どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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血と硝煙と時々うんこ。

 ホロウを脱出し、Random Playに到着した。ビデオ、なるものを売っているらしい。

 ──やはり、ここはヤーナムではない。

 ホロウを脱出し新しく目の前に広がった街並みを見て、狩人はもう一度、そう確信した。あまりにも清潔過ぎる。

 その辺に死体が転がり、常に死臭と腐臭、そして血と硝煙と時々糞の匂いまでするヤーナムにつむじから足の爪先までどっぷりと浸かっていた狩人から見れば、異常にすら感じられる程綺麗な街並みであった。

 何より住民が誰も殺しにかかってこないのだ。間違いなく、ヤーナムではない。

 

 ニコ達と別れた。

 狩人の目的は未知に溢れたこの街を自由に探索することだが、上下関係のある邪兎屋についていけば、それは難しいと考えたのだ。

 またニコ達はニコ達の方で、相手の内臓を直接引っ掴んで引き摺り出すノコギリと散弾銃を持った黒づくめの男などという「あからさま過ぎる厄ネタ」にはできるだけ関わりたくなかったのだ。

 店主の兄妹は客としてなら歓迎すると断言してくれたが。

 

 

「どこへ行こうか……」

 

 Random Playの中にあったランタンを灯し、死んでもあのホロウとやらに送り返される心配が無くなった狩人*1は、次に向かう場所を考えていた。

 

 ホロウが良い。

 それが前提であった。貴重な発見は、いつだって危険と隣り合わせなのだ。虎穴に入らずんば虎子を得ず、というやつである。

 そして、危険な場所と言えばホロウだ。地形は歪み、化物共が我が物顔でそこらを闊歩している。

 

 数刻前は油断したおかげで死にかけたが、単体で強いものは少ない。注意を払って一匹ずつおびき寄せるようにすれば一人でも問題なく攻略できるだろう。スローイングナイフの時間だ。そしてこの先、走り抜けがあるぞ。

 狩人は早速、ビデオ屋の兄妹から貰った地図を広げた。

 先程まで居た所を除いて、最も近く、それでいて大きいホロウ。それに鉛筆でぐるぐると大きな印をつけ、自身の向いている方角をコンパスで確認すると、軽い足取りで歩き出した。

 

 存外に、ホロウは近かった。入ろうとすると、近くにいた官憲の様な制服を着た者達が静止しようと向かって来たが走り抜けた。どうやらホロウの中までは追ってこない様だ。狩人は胸の沸き躍る思いで探索を始めた。

 

 油断さえしなければ、狩人にとってホロウはあまり危険な場所では無かった。当然どこもかしこも化物ばかりではあるが、それはヤーナムでも同じ事だ。寧ろ、化物に殆ど知能がない分、悪質な罠が張り巡らされたヤーナムの方が危険にすら思えた。

 一匹ずつ釣り出し、集団に気付かれれば囲まれる前に走り抜ける。それさえ徹底すれば、経験を積んだ狩人が殺されるような事は無かった。

 

 肝心の収獲だが、これは胸を張って探索の甲斐ありと言えるものであった。この世界での通貨と思わしきものや、まだ使えそうな服、たまに武器も見つかった。多くは水銀弾を使わない銃や仕掛けもないただの警棒などのつまらないものばかりだったが。

 日記や本もあった。こういった読み物が大好きな狩人は多いに喜んだ。日記を読み物というのには些か問題がある気もしたが、これを勝手に読まれて怒る持ち主は恐らくもうこの世には居ないと考え、結局狩人お得意のなんでも入る懐にしまった。

 

 狩人が道路に散乱した本棚を漁っていると、声が聞こえた。おいっ、と。真後ろから。人間のそれだ。

 バカな。こんな所に人が居るはずがない。

 己の事は棚に上げそんな事を考えた狩人が振り向くと、そこに居たのは確かに人だった。

 興奮しているのか、少し紅潮した肌。少し筋肉の浮き出た腕に、化物が着る事のない、服。その他呼吸や皮膚越しに香る血の匂いが、目の前のそれが──頭部に真っ黒な球体を被っていても──人間だと語っていた。

 

「ごきげんよう。この本棚は君のものかね。ならすまないな、取った本は今すぐ返そう」

 

「……? 知らねえよ! 本のことなんかどうだっていいんだ! ここが何処だと思ってる! 誰のシマか分かって入って来てんだろうなあ!?」

 

 ああ、そういう手合いか。

 狩人は心の中で呟いた。シマ、という言葉から察するに、ここは彼、いや恐らく「彼ら」の支配域だ。そして、まず間違いなく碌でもない集団だろう。自分の知っている言葉で最も近いのは、Bandit(野盗)か。

 仲間も既に呼んでいたようで、路地の隙間からぞろぞろと飛び出して来ている。

 ……ふと、振り向く。後ろには誰も居ない。「囲まれてはいない」。最後に触れたランタンは遠く、もし死ねば戻って来るのにはさぞかし時間のかかる事であろう。そもそも、またここに戻って来れるのかすら定かではない。

 狩人は、前を向き直した。

 

「有り金みんな置いてくってんなら、命だけは助けてや」

 

 外道の声は、散弾銃の怒鳴り声に掻き消された。

 鼓膜に恨みでもあるような爆発音と共に飛び出した散弾は、つい先程まで喋っていた哀れな彼を吹き飛ばし、その身体をスポンジの如く穴だらけな肉袋に変えた。

 

「コイツッッ!」

「敵だ!」

「殺せ!」

 沸き立つ外道達を視界に収められるよう位置を変えながら、散弾銃で牽制。

 血質を高めていたのもあってか、みるみる内に数が減っていく。

 この調子ならいくらでも相手が出来そうだ。

 

「囲め!」

 

 少し不味いかもしれない。

 まずは数を減らさねば囲まれる(殺される)。そう確信した狩人は、敵の一番密集している所を見つけると、突然、冗談みたいな大砲を取り出した。顔が見えずとも、彼らが目を丸くしているのが分かる。

 彼らの動きを待たずして、発射。バカみたいな曲線を描きながら飛んでいった砲弾は、着弾と共に爆発し、周囲一帯を血と糞と火の海に変えた。

 気を取られている隙に、火炎瓶を投擲。即死出来ずに悲痛な声で泣き叫ぶ被害者達をよそ目に、狩人は随分と数の減った外道達に突っ込んで行った。

 

 ステップで距離を詰めた勢いで、ノコギリ鉈の横薙ぎ。展開しながら右から左へと繰り出されたそれは、四、五人程を纏めて両断し、その身体のあまりに乱雑な断面を晒し出させた。

 間髪入れずに繰り出した畳みながらの変形攻撃を終えるや否や、今度はただひたすらに振り回し始めた。少し疲れれば、散弾銃を放ちながら呼吸を整える。また一人、また一人と人数が減っていく。

 我武者羅にノコギリ鉈を振り回していた狩人がようやく我に返った時、その道路上に狩人以外の生命は存在していなかった。

*1
「そういえばお兄ちゃん、なんであの人、店に入るなり指パッチンしたんだろ?」 「さあ……? まるで、そこに何かがあるかのような動きだったけれど……」

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