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消えた214万8000キロカロリーの行先

「食べ過ぎれば太るに決まっている」と反論される前に、本書に紹介された実験を見ていただきたい。
50年前にアメリカの科学者チームがバーモンド州の刑務所で、囚人たちに過食させて3カ月間で体重を25%増やす実験を行った。

囚人の摂取カロリーを1日2200kcalから4000kcalに増やし、最初は順調に増えたが25%にまるで届かないうちに頭打ちになった。科学者たちは囚人たちの摂取カロリーを1日8000~1万kcalに増やした。それなのに、体重の増え方は鈍く、あるところから増えない囚人も出てきた。
なぜか。理由は、多くの囚人たちの代謝が大幅に上がったためだった。

最近(2006年)の別の場所(ミネソタ州ロチェスター)での過食実験でも、過食に応じて、基礎代謝率が平均10%上昇することが確認されている。
過剰に食べると、体は体重が増加しないよう、代謝率を上げようとするのだ。

別のデータもある。
1980年代から90年代にかけ、アメリカでは加工食品の摂取量が増え、平均的なアメリカ人男性の摂取カロリーは1日2200kcal(1980年)から2700kcal(2000年)、1日あたり500kcal増えた。1990年のアメリカ人男性の平均体重は82kgだったが、これにより12年後には88kgになっている。体重は増えている。だが、食べているほどには増えていない。

本来なら、1日500kcal×365日×12年で219万kcal、7000kcalで1kgの脂肪になるので、計算上では219万kcal÷7000kcal/kg=26kg増えなければならない。
だが、実際は6kg増。過剰に摂取した214万8000kcalがどこかに消えてしまった。

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このことから、「なぜ太るのか」の答えが、「カロリーを摂り過ぎるから」だけでは説明がつかないことが、わかっていただけるだろうか。

体には「今の体重を維持しよう」とする働きがあり、それを超えそうになると、代謝率を上げて、余分なエネルギーを貯蔵に回さず、せっせと消費しようとする。アンドリュー医師は体が保守しようとする体重を「セットポイント」と呼んでいる。

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実はこの「セットポイント」は、ダイエットの後にやってくる恐怖のリバウンドと密接な関係にある。
「セットポイント」を制する者が、「リバウンド」を制するともいえる理由を、明日公開予定の続きの記事で詳しくお伝えする。

構成・文/風間詩織(FRaUweb)

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