上田準二さんの「お悩み相談」。今回はグループ子会社の取締役を務める42歳の男性から。経営に関わる貴重な経験を積む一方で、「便利屋」のままで本社に戻れないのは嫌なのだとか。上田さんは「どこにいても、誰かが必ず働きぶりを見ている。業務の一環として本社に報告しに行くことも忘れずに」と助言します。

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悩み:グループ子会社の取締役として経営に関わっています。貴重な経験ですが、このままだと便利屋で終わりそうです。本社の部長や執行役員として戻るにはどうすればいいでしょうか?

 新卒で入社して29歳で営業所の責任者になり、35歳のときにM&A(合併・買収)で新規グループ入りした子会社に取締役として赴任しました。取締役といいつつも、営業や総務、経理、採用などの業務も現場責任者として担当しています。営業畑が長かった私にとって、会社の経営や運営に携われるのは苦しいながらもいい経験です。その後もグループ会社の設立に関わり、取締役を務めています。

 しかし、人事考課では同期とは別の評価体系になっており悶々(もんもん)とした日々を送っています。何でもそれなりにこなせる器用さを評価してもらっているとは感じますが、本社での役職は上がらず、営業所の責任者時代から年収はさほど変わりません。賞与はむしろ下がっています。

 このまま便利屋で終わりたくないですし、本社の部長や執行役員になりたいという願望もあります。一方で、子会社にいては状況が変わらないのではないかと迷ってもいます。スカウト会社からオファーをいただくこともありますが、踏ん切りがつきません。何かアドバイスをいただきたく存じます。

(42歳、男性、会社役員)

上田準二:35歳で子会社の取締役になって今42歳だとすると、もう7年か。確かに長いかもしれないね。

小笠原啓(日経ビジネス編集):「片道切符」なら別ですが、相談者さんの年齢で出向する場合は社外で経験を積ませるのが大きな目的ですよね。2~3年という期限が決まっているのが一般的かなと思います。

上田:だとすると、相談者さんの仕事のやり方を考え直す必要がありそうだ。数十年前の話になっちゃうけど、僕の経験をベースに考えてみよう。

 総合商社時代、僕は何度か子会社に出向しているけれど、相談者さんのケースと一番近いのは42歳のときかな。もうすぐ課長になるというタイミングで出向し、3年後に本社に戻ったときは課長を飛び越して部長になっていた。その子会社は業績が苦しく、あと1年で清算されかねない状況だったんだけど、色々な人の協力を得られたことで何とか収益を稼げる会社に生まれ変わった。2段階、3段階上の役職で戻った最大の要因はそこかな。

 そのときに気付いたのは、親会社にいようが子会社にいようが、誰かが必ず仕事ぶりを見ているということ。子会社という舞台でどんな能力を発揮しているか、それが業績にどう反映されているかは、送り出した親会社の方でも気になっているからね。人事制度や評価体系が違っていたとしても、これは間違いないことでしょう。

小笠原:相談者さんは取締役として赴任して、新しく立ち上げたグループ会社でも役員として枢要な地位にあります。高い評価を得ていることは確かでしょうが、人事に対して、特に賞与に関してモヤモヤした気持ちが拭い去れないようです。

「本社を向いて仕事をしている」と思われたっていい

上田:正当に評価されてないという思いがあるんだろうね。でもそれは、相談者さん自身の行動が招いた結果かもしれないよ。本社の管理下にある子会社に取締役として派遣されているなら、本社の管轄部署に業績や取り組みを報告する必要がある。それがないがしろになっていないだろうか。四半期に一度のペースだったなら、毎月報告してみてはどうだろう。本社に立ち寄ったタイミングで、いつも報告する相手とは別の人に会ってみるのも手かもしれない。本社がきちんと経営状況を把握できるようにすることは、子会社取締役の重要な職務だからね。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

小笠原:本社の方ばかり向いていると、「親会社に戻りたいという目的で働いている」と子会社の社員に思われないでしょうか。

上田:そう取られても仕方ないけれど、子会社の取締役の職務とはそういうものでしょう。株主である本社に対する報告業務が「出向復帰のため」と思われたとしても、全く気にする必要はないですよ。逆にそういう認識を持たれても構わない。

小笠原:なぜでしょうか。

上田:相談者さんが今、どんな目的で仕事をしているかが答えかな。投稿にあるように、本社で部長や執行役員になりたいのでしょう。大きな裁量が認められている子会社でのびのび働きたいのではなく、出向で学んだ経営のスキルを生かしてビジネスパーソンとして上を目指したいわけだ。ならば、最短距離を進むべきじゃないかな。

 器用さを評価されていると自覚しているぐらいだから、子会社の取締役としてのミッションはきちんとこなしているのでしょう。ならばその事実を、業務の一環として最低でも月に一度は報告しに行ってはどうか。本社で偉くなれないと思い込んで鬱々と仕事するのではなく、楽しんでアピールし続ければ上長の見方も変わってくるはずだ。

小笠原:いずれにしても子会社で実績を積まなければ、いいポジションで本社に戻るのは難しいでしょうしね。

上田:そうそう。外部からスカウトが来ているのは実力があることの裏返しなんだから、自信を持っていい。年齢的な期限は45歳ぐらいだと思うから、あと3年間は徹底的に今の仕事を続けてください。その間に本社に戻る機会が出てくるでしょう。仮に3年後もポジションが変わっていないなら、その時点で踏ん切りを付ければいい。それだけの能力をお持ちだと思いますよ。

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