政治

2025.10.28 08:00

「ビリオネアは存在すべきでない」と主張のNY市長選候補、マムダニ阻止に巨額を投じる富豪26人

ゾーラン・マムダニ(Photo by Stephani Spindel/VIEWpress)

ゾーラン・マムダニ(Photo by Stephani Spindel/VIEWpress)

11月4日に投開票が行われる米ニューヨーク市長選の最有力候補とされる急進左派の民主党候補、ゾーラン・マムダニ(34)は、「ビリオネアは存在すべきでない」と主張している。その発言に反発した富豪が、彼の当選を防ごうと自らの財力を用いている。

NY市長選、マムダニがクオモを引き離しリード

「民主社会主義者」のニューヨーク州議会議員マムダニは、勢いに乗っている。NY市長選に向けた世論調査で彼の支持率は、前州知事のアンドリュー・クオモやトーク番組司会者で共和党候補のカーティス・スリワを大きく引き離し、リードを保っている。だがその一方で彼は、政財界の大物を敵に回している。

「ビル・アックマンやロナルド・ローダーのようなビリオネアは、私たちが“脅威そのもの”だと言って、数百万ドル(数億円)をこの選挙に投じている。私は認めよう。彼らの言うとおりだ」とマムダニは13日の集会で語った。

ヘッジファンド運用者のアックマンは、10月22日の時点でマムダニ陣営に反対する政治団体に175万ドル(約2億7000万円。1ドル=152円換算)を拠出しており、化粧品大手エスティローダーの後継者ローダーも75万ドル(約1億1000万円)を寄付している。しかしマムダニが名指ししたこの2人だけが、彼の当選阻止に動いているわけではない。

全米各地のビリオネア26人、マムダニ阻止へ約34億円を投入

フォーブスの分析によれば、全米各地のビリオネア26人、またその一族の関係者が、それぞれ少なくとも10万ドル(約1500万円)を投じ、無所属で出馬するクオモやマムダニ以外の候補を支援している。これらビリオネアの寄付総額は2200万ドル(約34億円)を超え、ニューヨーク市民のもとには反マムダニのメッセージがテレビや郵便を通じて洪水のように押し寄せている。

これらの寄付金の半分以上の約1360万ドル(約21億円)は、マムダニが6月24日の民主党予備選で勝利する前に拠出されていた。そのうち過半を占めたのが、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグからの寄付で、クオモを支持する彼は6月に「フィックス・ザ・シティ」と呼ばれる団体に830万ドル(約13億円)を注ぎ込んだ(その後、ブルームバーグとマムダニは「友好的な」意見交換を行ったと報じられた)。

他にも、リベラル寄りの大口寄付者であるネットフリックス共同創業者リード・ヘイスティングス、メディア事業家バリー・ディラーなどが、予備選前にそれぞれ25万ドル(約3800万円)をフィックス・ザ・シティに送っていた。

一方で、保守派やトランプ支持者の一部もこの選挙戦に加わっている。カジノ王スティーブ・ウィンは10月に50万ドル(約7600万円)を寄付し、石油業界の大物ジョン・ヘスは5月に最初の小切手を切って以来、これまでに合計100万ドル(約1億5000万円)をマムダニ陣営に対抗するために投じている。

マムダニが掲げる、法人税や所得税の引き上げ、ポピュリズム的政策

3期目を務めるニューヨーク州議会議員のマムダニは、左派ポピュリズム的な政策構想を描いている。「私は、今のような格差が広がる時代に、ビリオネアが存在すべきだとは思わない。あまりにも金額が大きすぎる」と彼は6月のNBCニュースの取材に語っていた。ただし最近、彼はビジネス界のリーダーたちとの面談を重ね、支持を取りつけるか、少なくとも彼らの不安を和らげようとしているとみられている。

彼は市長選の公約に「ビリオネアの追放」を含めていないものの、市の家賃規制の対象となる住宅の賃料の凍結、市営バスの無料化、保育の無償化を掲げている。その財源は、所得税の最高税率の2ポイント引き上げや、法人税率を現行の7.25%から11.5%へ引き上げることでまかなう構想だ。

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翻訳=上田裕資

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2025.07.02 09:00

「億万長者はいらない」次期NY市長候補の「民主社会主義者」にビリオネアが反発

ゾーラン・マムダニ(Michael M. Santiago/Getty Images)

ゾーラン・マムダニ(Michael M. Santiago/Getty Images)

11月のニューヨーク市長選挙に向けた民主党の候補者選びで指名を確実にしたゾーラン・マムダニ(33)が、NBCニュースのインタビューで「私は、ビリオネアが存在すべきだとは思わない」と語ったことを受け、複数のビリオネアや政治家が、SNS上で彼を批判した。

クラフト・ベンチャーズの共同創業者デービット・サックスは、6月30日のX(旧ツイッター)の投稿で、「君たちには基本的に2つの選択肢がある。MAGA(Make America Great Again)に賛同するか、マムダニがやることの犠牲者になる覚悟をするかだ」と警告した。

マムダニは、年間収入が100万ドル(約1億4300万円)を超える上位1%の富裕層のニューヨーカーらに対して、一律2%の増税を提案している。彼は、29日のNBCのインタビューでニューヨークの固定資産税制度は不公平であり、このように格差が深刻な都市にビリオネアがいるべきではないと述べていた。

トランプ大統領の暗号資産担当官でもあるサックスは、マムダニのインタビュー映像をXでシェアした上で、「共産主義がリベラリズムを打ち負かした」と述べて、シリコンバレーがトランプ政権と歩調を合わせるべきだと警告した。

一方、著名なヘッジファンド運用者のビル・アックマンは30日、マムダニが「米国はより多くの社会主義者を当選させるべきだ」と語る映像を再投稿し、「マムダニが自らを社会主義者と名乗っているのは、冗談でも単なる理想でもない」と述べた。また、「今のところ彼は勝っている」とも指摘した。

ユタ州選出の共和党のマイク・リー上院議員も、同じ映像を背景にソ連の国旗が映るように加工してリポストし、「彼は、少なくとも自分の立場を明らかにしている」と揶揄した。

マムダニはこれまでビリオネアについて何を語ってきたか?

24日の民主党予備選で勝利したマムダニは、キャンペーンを通じてニューヨークの物価高を非難し、家賃の値上げの凍結やバスの無料化、公営の食料品店の開設、無料の育児支援などを訴えてきた。また、26日のCNNのインタビューで彼は、富裕層への増税を主張し、「資本主義には多くの問題がある」と語った。

アックマンは、ニューヨーク州選出の下院議員マイク・ロイヤーがマムダニを批判した投稿をXでシェアし、「ニューヨーク市は大変なことになる」とコメントした。さらに別の投稿でアックマンは、マムダニが主張する「貧困層へのサービスの提供」という目標の達成が、「ニューヨーク市がビジネスに優しい環境であることに全面的に依存している」と指摘した。

一方、マムダニは以前、アックマンがクオモ前ニューヨーク州知事のスーパーPACに50万ドル(約7150万円)を献金したことを非難していたが、自身がもし新たな市長に就任すれば、政府の資金をすべてのニューヨーカーの暮らしの改善のために使うつもりで、そこにはビリオネアも含まれていると語った。

トランプは、民主党予備選でマムダニが勝利した翌日のSNSの投稿で、「民主党は一線を越えた」と述べて、マムダニを「完全なる共産主義の狂人」と呼んだ。さらに「見た目がとても酷く、あまり賢くもない」と罵倒した。

CNNのインタビューで、民主社会主義をどう定義するかを問われたマムダニは、マーティン・ルーサー・キングの言葉を引用し、「この国のすべての神の子どもたちに、より良く富が分配されなければならない」と語っていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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2025.07.30 12:00

大富豪の過半数が富裕税に賛成、不平等巡る暴力を恐れる声も

米ニューヨークの郵便局前で行われた億万長者への課税を求める運動。2025年4月15日撮影(Mostafa Bassim/Anadolu via Getty Images)

米ニューヨークの郵便局前で行われた億万長者への課税を求める運動。2025年4月15日撮影(Mostafa Bassim/Anadolu via Getty Images)

20カ国・地域(G20)諸国の大富豪の過半数が、富に対する2%の課税を支持している。英国の富裕層からなる団体「パトリオティック・ミリオネアズUK」が、2000人以上の億万長者を対象に実施した調査から明らかになった。

1000万ドル(約14億8000万円)以上の資産を持つ層は富裕税を支払うべきかとの問いに対し、調査対象者の58%が賛成と答えた。世帯資産が5000万ドル(約74億円)以上と1億ドル(約148億円)以上の層では、それぞれ66%と69%が富裕税を支払うべきだと答えた。一方、100万ドル(約1億4800万円)以上の投資可能資産を持つ回答者に対象を広げると、富裕税を支持しない割合が増えた。5000万ドル以上の資産を持つ人に関しては、ほぼ3分の1が富裕税に「反対」または「分からない」と答えたのに対し、資産1000万ドル以上では、この数字は4割に上った。

パトリオティック・ミリオネアズUKは、英国の億万長者70人以上からなる団体で、富裕層への課税強化と富の公平な分配を提唱している。同じ名称の最初の団体は2010年に米国で設立され、ジョージ・W・ブッシュ政権時代に減税措置の失効を求めてロビー活動を行ったが、この措置はバラク・オバマ次期政権の下で延長された。

スイス東部ダボスで2024年に開催された世界経済フォーラムでは、250人の大富豪が世界の首脳に対し、超富裕層の富に課税するよう呼びかけたが、変化は起きていない。英国に拠点を置く国際支援団体オックスファムの2023年の報告書によると、世界の億万長者の半数は相続税のない国に居住しており、全世界で徴収された税金のうち、富裕税によるものはわずか4%に過ぎなかった。

経済体制の転換を目指す国際団体アース・フォー・オールと米環境保護団体グローバル・コモンズ・アライアンス(GCA)が仏調査会社イプソスと共同で行った調査によると、G20諸国の国民の68~70%が富裕税や高所得税、大企業の利益への課税を支持していた。他の多くの世論調査でも同様の結果が示されている。

パトリオティック・ミリオネアズUKの報告書は、富裕税は資本逃避を招き、結果として経済の衰退を招くという主張を否定している。その上で、多くの富裕層は居住地を変えるつもりはなく、むしろ民主主義を強化し、気候変動のような地球規模の問題と闘い、特に富の不平等な分配を巡る暴力の発生を防ぐことになると考えられる変化を歓迎していると強調した。

極端な富は民主主義に対する脅威

今回の調査対象となった富裕層の4分の3は、十分な資金が確保された公共サービスと機能的な社会基盤が、起業家と強力な経済にとって不可欠だと考えていた。回答者の54%が「極端な富は民主主義に対する脅威」だと答え、72%は「富裕層が政治的影響力を得るために金銭を支払っている」ことを認めた。

世界不平等データベース(WID)が公開した最新のデータによると、2023年には米国の富裕層の上位10%が国の富の70%以上を保有していた。この割合を上回るのはアフリカ、南米、中東の数カ国のみだった。英国ではこの割合は57%で、欧州連合(EU)の59%と同程度だった。これより低い割合の国はほとんどなく、EU圏外の欧州で最も平等に富の分配が行われているのは、ノルウェーの52.6%とアイスランドの56.7%だった。EU諸国の中で富の独占の割合が最も低かったのは、オランダの45.4%とスロバキアの49.4%だった。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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