どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
服がめちゃくちゃだ。
血だらけ、などという生易しいものではない。服のどこを見ても、血に濡れて居ない部分が存在しないのだ。血液で服を洗濯したかのような見た目だ。右手に握られたノコギリ鉈に至っては、並べられた歯が腸の類を噛み挟み、巻き付けられた包帯は啜り切れなかった血を噴き出す汗の様に垂れ流していた。
が、特段それを気にする狩人でも無かった。ヤーナムを散歩していればこうならない方が珍しい。寧ろ血の匂いに当てられ、少し気分が高揚してすらいた。
もうすっかり日も暮れ、満月が空に昇っている。ヤーナムと比べると大分時間の流れが早い。
もう少し収集したら狩人の確かな徴で帰ろう。まだ試していないが、ランタンがあるなら狩人の夢にも行ける筈だ。
ああ、早く人形ちゃんに抱き締められたい。
そう愛人に思いを馳せていると、遠くから聞こえてきたのは足音。そして声。狩人はすぐさま瓦礫の陰に隠れた。察するに、四人組だ。獣の臭いもする。
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まったく、今日はツイてない。
対ホロウ六課隊員、浅羽悠真は心の中で愚痴を呟いていた。
「課長〜っ。もう帰りましょうよ〜っ。これ以上探しても、もうエーテリアスなんか居ませんって!」
最も、特段心の中だけに秘める訳でも無かったが。
朝から体調が悪いわ、休暇申請は当然の様に断られるわ、こんな夜中まで仕事をさせられるわ……
明日こそは必ず休もうと考えている悠真であったが、ここで探索を終える事が出来ない理由にも勘付いていた。
「それが問題なんですよ、浅羽隊員」
「ああ、これだけ大きなホロウにしては、あまりにエーテリアスが少なすぎる」
まるで、誰かに纏めて消された様に。
実際にそう口にする者は居なかったが、気付いていない者もまた居なかった。
異常事態。少なくとも、このまま帰る訳には行かないだろう。悠真は大きくため息をつき、自分を納得させようとした。その時だった。
「……ッ!!」
「あれ、どうしたんですか? 副隊長。 具合でも……って……! これは……っ!」
思わず鼻を覆った。
臭い。それもかなり強烈な。
肉の焼ける様な不快なそれに、硝煙や鉄の臭いが混じっている。鉄の臭い、とは言っても他の臭いからして、本当に鉄な訳ではまず無いだろう。
「柳ねえ、これ、もしかして……」
「下がっていて下さい、蒼角。 皆さんも、気を引き締めて」
全員が臨戦体勢にあった。蒼角も、多少怯えてはいるがいつでも戦える様に構えている。
臭いの発生源へはすぐに辿りついた。
陰惨。その一言であった。道路中に飛び散った、死体。その殆どが原形を留めておらず、身体を両断され、腹の中身を地べたに撒き散らしているものも多かった。
「おえぇっ……」
堪らず、蒼角は嘔吐した。朝から昼に食べたもの全てを一気にぶちまけても、まだ残っているだろうと言わんばかりにえずき続けていた。
「おい。そこのお前、出て来い。瓦礫に隠れて何をしている」
空気が凍りついた。
蒼角と、彼女を心配していた柳が振り向くと、それは瓦礫の陰から、ゆっくりと姿を現した。
「あ~あ、まったくツイてないな、今日は……」
姿を見せた、全身血塗れの男を見て、悠真はもう一度悪態をついた。
悠真だいすき