっくにあの教会で殺したが。

 

 その後も獣人を見る度にノコギリ鉈を取り出しそうになるのを抑えながら、なんとかRandom Playに到着した。

 かわいいが、あの新聞を売っている犬にはこれからも苦労しそうだ。狩人は嘆いた。犬はトラウマなのだ。

 

「やっと着いた……今日だけでどっと寿命が縮んだわ……」

 

 ニコが玄関のドアを明けると、いらっしゃい、と容姿端麗な兄妹が出迎えてきた。心做しか、この街は整った顔立ちの者が多い。

 The・平均顔の狩人は少し居づらさを感じた。暫くこのマスクは外さないでおこうと決めた。

 ニコ達が兄妹と話し始める。プライベートな話らしいので、外で待っておいた。

 

 暫くチラシや新聞を読み、店から出てきたニコ達と少しこれからの事について話し合った。お互いの同意の上協力関係を解消し、別れを告げると、店主の兄妹が話しかけてきた。

 

「狩人、であっているかな? 改めて、いらっしゃい。どうも、ビデオを知らないみたいだけど……」

 

「ああ、知らない。動く絵、というのには非常に興味がある。音も鳴ると聞いた」

 

「動く絵……その言い方、ほんとに知らないんだね。お兄ちゃん、ちょっと見せてあげようよ。きっと良いお客さんになるよ、この人!」

 

 親切な事に、ビデオなるものを少し見せて貰った。というより、テレビというらしいが。

 灰色に縁取られた四角い箱の中で、人が動いている。度肝を抜かれた。絵、というよりは写真だな、と思った。

 ニュースと兄妹が呼ぶそれの内容は入ってこなかった。ただ、写真の中の人物が動いて喋る不思議な光景に見とれていた。

 

 手持ちの金が無かった事が悔やまれたが、近い内にビデオを借りる事を約束した。

 ……まさかあんな形で果たす事になるとは。

 

 人形ちゃんに話したい事が増えたな。そう思いながら、狩人は店を出た。次は何処へ向かおうか、と考えを巡らせながら。

*1
慈悲の刃や弓剣は格納庫で眠らせてました。




ライカンさんのゴリゴリの敬語ムズいですわ!(絶望)

コメントはできるだけ返信しますが、返せない事もあるかもしれません。でも全部読んでます。
読者よ、許してくれ。

ネタ切れ気味かも。
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