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地罰は何が悪かったのか

地罰とは?

正式名称はRise of Rebellion~地罰上らば竜の降る。
Steamで発売されたインディーゲームです。

どうして話題になっているのか

地罰は悪い意味で話題性があり、Steamのレビューも賛否両論で荒れています。
どうしてそうなったかの経緯を説明します。

高い知名度・かみ合った広報戦略

製作者のハイタカさんがYoutuberで、5年くらいかけてゲーム作りチャンネルを運営していました。開発状況を毎週動画で報告し、ユーザーとともにゲームを作るスタンスのチャンネルです。
12万程度のチャンネル登録者数を誇る話題性と、講談社がゲームクリエイターズラボという取り組みで1000万円を援助する企画があり、2回支援を受けたので2000万の援助を受けていたこと、講談社の力で東京ゲームショウでの出展やSNS広報等の支援を受けていたことで話題性が高くなっていました。
また製作者のハイタカさんが元フロム社員でダークソウルのようなゲームを開発していたこと、Unreal Engine+アセットを駆使して映像ではそれなりに綺麗なものになっていたことなどが重なり、高い期待値を誇っていました。

知名度がすべて裏返って炎上してしまった日

上記の通り知名度・ユーザー期待値が最高潮にある段階で出した体験版が非常に低いクオリティでした。
この記事は地罰本編について語りたいため詳細は割愛しますが、戦闘が複雑なのに大味でバランスが取れていない状態でした。
このタイミングでYoutubeでは「クソゲー」として取り扱った動画が多数出てしまっています。

新生地罰

上記体験版からゲーム内容を一新して作り直し、新生地罰として2年の開発を行いました。その後体験版・製品版が発売されて今日にいたります。
残念ながら新生地罰でもゲームの悪いところが拭いきれず、Steamレビューは荒れて作者が「爆死」したと公言したに至ります。

地罰がゲームとして悪かったところ

一言でいうなら
格ゲーばりの難しい選択肢を理不尽に押し付けてくるゲーム
です。

基本コンセプトが玄人向け

相手の攻撃が当たる瞬間にボタンを押してカウンターをする、ジャストパリィ、ジャスト回避を駆使して戦うゲームです。
ダークソウルやモンスターハンターでは頼れる存在の回避、ガードは弱く、ジャストパリィ・ジャスト回避ができないと戦闘になりません。

ジャストパリィ・ジャスト回避のリターンが低い

他のゲームだとジャストパリィ・ジャスト回避を成功すると高いリターンが得られますが、このゲームはジャストパリィ・ジャスト回避を当然のように何回も成功することが前提になっています。
例えば、このゲームのガードはスタミナ消費が激しく、一方で相手は連携で連続で攻撃してくるため愚直にガードしているとワンコンボでスタミナを0まで削られてダメージを食らうことがあります。そのため、相手の攻撃をただガードしきるためにジャストパリィが必要です。なんならボス的によっては攻撃の半分以上はジャストパリィしないと攻撃をしのぎ切ることすらできません。
また、苦労してジャスト回避して攻撃チャンスが生まれても、ちょっとした段差等で攻撃がガードされたり中断させられることが多々あります。

防御の選択肢が多すぎる

このゲームは敵の○○には自分の○○で返す、というのが明確なゲームです。
白いエフェクトにはジャストパリィ、赤いエフェクトにはジャスト回避、青いエフェクトには魔法、似たような青いエフェクトはジャンプ、といった具合です。それ以外はすべて失敗でダメージを食らいます。青いエフェクトが二つありますが見分けはほとんどつきません。
しかも、ジャストパリィ・回避は方向入力も必要で、上・左・右のどれか一つが正解です。でも、相手が左から攻撃してきても、左でジャストパリィの敵と上がジャストパリィの敵がおり、一見して見た目で方向が分からないケースが多い、というのもかなり苦しいポイントです。
基本的に、相手の攻撃を5回くらいジャストパリィしてしのいだ後に、最後にやってくるエフェクト付きの攻撃をしのげば反撃が少しだけ出来る仕様です。
例えば東のエレナという敵は、0~6回くらい通常攻撃をした後に、上ジャストパリィ、左ジャスト回避、右ジャスト回避、魔法の4択を基本としてぶつけてきます。この4択はどれも見分けがつきにくかったり攻撃スピードが速かったりで瞬時に返すのが難しいですし、そもそも直前の通常攻撃はある程度ジャストパリィしないとスタミナ切れでガード不能になります。スーパーアーマーがあるので割り込みは基本出来ません。
何とか返せたら運が良ければコンボが入れられるので、入れたら8%くらいボスの体力を削れます。そしたらまた敵の通常攻撃からやり直しです。運が良ければというのは、段差のせいなのかなんなのか、成功しても攻撃が普通にガードされてしまうことがあります。敵にもよりますが東のエレナは小柄だからか地形が悪いからか半分くらいの確率でガードされます。4択の25%を引いた後に、50%の良い地形が引けると攻撃できるのです。つまり反応が悪い人でも12.5%の確率で反撃できます。理不尽でしょう?
一応、慣れれば4択はギリギリ見てから返せるくらいのモーションスピードなので何とかはなります。でも慣れるまでは全然判別できませんし、見た目で方向が分からない攻撃が多々あるので正解を引けるまでトライする羽目になります。一応エフェクトで上か左右かを見極めることはできる仕様があるのですが、ゲーム内では説明されていませんし左右のどちらかはわかりません。
なお、東のエレナは序盤のボスです。その先のボスはもっと選択肢が増えて、かつ反撃が出来ない攻撃パターンなども足されてより凶悪です。

ボス敵が一方的な理不尽要素が多い

とにかくボス敵はスーパーアーマーの嵐で、基本的にプレイヤー側から能動的に殴りに行くのは厳しいです。スタミナの回復スピードも異様に早く、スタミナ切れを狙うにはボスの行動パターンが良い感じのが引けたときだけです。ボスは第二形態に移行するときに強制的なスーパーアーマーが発動し、せっかくスタミナを削っていても強制的に回復時間が発生するのも理不尽です。

集団戦が本当につまらない

理不尽の一言に尽きます。上の複雑なシステムで集団が同時に殴ってきますので多くは語るまでもないでしょう。
世の面白いゲームはそういった理不尽にならないようにAIが調整されていて、同時に攻撃しないようにしていたり、カメラ視界外の敵は攻撃しなかったり頻度が落ちたり、集団ならではの陣形を組んできて集団戦独自の面白さがあったりと色々工夫があるものですが、このゲームではそういったものは一切ないです。
しかも、スーパーアーマーを持つ敵が同時にガード不能技で殴ってきたりするので割とどうしようもないです。

どうすればよかったのか

ジャストパリィが主軸のゲームなのにジャストパリィが難しく成功してもリターンが低い、というのが破綻しています。ひたすら足し算で仕様を作っているごちゃごちゃしているゲームになっていますが、ちゃんとコンセプトを明確にしてコンセプトに対して取捨選択して気持ちよさを追求するべきです。
具体的には、防御の選択肢を減らすべきと思います。方向入力を減らすか、攻撃スピードを落とすか、ジャストパリィ・回避の猶予フレームを増やすか。
また、ジャストパリィをした時のリターンが低すぎます。とりあえずジャストパリィ・回避成功後のコンボは確定でちゃんと当たりきるように地形や敵のロジックに影響を受けないようにするべきです。ジャストパリィが成功したときのご褒美が不安定なのは相当なストレス要素です。通常攻撃のガードにまでジャストパリィを求めてリターンがスタミナが減らないだけというのはやりすぎです。ジャストパリィを大安売りし過ぎじゃないでしょうか。そういう仕様があっても良いとは思いますが、その仕様を駆使しないとスタミナ切れして攻撃を食らうので実質強制されてます。
また、遊びの幅が狭いのも気になります。回避に無敵が無くジャンプでもほとんど攻撃をかわせないので、ジャストパリィ以外の攻略方法がありません。そのため「この技はこういう攻略もできる」といった新たな発見は一切無くどの敵もひたすらジャストパリィを決めて倒すワンパターンで深みがないゲーム性でした。格ゲー的な読み合いがベースにありすぎて、シングルプレイのゲームとして破綻している印象です。

物量をもっともっと削るべきだった

武器種が多いですが一つで良かったのではないでしょうか。
また、戦ってて思いますが無理に物量を増やしたせいでボスの強さや行動パターンの調整も荒いです。代わり映えのしないボスも多く、一つ一つのボスのゲーム内での役割・なぜこのタイミングでこのボスが出てくるのかの企画意図が気薄に感じました。「個人開発だから大手企業のゲームと比べてクオリティが低い」というのはユーザーからしたら知ったことではなく、ユーザーはお金を払った分だけ満足できる体験がしたいです。だからインディーは少しでもユーザーの期待値・ハードルが下がるように値段を下げないといけないですし、ボリュームを削ってでもある一点においてはAAAタイトルにも劣らない濃さ・商品価値を作らないといけないわけです。
お値段も1200円ですが、Steamで1200円あれば面白いゲームがいくらでも買えてしまいます。ウィッチャー3なんてセール時は600円で買えちゃいますしね。Stageを3つも作るリソースがあるならば、Stage1だけに絞って価格を抑えたり品質を高める方が良かったかもしれません。
また、一回体験版で派手に失敗した時点で、2年かけて1200円のゲームを出すよりも、1年で600円のゲームを出すことを考えたほうがリスクマネジメントの観点でも良かったのではないかと思います。もちろん、ボリュームを半分にすれば値段も開発期間も半分にできるほど単純でもないですが、焦げ付いたプロジェクトは挽回できる可能性も低く、少しでもダメージの低い挑戦の仕方を考えることも時に重要です。
ゲームクリエイターとして愛情を込めて作っている我が子のようなゲーム作品を商品・コマとして損得勘定のみで無慈悲に切るのは中々難しく、なんとか大逆転をさせようと躍起になってしまいがちです。しかし起業をする以上は一つのアイデアに再起不能になるまで力を注いではならず、見切りをつけて次のアイデアに移ることも必要なのではないでしょうか。

Youtubeでゲームを視聴者と作ることの難しさ

ゲーム以外の悪いところも上げておきます。

アンチとの向き合い方

ハイタカさんは体験版の失敗などからアンチが一定数おり、ネガティブな話が目立つ状況でした。
ハイタカさんもケンカ腰のチャット返信が出てしまっている場合があり、そういった投稿は大体荒れてます。
Youtuberも人間なので腹立つとは思いますが、無理に反応しても返信内容にストレスが表れていて悪影響しかしていないように見えるので、基本的には無視するのが安定なのではないでしょうか。
また、ハイタカさん自身も格ゲーマーのノリで口が悪く「クソ」、「終わってる」、「爆死」みたいことを言ってしまっています。私は格ゲーマーなので何とも思いませんが、コンテンツ提供者側としてマイナス印象だったように思います。ただ、ある種のブラックジョークというか、悪ノリがエンタメとしての面白さに繋がったりもするので、塩梅は難しいとは思います。

こだわりやこうしたいという気持ちを押し付けすぎてはいけない

印象的だったのはハイタカさんが動画で言っていた「Youtubeでは建設的なコメントをしてほしい」です。建設的なコメントが出来ない人ほど、こういった言い方には火に油を注ぐ気がしますし、そもそもYoutubeという娯楽をどう扱うかは法律、Youtubeの規約内においてユーザーの自由です。チャンネル運営者として一定の方針を示すのはありだとは思いますが、その強制力がない場合においては単に配信者と視聴者がケンカしている図になってしまうので、建設的なコメントを求めるよりも建設的なコメントだけ取り上げて他は全て無視して勢いを削ぐのが一番現実的なんじゃないでしょうか。
もしくは、チャンネル運営者としての権限を最大限利用して徹底的に排除してコメントもすべて削除したり投稿禁止にするかです。中途半端なお気持ち表明は逆効果に思います。
言い方が悪いですがハイタカさんはアンチに期待しすぎで、色々諭そうとし過ぎに思います。「ゲーム開発の議論はこうあるべき」というのをユーザーに求めすぎです。ハイタカさんから見たら地罰の議論は人生をかけた議論ですが、ユーザーからしたら単なる暇つぶしに過ぎません。言葉が通じない獣が噛んできているから無視・排除するか適当に謝罪して流す、くらいの気持ちでいるべきではないでしょうか。同じ人間だと思って真面目に話しても疲れるだけだと思うので、向き合わないのが一番に思います。
・・・ただ、偉そうに言っていますが、私自身Youtubeを運営したことも、まして10万人以上のフォロワーがいたことも無いので好き勝手書いてますが、実際当事者の心境はそんな簡単ではなく、アンガーマネジメント、ストレスコントロールも困難なのかと思います。

ゲームクリエイターとしての我とユーザー意見の難しさ

そもそもゲームクリエイターとしてゲームを作っている時点で、やりたいこと、こうしたい、こうすれば面白いはず、という熱い思いが誰よりもあるはずです。実際、ハイタカさんもUnreal Engineでここまでゲームを作れ、元フロム社員であればそれ相応の自信もあるはずです。
その状況でYoutubeでゲーム作りの素人が大半のユーザーから意見を言われても、素直に受け入れるのはすごく難しいですよね。
同じ意見でも、カービィの生みの親の桜井さんに言われるのと、素人の子供に言われるのでは大きく印象が変わってしまうものです。
例えば、ゲーム発売後のアップデートでEasyモードが追加されてジャストパリィの方向入力不要や敵の攻撃スピード鈍化がつきましたが、そういったユーザー意見によって生まれた調整を「Very Easy」「Easy」と呼称して、あくまでこのゲームの「Normal」デフォルト値は自分の最初に意図した調整だから、というスタンスでいるのも、自分の感覚とユーザーの感覚の乖離が解決できていないように思います。
これはハイタカさんに限らず、ゲームクリエイターとしてある種のこだわり、プライド・我が強い人ほど、こういったユーザーと一緒にゲームを作っていくスタイルのチャンネル運営は困難を極めるのではないでしょうか。
上に色々な問題点や改善案を書いてますが、大部分は実はハイタカさんの動画でも話題に上がっていたり、そもそも最初期の体験版で言われていたことから変わっていなかったりします。なので、ハイタカさんから見て全く予想外の意見はほとんどないのではないでしょうか。
プロのゲームクリエイターの意見ですらゲーム開発中はコロコロ意見が変わる世界で、ユーザーの意見にどう向き合うかは難しいです。聞き入れないのもダメ、受け入れすぎてもダメ、ゲームとして変えちゃいけない部分とユーザー意見に応じて変えるべきところのバランスの見極めが重要です。
其の実、多くのインディーゲーム開発者はユーザー意見を聞く機会すら得られず人知れず消えていくのが普通です。対して、ハイタカさんはユーザー意見を聞ける広報戦略は成功したが、得られたユーザー意見を生かせなかったように思います。

講談社もプロではない?

最初に述べた通り講談社のゲームクリエイターズラボの企画として2000万の出資を得ています。さらに講談社の人に実際にプレイしてもらって意見を交換する機会も多くあったようです。
その結果としてこの失敗をしていることを考えると、講談社はあくまでもゲーム開発に関しては素人だったのではないでしょうか。
ハイタカさんのスキル・広報力は高く、講談社にはそれと同等以上のスキル・経験を持つプランナー、ディレクター相当の人が居なければゲーム作りのパートナーとしては成立していないように思います。
ゲームクリエイターは自分のこだわりが強く出るあまり視野が狭くなったり、自分が作った物の愛着が強くて捨てるべき物を捨てられなかったり、クリエイター自身が開発中のゲームに慣れすぎて難易度の認識やゲーム内の情報認識がユーザーの感覚とズレてくることが多々あります。またプロジェクトマネジメントスキルが低く、数少ない開発リソースを正しくコントロールできないこともあるでしょう。そういったズレを第三者から指摘するのは講談社であるべきだったと思います。
最初の体験版がコケなければここまで状況は悪化しなかったと思うので、そういった意味ではゲームに対するクオリティコントロール、品質管理を講談社が出来ていなかったのも大きな敗因でしょう。
もしかしたら、一定以上口出しが出来ない契約だったのかもしれませんし、2000万は企業としては少額でそこまで重要な投資では無いのかもしれません。結局トップだったハイタカさんの自己責任ですが、とは言え出資者かつ大手企業として講談社はもっとできることがあったのではないかと思います。ゲーム開発経験が講談社に無く、クリエイターにほとんど任せてしまっているようにしか見えません。育てるべき原石を失っています。
ゲームクリエイターズラボを行うのであれば、同時にクリエイターと二人三脚するに足り得るゲーム開発経験者を備えた座組を用意するべきだと思います。

最後に

地罰の記事は書くか悩みました。ネガティブな話になりますから。
でも、私自身はハイタカさんのアンチではなく、むしろYoutuberとしての実力や少人数でここまでゲームを作ったことを尊敬しています。フロムに居たのに、人生をBetしてインディーゲームに参入したのも尊敬できる勇気です。
ハイタカさんは面白いゲームを作れうるスキルを持っていて、地罰は磨けば光る原石にもなりえるもので、でも磨ききれずに不評で終わったように思います。正直、残念でなりません。
格ゲーマーとしてハイタカさんの作りたかったものも理解できますし、ところどころのゲームロジックはその片鱗を強く感じます。
同じゲームシステムでもストーリープレイ中のゲームの難易度を上げる曲線やシステム理解の導線、UI・エフェクト等々のちょっとしたところを変えるだけでもずいぶん印象が違ったゲームになるようにも思います。
ここまで努力とこだわりを感じる地罰がうまくいかなかった切ない気持ちを供養させてもらいたく、今回記事を書かせていただきました。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

ハイタカさんの今後のゲームクリエイター活動を応援しています。

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