黒蝕竜現る   作:ヒゲホモ男爵

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だいぶ遅くなりました。
ナイトレインが楽しすぎたのがいけない。
あと絵。

たくさんのアンケートご協力ありがとうございますわ!六課とヴィクトリア家政が2トップになったのは意外でしたわ。これを反映して六課が舞台となりました。
次話はパエトーン視点と続く六課視点の2本構成でお送りいたします。




残業フライハイ

 

 

 ──対ホロウ特別行動部第六課。

 

 

 別名H.S.O.S.6(HOLLOW.SPECIAL.OPERATIOS.SECTION.6)

 

「特別行動部」

「対ホロウ六課」

「第六課」

 なにせ名前が長いので、略称は様々。

 ご自由にお取り下さい。

 

 六課は新エリー都のホロウ事案を管理する公的組織『H.A.N.D』に属する、対武装組織/対ホロウ特別行動部の部署のひとつ。

 超級と呼ばれる危険なエーテリアスの討伐、ホロウ災害の関する危険度の高い事件の調査、『H.A.N.D』に関わる"極めて"デリケートな任務などを担当する。

 

 特別行動部の職員は「執行官」と呼ばれ、部外の局員や市民に対する命令権を持つ。

 その呼び名は彼らが対ホロウ及びエーテリアスのエキスパート集団であることの証明であり、上層部の命令に絶対服従とする首輪をつけた番犬であることの証明。

 現代の『虚狩り』星見雅の率いる六課は、その最大戦力として民衆を初めとした方々から畏怖と畏敬の念を向けられる存在。

 

 

 

 ……しかし、もし今日この日、この瞬間。

 書類の山を前にして現実逃避している彼女を目にしたなら、誰であれ言葉を失うだろう。

 

「柳、今日は天気がいいな。小鳥の囀りも心地良い」

「課長……? そっちは天井ですよ……?」

 

『虚狩り』の星見(ほしみ)(みやび)、対ホロウ六課課長。

 業務に対する禁断症状につき幻聴および幻覚。

 業務進捗度60%。

 

「ねぇねぇナギねぇ、何か手伝うことある?」

「大丈夫ですよ蒼角、それよりも戦鬼刃旗*1を直してくださっている職人の皆さんにお茶を出して来てくれますか?」

「わかったー!」

 

『お菓子狩り』の蒼角(そうかく)、対ホロウ六課職員。

 お茶出しの任務に出発。

 業務進捗度-%。

 

「じゃあ僕もご一緒しようかなぁ〜」

「浅羽隊員、進捗はいかがですか?」

「蒼角ちゃん待ってェー! 僕をこの書類地獄から救い出してェーッ!」

「いってきまーす!」

 

『有給狩り』の浅羽(あさば)悠真(はるまさ)、対ホロウ六課職員。

 本日の半休申請はカルテ(半休理由)の用意不足につき提出できず。

 カルテ──なし。

 半休──なし。

 残業──あり。

 業務進捗度78%。

 

「この調子だと、なんとか日付を越える前には終えられそうですが……甘味が欲しくなりますね……」

「副課長! なら僕が買ってきますよ、お疲れの副課長のためにルミナスクエアの高級──」

「あら♪ ありがとうございます浅羽隊員、そう言うと思って蒼角に一通頼んでおいたので、気持ちだけいただきます。気兼ねなく業務に勤しんでくださいね♪」

「うわーん!!」

 

『書類狩り』の月城(つきしろ)(やなぎ)、対ホロウ六課副課長。

 鋭意書類作成中。

 業務進捗度389%。

 

 

 三者三様。対ホロウ六課のメンバーが、揃いも揃って書類仕事に圧されている原因は『黒蝕竜』である。

 こと最近においては『黒蝕竜』を見ない事も聞かない事もないだろう、連日連夜も見て聞いて死合った名前。事は今日の早朝にも遡る。

 

 

 

 〜

 

 

 

 前述の通り、対ホロウ六課はホロウ事案を管理する『H.A.N.D』の中でも危険/重要度が高い案件を担当する。ともすれば『黒蝕竜案件』がこぞって六課にあてられるのも必然だった。

 黒蝕竜はその神出鬼没性から各所より報告と応援要請が出され、その度にホロウのエキスパート集団の『H.A.N.D』が対応するため、単純に頻度が高い。多い日では1日に20回は要請が届く。『H.A.N.D』はその度にエージェントを現地ホロウへ派遣するのだが、そこで高い戦闘力と機動性を兼ね備える少数精鋭の六課に白羽の矢が立つという。

 加えて、初邂逅で黒蝕竜を墜落せしめ、鱗の一片を持って帰投した功績があってからは殊更に『黒蝕竜案件』は六課へと集中し、黒蝕竜初出現からしばらくが経った今では対ホロウ六課を"対黒蝕竜課"と揶揄する声が陰に聞こえてくるほど。

 

 ともすれば、そんな六課の職員からは不満の声が上がるというもの。

 

 

「んもーまたあのドラゴンなのぉ!? 蒼角あのドラゴンきらいっ!!」

 

 

 早朝、スコット前哨基地・出撃停留所。

 ついに不満を爆発させた蒼角が、目を( > 皿 < )にして、激しく地団駄を踏んでいた。

 

 前述の通り、六課は確かに『黒蝕竜案件』に対してはじめの一歩となるきっかけを鱗の一片という形で人類にもたらし、これまで亀の歩みであった黒蝕竜の研究を大きく進めた。

 黒蝕竜に対して現代の技術で製作可能な武器が有効であることが分かったし、エーテル物質と対消滅する性質から、エーテル合金製等のエーテル含有攻撃が特に有効であることも分かった、鱗紋(うろこもん)*2から黒蝕竜が妙齢ということさえ分かった。

 

 事実、これまで誰も成し得なかった成果ではある。

 しかしそれでも、狩猟できていない事もまた事実。

 

 結果。六課には日に最低10を超える要請が届き、呼ばれては出撃し、呼ばれては出撃しのトンボ返り。

 にも関わらず、初回の拾得物以降にこれといった研究サンプルを獲得出来ていないこともまた、事実。

 

 応援要請のあった地へと向かい、現場に出現した黒蝕竜を代わって撃退するのが任務であるのは当然の事ながら、恒久的目標として黒蝕竜の狩猟ないし研究サンプルの採取を六課はホワイトスター学会から求められているのだ。

 学会の机上から求められるは毎度の如く「血液」やら「肉片」やら「翼」やら、とにかくDNA情報の詰まったものばかり。そしてそれらを入手するにあたって、黒蝕竜に手傷を負わせなくてはならないという無理難題を当たり前のように要求してきている。

 

 

 勿論、六課も一度はこれを受諾した。

 初回邂逅以前のことである。

 

 そして周知の通り、成果は鱗の一片()()だった。

 確かな成果であったそれは、しかし不十分な成果でもあったのだ。六課を対黒蝕竜課などと囃す声には、そうした経緯を軽んじた嘲笑も含まれている。

 

 こうして方々から向けられる無遠慮な悪意と、学会からの催促と指される後ろ指、そして単純に激務を極める黒蝕竜案件に三方からフラストレーションを溜めさせられているのが、六課の現状である。

 そしてその六課副課長:月城柳が最も我慢ならなかった事は、激務を極める業務でも学会からの催促でもなく、「虚狩りとはいえ所詮この程度なのか」と、仲間の星見雅を貶されることだった。

 

 

 ──星見雅の刃は黒蝕竜に通らない。

 

 先の治安官2名と黒蝕竜が偶発的に接触した事例により、黒蝕竜の放つ鱗粉にはエーテルに対して互いに反発しあい、空間中の総量を削り合う対消滅現象を起こす事が判明しており、人体には『狂竜症』と呼ばれる、エーテル適性の高低によって個人差はあれど害をもたらす。

 適性の低い人物であれば名前の通りに狂い、適性の高い人物であってもエーテル操作が難しくなる等の不調が起こる。

 

 分かりやすく言えば、一度鱗粉に触れた人物はエーテル適性の大幅なランクダウンをくらうのだ。

 鱗粉が撒かれれば、周辺空間諸共エーテルを削るため、エーテル侵食の恐れ自体はなくなる。侵食症状やエーテリアス化を心配しなくても良くなるかわり、決して釣り合わないデバフを課されるのだ。

 慣れた武器の扱いにも大きな不安が生じる事になる。

 

 しかしこれを対策しないほど六課は愚かではない。

 星見雅本人の発案でもあるところの「鱗粉より速く斬る作戦」の全貌は至極単純で、自身の周囲に濃密なエーテルの層を纏い、身体に鱗粉が触れる前に(デバフをくらうよりも速く)一撃必殺。

 具体的な方法としては、星見雅の所有する妖刀『骸討ち・無尾』の狐火をあえて開放し、炎の防護服を着るというもの。

 その間、雅本人には鱗粉と削り合い絶えず減り続ける狐火の維持と、身体の一片残さず狐火で覆うことによる無呼吸無酸素状態を強いられる。

 

 星見雅は、確かにこれを成功させた。

 黒蝕竜との邂逅一番の速戦即決(ふいうち)、初手にて屠る必殺の機刃は紛うことなき全力の一撃、ホロウの外殻さえ断ち斬る一閃は確かに黒蝕竜へ伸びた。

 しかし、その刃が通ることはなかった。

 

 黒蝕竜は瞬間にて、()()()()()()()のだ。

 全力の一閃が黒蝕竜の首を捉えかけた寸前、人体の20倍をゆうに超える巨体を覆い隠すほどの鱗粉が、まるで星見雅が狐火を纏うのと同じように開放され、濁流となって一閃を呑み込んだのだ。

 これが星見雅の刃は黒蝕竜に通らない。

 その顛末である。

 

 

 

 そうして今日もまた、星見雅という最大戦力を欠いた状態で六課は出立する。

 天候は雨。

 

 不満を嘆く蒼角を柳がなだめ、躁鬱になりつつある悠真がふらりと歩み、刀の柄を固く握った雅が先頭に立って、零号ホロウへ繋がる入口を潜る。

 門をくぐれば否応なく任務の時間。不平も不満も鬱も力不足も一旦抱え込んで、要請のあった地点へと一直線に駆け走る。

 ガリバー隊員*3の案内あって最大規模/難度を誇る零号ホロウにあっても迷うことなく、一直線に。建造物の上を跳ぶように進んで進む。

 

「今回の現場は防衛軍管下のエーテル資源研究所、研究所防衛部隊からの要請。黒蝕竜出現は5分前。防衛軍からの正式な応援要請です」

 

 走りながら、数分前に一瞥したばかりの文書を暗記していた柳が詳細を説明する。

 新エリー都における明確な軍事組織。名は体を表す防衛軍から、その防衛の協力要請であった。

 

「そんなの防衛軍同士で解決してくださいよ〜」

「ぼーえいぐんってお仲間ー?」

「新エリー都を守るという意味では志同じくする仲間ですよ蒼角、ただ……浅羽隊員の言う通り部署違いの要請ではあります」

「派閥を越えてでも協力を要請するほど、急を要する大事という事だろう。急ぐぞ」

 

 防衛軍とH.A.N.D.

 仔細は異なれどもホロウに対して実力を行使する能力を持っているという点でいえば同じ。防衛軍の一部隊が応援を求めるなら、普通まずは同じ防衛軍に……お門違いだろうと悠真が愚痴をあげる。

 それでも六課に要請が正式に来たならば、つまりそういう事なのだろうと雅が速度を上げ、瞬く間に姿を消してしまう。

 

「あーぁ、課長ってば相変わらず速いんだから」

「ねー!」

「月城より通達。六課はこれより黒蝕竜の()退()を主目的として行動します、副目的として現場防衛軍の安全確保。総じて攻めあげますよ!」

「「了解っ!」」

 

 柳が発破をかけると同時、ビル上から降着する形で3人は一足遅れて現場に到着する。

 各員が散開し、剣戟と咆哮が轟いてくる方へと3方から接近する。柳と悠真はその際、後に残していく防衛軍の方を一瞥する。そこには酷く損壊された幾つかの機械が散乱しており、高濃度のエーテル活性剤が一面に溢れている。

 間違いなく防衛軍の研究機材と資材である。横倒しになった輸送車があることから、おそらく機材等の輸送終了間際にエーテルに誘引されたエーテリアスの襲撃を受けたのだろうと2人は瞬きの間に予想をつける。

 六課が黒蝕竜に専念しようと動いているこの瞬間にもエーテリアスの群れは残っているものの、研究所の防衛軍で十分対応可能な程度。エーテリアスと黒蝕竜のダブルパンチを喰らったための応援要請だったのだろう。

 

 相手が防衛軍ということを除けば、六課にとって珍しい状況ではなかった。

 誰かがエーテリアスに襲われ、そのエーテリアスを捕食するために黒蝕竜が出現する、板挟みになった誰かから六課に要請が届く。お決まりのパターンだ。

 そして必ず、直接の人的被害がないのも同じ。黒蝕竜が誰かを傷つけたという話も、まして過去の第2次接触に見られた『怒り状態』もそれ以降見られたことはない。

 

 今回の場合、誰かは防衛軍であり、エーテリアスを蹴散らす程度の武力は持ちあわせている。自衛の手段が確立されているなら、六課は黒蝕竜に専念するが吉。

 適材適所、役割分担である。

 

 

 そして3人が先行した雅に追いついた時には、無尾を解放し狐火に包まれた雅が、間違いなくここまでの戦闘の余波で撫で斬りにされたのであろう。建築物の骸がポケットに入れられたクッキーのように斬り砕かれ山積みになったアスレチックの上で黒蝕竜と死合っていた。

 必殺の一撃ではなく、無数の剣戟が黒蝕竜に浴びせられる。がしかし全てを黒蝕竜が高い機動力で空も地をも泳ぐように動く事で避けられ、表皮に擦り傷を付けるだけに終わる。

 決定打を与えられていない。

 

 黒蝕竜は日に10を超える六課との戦闘により、初めこそ不意打ちも必殺の一撃を命中だけはしていたものが、今は全てを回避するほどに六課を理解しているのだ。

 故に、既に六課は黒蝕竜に対して、狩猟から撃退を六課としての姿勢を改めている。サンプルの採取などは後回し、現場被保護者の安全確保を優先としたためだ。

 よって戦略はなく、戦術は──

 

 

()()()()!!」

 

 

 雷撃と共に、一拍タイミングがズレれば雅を貫きかねない勢いで背後から柳が薙刀を穂先に突入してくる。

 コンマ秒のズレもなく飛び退いた雅が狐火を収め、呼吸するとまた同時、後方から雷の矢が黒蝕竜の顔面に正面から直撃する。

 

「ナギねぇ代わるよ! 蒼角のでばーんッ!!」

「ンナナナァッ! (開けろ! デトロイト市警だ!)」

「はァっ!!」

 

 そして先程の柳を再演するように、放物線を描いて飛び出してきた蒼角が戦鬼刃鬼を豪快に黒蝕竜へ叩きつける。一拍遅れてガリバー隊員が突撃をしかけ、蒼角の後退する間と次の雅と交代する間を合わせて埋める。

 正面から代わる代わるの連続波状攻撃である。

 

「ゴアァッ!!」

 

 黒蝕竜が苛立ちに唸りをあげるも、六課は絶えず黒蝕竜を押し続ける。

 必殺の一撃が通じない上で黒蝕竜を撃退するには、シンプルに体力を削っていくしかない。しかし鱗粉の性質から長時間の戦闘が推奨されず、あまつさえ被保護者から遠ざけたいと欲をかくならば、ヒット&アウェイを嫌というほど繰り返すしかない。

 ガンガンいこうぜ! 

 

「ゴアァッ!! ガァッ!!」

 

 押して、押して、押しまくる。

 どれもこれも堅牢な鱗に阻まれ、ダメージというダメージにはならない。しかしたとえ人間だって、スポンジでも叩かれ続ければ嫌になるものだ。

 黒蝕竜は回避の動きに重ねて軌道をずらし、押され続ける状況から脱しようとする。しかしそれを許す悠真ではない、あえて外す矢を黒蝕竜を型抜くように常として放ち続け、動線を潰す。

 コンマ秒の隙さえない連続攻撃。六課が編み出した"強者に対する戦い方"、研ぎ澄まされた練度なくして実現しない、連携に全てを置いた戦術。

 

 そんな状況下に晒されれば、黒蝕竜には相当なストレスが蓄積される。暫くこの戦術を続けたあと、あえて隙を作れば黒蝕竜は逃亡する。

 そこまでの流れを含めて、いつも通りだ。

 倒せない相手を退ける、それを繰り返す。

 これが数百人規模の大作戦であれば、討伐も夢ではないかもしれない。鱗粉による汚染覚悟でも何でも、ホロウ内の地形を更地にしてでも、雅の全力を際限なく振える舞台を整えられたのなら……

 

 柳は何度、考えたことか。

 無いものねだりにしかならない事に、柳は憤る。

 六課は4人と1体しかいないのだ。少数精鋭といえば聞こえはいいものの、そこには虚狩りに権力を持たせまいとする上の思惑と、単純な人員不足があるに他ならない。

 

 せめてもっと火力が、雅と同等以上の火力があれば、そう考えずにはいられない。

 何よりその力が自分たちにあればと、雅に負担をかけている現状に歯軋りをかける。

 

「柳」

「なんでっ、しょうッ!」

「『コメット』をかける」

「なっ! はっ!? アレは練習どころか、机上の空論でしかッ」

「それでいい」

 

 代わる代わるの連戟の刹那、『コメット』という単語に柳は過剰に反応する。それは未完の戦術プロットのプレースホルダー、仮の名前。

 エーテルを用いた攻撃は鱗粉によって減衰され無効化され、通常の火器ではバンカーバスターでもない限り堅固な鱗に阻まれる。しかし相当な速度でない限り容易く躱されてしまう。

 それらの課題を一手に解決できて、かつ六課メンバーで実行可能な攻撃戦術、それが『コメット』。

 

 しかしそれは、たった一度、過去に六課のオフィスにて交わされた会話の流れで組み立てられたものの、最終段を実行する蒼角に安全が保証されないと、結局は紙になる前に白紙になったもの。

 それを覚えていたことも、まして黒蝕竜を前にして実行しようなどと、雅が言うとは思っていなかったのだ。

 とても賛成できはしない。

 もし実行して失敗すれば、蒼角は無事では済まない。そもそも成功するわけがない。一度話しただけの、文字でしか存在しない戦術など……

 

「できるだろう、柳。お前なら」

「っ──!」

 

 刹那、雅と柳の視線が交錯する。

 雅の瞳に、一片の迷いもなかった。

 

「お前が日頃、私の力不足を補おうとしてくれている事、承知している。全くもって不甲斐ない」

「そんな、ことは……!」

「事実だ、それはいい。だからこそ私は信じよう、力不足を知った上で柳が発案した戦術を。()()を一番よく知っているお前が出来ると言った、『コメット』を」

 

 柳は言葉を失い、立ち止まる。

 1人が連携から欠けれども、3人と1体がそれを埋める。それは、虚狩りだからと他所から重任を押し付けられ、確実な功績ばかりを求められ、あまつさえ六課は虚狩りとオマケで出来ていると言われていた、あの頃の。

 だが、1人ではない。3人と1体もいるのだ。

 気付かない内に自分もまた、自分が嫌いな他者からの評価を元に考えてしまっていたのだろう。雅がダメならもう手はないのだと決めつけてしまっていた。

 

 なんてことだ。

 3人も、1体も、『対ホロウ六課』だというのに。

 

「──なにより、戦術はお前の頭の中に入っている、だろう? 柳」

 

 虚狩りではない。

()()から全幅の信頼を向けられて、出来ないなどとどうして言えようか。失敗などという恐れがどうして生まれようか。

 

「では課長……いえ、雅。その手足一寸まで、私に使わさせていただきます」

「委細承知、任せたぞ」

 

 踏ん切りはついた。

 柳は精神を研ぎ澄まし、感覚を加速させる。薙刀についた時計が指すタイマーは1秒にも満たないが、今は10秒にさえ感じられる。そしてそれだけあれば十分。

 周囲の環境、安定した足場、()()。頭の中から戦術を引きずり出し、盤上に組み立ててシュミレーションをする。2.3度繰り返してやはり思う、何とも失敗する確率の高い戦術だ。

 だが今は、失敗する気が欠片もしない。

 

 そして、1秒が経過し終える。

 

「各員! 『コメット』を開始します!!」

「「「「了解(ンナッ)!!」」」」

「雅は()()で10秒足止めを! 浅羽、蒼角、ガリバー隊員は集合!」

 

 瞬間の開放、狐火を纏った雅が一直線に黒蝕竜へ突撃する。再度の接敵と同時に蒼炎に満ちた千以上の剣戟が、黒蝕竜の手脚を拘束する。

 鱗粉濃度の高い黒蝕竜の懐での全力、もって10秒が限界である。

 残る3人と1体が集合し、まず2秒経過。

 

「蒼角、貴女は私が合図したら黒蝕竜の顔に突っ込んで、直前でジャンプです」

「あいっ!」

「浅羽隊員、合図したら黒蝕竜の頂上にガリバー隊員を打ち上げてください。ガリバー隊員は空へ」

「快適な空の旅を約束しますよ」

「ンナッ! (了解!)」

 

 必要な手順を伝え、4秒経過。

 そして間を開けず、次。

 

「今ッ!!」

「いってきます!!」「そぉーれ!!」

 

 悠真の矢に掴まったガリバー隊員が黒蝕竜の上空めがけて飛んでいき、同時に蒼角が黒蝕竜の頭の方へ一直線に駆け出す。

 そして2秒後、ガリバー隊員は黒蝕竜の遙か上空へ、蒼角が黒蝕竜の眼前で跳び──

 

「雅ッ!」

 

 柳の呼びかけと合わせ、蒼角と黒蝕竜の間に雅が急停止し、無尾の刃を返して構える。瞬間黒蝕竜の拘束が解かれるが、

 

「悪いけど、まだ大人しくしててほしいなッ!」

 

 悠真の一矢がそれを埋める。

 そして両足揃えて幅跳びのように飛び出して行った蒼角を、雅が迎え撃つ形になる。

 雅はこの後何をすればいいのかを知らない。しかし、あぁしかし何も案ずることはない。蒼角の奥、その視線の先には柳がいるのだから。

 

「上へ!」

「……あいわかった」

 

 たった一言で、十分。

 

 

ギィンッ!!! 

 

 

「わー……」

 

 空に打ち上げられる、蒼角。

『コメット』とは、実のところ何の捻りもない名前である。comet(彗星)の名が示す通り、その中身は純然たる質量攻撃である。

 遥か上空からの垂直自由落下。に加えて、

 

「ンナナンッ!! (蹴って!!)」

「ごめんねっ!」

 

 上空で合流するガリバー隊員を用いて直下へ加速、総じて垂直落下攻撃。

 雅の次に火力も重量も高い蒼角を中心に据えた、コンビネーションアーツ。

 蒼角が黒蝕竜に届くまで、約4秒。

 その4秒は残る3人が稼ぐ。

 

「後で有給くださいよっ!」

「いくらでも!」

 

 悠真は弓を分かち双剣として、柳は薙刀のタイマーを限界まで設定し、雅の剣戟の間を縫って黒蝕竜へと切り結ぶ。

 そして2秒が経過、無呼吸状態の限界を迎えた雅が離脱──しない。

 

「雅っ!?」

「課長!」

 

 限界を超えた剣閃。

 その瞳に既に黒点はなく、体いっぱいの汗を振り切って刀を振るい、そして納刀。最後の1秒に"全力の一閃"を構えれば、黒蝕竜が過敏に反応し、柳と悠真を弾き飛ばして雅に注意を向ける。

 

 ──雅は動かない。

 そして1秒。

 

 

「──かかったな」

 

 

 

 

「おまたせ──!!!!」

 

 

 

 

 轟音と共に落着する、蒼い彗星。

 

 もし黒蝕竜が雅に気を取られていなければ、柳と悠真を弾き飛ばした後にでも飛び退く事が出来ただろう。

 何故ならもう、雅は指1本動かせないのだから。

 

 虚狩りを初めから最後まで囮に使った戦術。

 虚狩りが全てを六課に賭けた大博打。

 

 

 その結果は、足場になっていた建築物の骸諸共クレーターを作り出し、そこに腹側の半身が埋まった黒蝕竜と、その上に刃の砕け散った戦鬼刃旗を握った蒼角が無事に立っている。

 ぶっつけ本番ながら、成功したと言えるだろう。

 

「蒼角、こっちに下りてきて」

「ナギねぇナギねぇ! さっきのすっごい楽しかった!」

「うん、うん、すっごく偉いよ」

「えへへー」

 

 柳は黒蝕竜の上に立っていた蒼角を呼び寄せて、一番の功労者を目一杯に褒める。

 終わってしまえば、あとから"もしも"を考えてしまって恐ろしくなる。今自分に抱きついている蒼角にもしもがあったらと、柳は『コメット』の封印を決める。

 

「死にました……かね」

 

 そこに、気絶した雅を回収した悠真とガリバー隊員が合流する。黒蝕竜から5歩は離れた場所に立ってはいるものの、警戒は解けたものではない。

 

「……いいえ、見る限り目立った外傷が見られません。直撃したはずの頭部もほぼ無傷とは……」

「いや、硬すぎでしょぉ……」

「すっごく硬かった! もうガィーンって!」

 

「…………撤退しましょう、被害が大きすぎます」

「あれっ、学会から催促されてるサンプル、取るなら今のうちじゃないですか」

「知りません、そんなもの」

「……さっすがぁ」

 

 

 柳は蒼角を背におんぶして、悠真は雅を両腕に抱えて、疲れきった体を引き摺ってその場を離れていく。

 ひとまず黒蝕竜の問題は何とかしたのだから、今日はもう休めるだろう。あとは防衛軍と合流して、六課オフィスに戻って、それから、それから……

 あまりに疲れてしまって、歩いているのに睡魔に襲われる。まだ警戒を解いてはいけないのだからと、重い瞼を開け続ける。

 

 それでも抗えない。

 ついに一瞬、瞼が閉じきった。

 だから気付けなかった。

 大きなものが起き上がる、そんな音がしたことに。

 

 

「危ないっ!」

 

 

 悠真の声がして振り返った時には、視界は黒紫色に埋め尽くされていた。

 

(あ、これ──)

 

 明確な死のイメージ。

 背を向けて逃げる選択肢もあった。けれどそうしたなら、背負った蒼角が危なくなる。だからもう、柳は動かなかった。

 

「ナギねぇっ!?」

 

 この子の盾になれるなら。

 最後がそれになるなら、まだ。

 心残りは少ないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

 

 いつになっても、何も起こらない。

 感じない。

 もしかしたら、自分はもう死んだのかと閉じた瞼を開く。しかしそこには、最後に見る光景だと思っていた黒蝕竜がそのままそこにいた。

 顔を少し前に出すだけで鼻先が触れてしまえそうな、あまりの近さに息を飲む。

 

 ……が、それよりも気になるのは黒蝕竜が止まっていること。何より、自分ではないどこかを注意が向いていること。

 

 

 ──黒蝕竜の視線の先に、人がいる。

 1人は治安官。三節棍でもう1人を支えて背負う、翡翠色の髪を2つにまとめた玉偶。柳はその姿に見覚えがある、『青衣』……黒蝕竜捜索の任にあたっているという人物だ。

 偶発的な遭遇だったらしく、瓦礫の影から半身を覗かせた彼女は驚きに身を固めている。

 しかしもう1人は見覚えがない。

 気を失っているのか、眠っているのか、青衣に背負われていてピクリとも動かない。胸部あたりから出血しているらしく、鮮血がじんわりと青衣の装備を赤く染めている。黒紫色のドレスに身を包んだ少女。

 

 気のせいでないのなら、黒蝕竜は少女を見ている。

 自分達とやり合っていた時には嫌という程感じていたプレッシャーも、今は欠片も感じない。というより自分達は既に黒蝕竜の眼中に無いらしい。

 グルグルと、黒蝕竜の喉が鳴動する音さえ聞こえる距離にいて、完全に無視されている。

 

 なのに、不意打ちや反撃などと、未だ握っている薙刀を振るう気性が起こせない。

 ──直感だった。今黒蝕竜に対して行動を起こせば……黒蝕竜の邪魔をしたなら、それが勘気に触れる。逆鱗に触れると言い換えてもいいだろう。

 

 何人も動いてはならない。

 直接に見られているわけでも、まして眼中にさえないというのに、プレッシャーなどあてられてもいないというのに、そう確信させられる悪寒が背を走る。

 黒蝕竜と対峙してきたこれまでに感じたこともなかった、鳥肌が立つ感触。

 

 

 次の瞬間、唐突に黒蝕竜が飛び去ってしまうまで、結局動けなかった。

 早打ちする心臓の音が、それまで気にも留めていなかった雨にかき消されるまで。

 

 

 

 〜

 

 

 

 そういう事があって。

 六課(私達)は報告書の作成に追われることになりました。

 もっとも、ほとんどの内容は件の少女に関するものです。破損させた戦鬼刃旗の修繕依頼書に、戦闘の余波で広範囲に損壊させた建物への始末書なども労力がかかったものの、少女の件の方がよっぽど大変でしたね。

 

 件の少女は、黒蝕竜捜索の任務中だった青衣治安官が、エーテリアスの襲撃と黒蝕竜の巻き添えを食らった防衛軍研究所からの喧騒を聞きつけて向かっていた道中、近くの裂け目から出現したところと遭遇した、との事です。

 治安官である青衣さんが零号ホロウにいたのは、別の小規模ホロウから入った裂け目が偶然にも零号ホロウに繋がっていたためだったと、これは本人への聴取から。

 件の少女は、出現当時こそ意識をもって自分で歩いていたものの、胸部の怪我により気管支を損傷して肺に血液が流入していたため、会話もままならず、ほどなくして気を失ったのだといいます。

 

 青衣さんは少女を介抱しバンテージで傷口を保護するなどしたものの出血自体が治まらず、人を求めて喧騒のする方へ向かい、そして対ホロウ六課(私達)と遭遇しました。

 直前の剣戟や轟音、特に咆哮などが聞こえていたため黒蝕竜の存在も察してはいたらしいのですが、人命救助を優先して直行。ただ、急を要して駆け込んだ先に、既にこっちを見ている黒蝕竜がいたというのだから心臓に悪かったと、これも聴取からですね。

 

 そして治安局は「黒蝕竜の脅威度が想定を遥かに超えたため」として黒蝕竜案件を全面的にH.A.N.D.に一任することにしたそうです。

 したがって、青衣さんは黒蝕竜捜索の任を解かれることになり、あの後私達とスコット前哨基地に赴いたのち、治安局に戻ったそうです。

 理由としては大まかに、虚狩りの所属する対ホロウ六課でさえ2度の本格的衝突があって事態が解決しないこと。なにより治安官としての本分は新エリー都市民の安全と平穏を維持する事だと。……青衣さんと親しい朱鳶長官は黒蝕竜と会敵の結果負傷し、先日ようやく現場復帰が叶ったと聞きますが、青衣さんの心情は察するにあまりありますね……

 

 

 本題は少女の件です。

 彼女の名前は『ゴア・マガラ』。手術後、意識が回復した本人の自称ですが、特に支障がないとして既に関係各所に周知されています。

 

 

「……あ、今ようやく局所から本件への返答がきました。ご丁寧に経緯まで記載してくれていますね、読み上げます」

 

 

 ▽

 

被収容存在「要観察特異竜人:ゴア・マガラ」について

〇月〇日

H.A.N.D.総合事務局

 

 

本書は以下の内容を記すものであり、いかなる人権侵害・個人の否定を行うものではないことを宣言する。

 

 

①:治安局からH.A.N.D.およびホワイトスター学会への表題人物(以降"ゴア・マガラ"と表記する)の管轄移行に際して生じた衝突とその経緯。

 

②:ゴア・マガラ身体検査の結果と所見。

②-1:推奨される食事。

②-2:添付『シリオンとの上手な付き合い方(有翼種編)』(※有心社発刊「こころの教科書」より抜粋)。

②-3:添付『シリオンとの上手な付き合い方(有尾種編)』(※有心社発刊「こころの教科書」より抜粋)。

 

③:H.A.N.D.制服の貸与について。

 

④:今後の管轄/運用について。

 

 

【①:治安局からH.A.N.D.およびホワイトスター学会へのゴア・マガラの管轄移行に際して生じた衝突とその経緯】

 

経緯説明。

治安官青衣の初期救助により、ゴア・マガラの身柄が一時治安局預かりとなる。

胸部にあった原因不明の外傷治療のため、治安局管轄の医療機関へ搬送される。

対応にあたった医師や看護師が後述の鱗粉を吸引し、気分の高揚/注意散漫等の興奮剤摂取時にも似た異変を受けて、治療後に鱗粉の検査を実施。

調査の結果、黒蝕竜が散布する鱗粉と同様の対エーテル対消滅反応が確認される。

 

上記の内容が偶然にも、同医療機関にて長期療養/休職扱いとなっていた"ダズビー・エイフマン"の耳に入る。この人物は【ホロウ災害救助出動における『黒竜』接触報告】の研究員Dと同一人物である。

ダズビーは手術後昏睡状態のゴア・マガラを拉致。

治安局がダズビー容疑者のもとに到着した時にはゴア・マガラは一糸まとわぬ姿とされ、執刀直前であった。治安局はこれを阻止し、ゴア・マガラを保護するが、エーテル爆薬等を用いたダズビーの激しい反抗の中、容疑者射殺という形で状況を終了する。

この現場には職務復帰直後の朱鳶治安官もいた。

 

現場に残った資料から、ダズビーの目的が"エーテル対消滅反応の原理解明"および"軍事転用"、さらには"生殖による個体増殖/人竜部隊の作成"といった文章が発見され、非人道的な計画がなされていた事が明らかになる。

ゴア・マガラを一番に保護した朱鳶を筆頭に治安局は事態を重く受け止め、重篤な人権侵害と非人道兵器の計画犯罪として捜査。ゴア・マガラが保護されてから1日とかからない間にも関わらず現場には既に十二分な研究装置が複数設置されていたことから、ダズビーの背景には未知の研究に精通し、充分な資産を持つ組織がいたとされる。

 

ダズビーの現職から第一にホワイトスター学会の関与が疑われたが、学会はこれを否定。ダズビーの行いを「極めて凶悪で、許されざる悪行」として回答。

その後捜査が進展すると、ダズビーの最終連絡先が学会の上司であったことが判明。治安局がこれに追及するも、学会は「ダズビーとその上司の独断」と回答。組織として関与はしていないと一貫して容疑を否認。

 

治安局と学会に、水面下の対立構造が形成される。

余談ではあるが、事件当日の朱鳶治安官のボディカムの録音音声には、寝言ながらもうつろげに朱鳶を母と呼ぶゴア・マガラの声が収められており、最も過激に学会に対して敵意と嫌悪感を表していた朱鳶治安官の原動力と見られている。母性? 

 

ゴア・マガラの発見当初、学会は身柄の要求をしていたがこれを撤回し、治安局との関係回復を目的として「被保護者(ゴア・マガラ)への接近禁止命令」を自ら提案。

治安局はブリンガー長官を代表としてこれを承認するも、朱鳶治安官の提案により"最も中立で公平な組織への配属および保護"を条件として盛り込み、結果としてH.A.N.D.の『対ホロウ六課』へ嘱託職員として配属が決定。

 

以降、対ホロウ六課主導/管轄のもとゴア・マガラを保護観察とし、能力の研究・検証が求められる。

黒蝕竜がゴア・マガラに対して示した停止・不可解な反応の解明もこれに含まれる。

 

治安局と学会の協議のもと、学会はHIAセンターのVR機器の供与を初めとしてこれに無条件で協力し、入手したデータにおいてはH.A.N.D.と治安局の検閲ののち共有されるものとする。

 

 

【②:ゴア・マガラ身体検査の結果と所見】

 

・総合評価:健康的な通常人間種。

・DNA検査結果:既存登録情報(※存命)に関連者なし。

過去に死亡した救助隊員と類似性が見られるものの、該当人物に婚姻歴や出産歴等なし。関連性なし。

翼や尻尾など、シリオンらしい部位の根拠となる情報がDNAに発見されず。細胞の接種を人間部位から翼や尻尾等に変更し直接の採取を試みたものの、埒外の硬度に阻まれ失敗する。

・負傷および内臓等

順調に回復中。現在は意識も回復しているが、【鱗粉隔絶翼膜装備】の完成まで面会謝絶。

内臓も前述の通り通常人間種と同様であり、14歳程度の体内環境である。母体と見ても健康的。

 

 

【②-2:添付『シリオンとの上手な付き合い方(有翼種編)』(※有心社発刊「こころの教科書」より抜粋)】

 

 ▽〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜▽

 

 

【②-2:添付『シリオンとの上手な付き合い方(有尾種編)』(※有心社発刊「こころの教科書」より抜粋)】

 

 ▽〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜▽

 

 

【③:H.A.N.D.制服の貸与について】

 

①および③に記載の通り対ホロウ六課に配属のため、H.A.N.D.の制服を貸与するものとする。

ゴア・マガラのシリオン的特徴を鑑みて準1級オーダーメイド品が適応される。デザイン課の暴走は止められなかった

正式配属と同日に郵送予定。

 

 

【③:今後の管轄/運用について】

 

対ホロウ六課に一任とする。

 

 

 △

 

 

「随分とまぁ、デリケートな問題になりましたねぇ。おまけにこっちに丸投げときた」

「朱鳶の憤り様は、尋常ではなかったからな……」

「お仲間が増えるの? やったー!」

 

 すっかり日の落ちた時間。

 対ホロウ六課オフィスにて、悠真・雅・蒼角と三者三様の反応を見せる。モニターに表示された報告書とも言える文書に記載されていたのは、つまりは"あと全部六課で調べてネ"という丸投げ文章。

 不穏な動きを見せるホワイトスター学会と、その尻尾切りをさりげなく容認しようとしていたブリンガー長官の不自然な動き。さらには黒蝕竜に最も近しいと見られるゴア・マガラの出現。

 

 事が少しづつ、動き始めているのは明らかだった。

 

 

「これは、明日から忙しくなりそうですね……」

 

 

 そしてこの日から、黒蝕竜の発見報告は途絶えた。

 

 

 

*1
蒼角の専用武器。常人では扱えない質量の大斧であり戦旗、他六課メンバー同様エーテル合金製。

*2
成長と共に、鱗に形成される輪紋のこと。樹木の年輪のように、魚で例えるなら1年に1つずつ刻まれる。

*3
六課所属の軍用エリートボンプ。白いボディに青緑の帽子やプロテクターとゴーグルが特徴。

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