ケアハラスメント(ケアハラ)とは?企業が知るべき法的義務と防止策を詳しく解説
Manegy10/29(水)23:00
ケアハラスメント(ケアハラ)とは、介護を理由に、職場で不当な扱いや嫌がらせを受けることを指します。 育児・介護休業法では明確に禁止されており、企業には防止措置を取る法的義務があります。
本記事では、ケアハラスメントの定義から具体的な事例、企業が講じるべき防止策まで、管理部門担当者が押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
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まずはケアハラスメントの定義と法的な位置づけを解説します。
ケアハラの定義
ケアハラスメント(ケアハラ)とは、介護を理由に職場で不利益な扱いや嫌がらせを受けるハラスメントを指します。
典型的な例として、介護休業の取得を理由にした解雇や昇進からの除外、嫌味や冷笑、制度利用を妨げる発言などが該当します。
厚生労働省はこれを「職場における妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント」と定義しており、単なる人間関係のトラブルではなく、法律で明確に禁止された行為と位置づけられています。
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育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第25条では、事業主に対し「妊娠・出産・介護休業等を理由とするハラスメント防止措置」を講ずることを義務付けています。
具体的には以下を禁止しています。
さらに2025年4月施行の改正法では、介護に直面した労働者への個別周知や意向確認の義務が強化され、事業主にはより積極的な防止策の実施が求められています。
参考:職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!|厚生労働省
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-Gov 法令検索
職場におけるケアハラ事例
ケアハラスメントを防止するためには、まずどのような行為がケアハラに該当するのかを把握する必要があります。
ここでは、職場で起こりがちなケアハラ事例を3つに分類して紹介します。
介護休業などの制度を妨げる発言・態度
直接的な制度利用妨害は最も分かりやすいケアハラです。
管理職や同僚による以下のような発言・行動は、明確な法律違反に該当します。
これらの行為はいずれも明確に法律違反にあたります。
制度利用者に対する陰口・冷笑
制度の利用を直接的に妨げていない場合でも、制度利用者に対して陰口や冷笑を行うことは、精神的な苦痛を与えるケアハラに当たります。
「介護で休むなんて職場への迷惑を考えていない」 「また時短?戦力にならないね」 「親の介護は家族の問題で会社は関係ない」昇進・給与などでの不当な扱い
人事評価における不当な扱いは、ケアハラスメントの中でも特に労働者の経済的基盤に直結する深刻な問題です。
育児・介護休業法では、制度利用を理由とした不利益取扱いを明確に禁止しています。
ケアハラが起きる原因
ケアハラスメントが発生する原因は、個人の意識だけでなく、社会構造や組織文化の問題として捉える必要があります。
社会的背景(超高齢化・共働き世帯の増加)
日本では高齢化が進み、2025年には65歳以上が人口の約3割に達すると見込まれています。
さらに共働き世帯は全体の約7割に達し、仕事と介護・育児の両立を求められる人が年々増加しています。
一方で、職場における介護への理解はいまだ十分とはいえず、介護による負担増を懸念する従業員の不満や、周囲の協力体制の不足がケアハラ発生の温床となっています。
組織文化や評価制度の問題
働き方改革が進んでいる一方で、日本企業には依然として「長時間労働を美徳とする文化」が根強く残っています。
このような職場では、介護によって時間制約のある労働者が排除されやすく、ケアハラスメントが発生しやすい環境になります。
また、労働時間や出勤日数を重視する評価制度は、時短勤務者や休暇取得者に不利に働きます。
結果として、管理職自身が意図せず加害者になるリスクを生み出すこともあります。
管理職・同僚の認識不足と偏見
管理職を含む従業員の法的知識不足もケアハラスメントの大きな要因です。
いずれ自分も介護をする・される立場になる可能性があるにもかかわらず、「まだ関係ない」と考え、知識を積極的に身につけない人が少なくありません。
その結果、自分の発言や行動がケアハラに該当することに気づかないまま加害者になってしまう可能性があります。
さらに、「母親は子育て中心」「男性は仕事優先」といったジェンダーステレオタイプや、年齢による偏見も差別的な言動を引き起こす要因となります。
企業が取るべきケアハラ防止策
ケアハラは認識されづらく、本人も被害と気づかないまま抱え込んでしまうことが多いため、早期周知と仕組みづくりが重要です。
従業員への周知や研修の実施
まず、就業規則や社内規程にケアハラの定義・禁止行為・懲戒規定を明記し、全従業員に周知しましょう。
社内報などで介護やハラスメントに関する情報を定期的に発信することで、従業員の認識を高めることができます。
特に管理職には、法的義務や適切な声かけ、業務調整方法を学ぶ研修を実施することが有効です。
また、介護保険加入年齢(40歳・50歳)といったライフステージの節目に合わせて、介護制度や社内支援制度を個別に案内する仕組みを整えると、いざという時にスムーズに制度を利用できます。
業務をカバーする従業員へのフォロー
ケアハラが起こる背景には、介護を行う従業員の業務をカバーする側の負担が大きいことがあります。
特定の従業員に負荷が集中しないよう配慮するとともに、評価や報酬で貢献を見える化したり、リカバリー休暇を付与するなど、仕組みとしてフォローしましょう。
これらの対応は管理職だけでは完結できません。
人事労務部門を中心に、管理部門全体で制度設計や見直しを進めることが重要です。
FAQ|ケアハラについてのよくある質問
Q: 介護休業を取得予定の部下に「昇進は難しくなる」と言うのは問題ですか?
A: はい、明確な法律違反です。
介護休業の取得を理由とした昇進・昇格での不利益示唆は、育児・介護休業法で禁止されているケアハラスメントに該当します。
制度利用者も平等な昇進機会を享受する権利があります。
Q: 時短勤務者に重要な業務を任せないのは配慮として適切ですか?
A: 本人の希望や能力を無視して一律に重要業務から外すことは不利益取扱いとなる可能性があります。
時短勤務者であっても、労働時間内で対応可能な範囲で重要業務を担当する機会を提供すべきです。
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ケアハラスメントは、働く人々の尊厳と権利に関わる重要な問題であり、企業にとっては法的義務の履行と優秀な人材の確保・定着に直結する経営課題です。
重要なポイントとして、ケアハラスメントは育児・介護休業法で明確に禁止された行為であり、企業には防止措置義務が課されています。
2025年4月の法改正により、より積極的な対策が求められるようになります。
効果的な防止には、制度整備だけでなく組織文化の変革が不可欠です。
管理職の意識改革、評価制度の見直し、働きやすい環境づくりを通じて、すべての従業員が安心して制度を利用できる職場を構築することが重要です。
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